■株式相場見通し



予想レンジ:上限28200円-下限26800円





来週の東京株式市場は強含みか。11月1−2日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。21日のウォールストリート・ジャーナル紙の報道に加えて、その後のサンフランシスコ連銀のデーリー総裁やセントルイス連銀のブラード総裁の発言の変化もあり、今会合では次回の12月会合での利上げ幅の縮小に向けた議論が行われる見通しだ。





一連の流れを受けて、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は一時2023年の3−5月時点で5.0%を超える水準にまで及んだが、その後、10月28日時点では同時期で4.7%強にまで低下した(米9月個人消費支出(PCE)コアデフレータや米7−9月期雇用コスト指数の結果を受けて29日には4.9%にまで再上昇している)。このように、ある程度は織り込み済みではあるが、FRBが利上げ減速の明確なシグナルを送れば、市場は素直に好感するだろう。その場合、特に指数のショート(売り持ち高)が積み上がったままの米株式市場を中心に買い戻しが入りそうだ。東京市場でも、一時大きく積み上がっていた裁定買い残は大方解消されており、年始からの海外投資家の先物ポジションがややネットショートに傾いていることを踏まえると、上方向に振れやすいと推察する。





一方で、上昇したとしても短期的なものに終わる可能性には留意しておきたい。理由は主に二つある。一つ目はスケジュール。来週末は米10月雇用統計の発表を控える。FRBが利上げ減速への地ならしを始めたとはいえ、依然としてデータ重視の姿勢は崩しておらず、今後も予想を上回る強いデータが多く出ると再び金融引き締め懸念が強まりかねない。特に、労働市場の逼迫に起因した賃金インフレが一番根強くFRBを困らせているため、雇用統計の注目度は非常に高い。そのため、指標を確認する前に大きく買い上がる向きは少ないだろう。翌週の8日には米中間選挙も控えているため、イベント前に持ち高を傾けることは考えづらい。





二つ目は企業業績。米IT大手のGAFAM決算はほぼ全敗だった。高いブランド力と包括的なサービス提供力を武器に相対的に好業績が期待された大手企業でも決算が冴えなかったことで、景気後退懸念は一段と強まっている。クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレスや決済サービスのビザなどは好決算で、米国での力強い個人消費が確認されたが、この高い収益水準がいつまで続くかは不透明だ。GAFAM決算なども受けて、今後は米国で企業の10−12月期および来年度以降の業績予想の下方修正が進む可能性がある。株価の決定要因の一つである一株当たり利益(EPS)の低下が想定される中、実需筋の買いは期待しにくい。





短期的にはFRBの金融政策の「ピボット(転換)」を受けた米長期金利の低下と株価収益率(PER)の上昇が見込めそうだが、こちらの持続性は雇用統計、そして翌週に控える米10月消費者物価指数(CPI)次第となろう。引き続き高い変動率(ボラティリティー)に注意を払いたい。





国内では決算発表が佳境を迎える。31日の村田製作所<6981>、コマツ<6301>のほか、11月1日のトヨタ自動車<7203>、ソニーグループ<6758>、三井物産<8031>、日本製鉄<5401>、ローム<6963>、2日のエムスリー<2413>などが注目されよう。トヨタ自動車の決算では、自動車生産台数の下振れなどはすでに10月下旬に伝わっているため、部材不足の解消と生産正常化の時期の明確化やコスト増加の変化幅などが焦点となってこよう。三井物産は業績予想の上方修正や自社株買いなどの株主還元の有無とそれらの規模が注目される。





■為替市場見通し





来週のドル・円は下げ渋りか。日本政府・日本銀行は状況に応じて円買い介入を行う方針であること、景気に配慮して12月より米利上げ幅の縮小が予想されていることから、ドルの上値はやや重くなりそうだ。しかしながら、米国のインフレが短期間で弱まる可能性は低いこと、英国やユーロ圏の経済見通しは不透明であり、ポンドやユーロが米ドルに対して下落した場合、ドル・円の取引でもドル買いが強まる可能性があることから、リスク回避的なドル売り・円買いがただちに強まる可能性は低いとみられる。





日米金利差の拡大予想もドル・円相場に対する支援材料となる。日本銀行の黒田総裁は10月28日に行われた会見で「円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画策定を困難にするなど、わが国経済にとってマイナスであり、望ましくないと考えている」と述べているが、物価見通しについて「来年度でも物価上昇率が目標の2%を安定的に達成できるような状況にはならない」と指摘している。日銀は物価安定目標を達成するまで現行の金融緩和策を維持する可能性が高いこと、それによって日米金利差のさらなる拡大が予想されることはドル買い材料になるとみられる。





■来週の注目スケジュール



10月31日(月):日・小売売上高(9月)、日・鉱工業生産指数(9月)、日・消費者態度指数(10月)、日・住宅着工件数(9月)、決算→商船三井、コマツ、村田製、レーザーテック、中・製造業/非製造PMI(10月)、欧・ユーロ圏消費者物価コア指数(10月)、石油輸出国機構(OPEC)が2022年世界石油見通し(WOO)発表、アブダビ国際石油展示会・会議(ADIPEC)(11月3日まで)など



11月1日(火):日・米・製造業PMI(10月)、中・財新製造業PMI(10月)、豪・オーストラリア準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、米・ISM製造業景況指数(10月)、米・求人件数(9月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)(2日まで)、米・決算→AMDなど



11月2日(水):決算→ミネベアミツミ、住友電工、エムスリー、米・ADP全米雇用報告(10月)、米・パウエルFRB議長の記者会見、米・決算→クアルコムなど



11月3日(木):日・株式市場は祝日のため休場(文化の日)、中・財新サービス業PMI(10月)、英・イングランド銀行(英中央銀行)が政策金利発表、米・サービス業PMI(10月)、米・ISM非製造業景況指数(10月)、米・非農業部門労働生産性(7-9月)など



11月4日(金):日・サービス業PMI、決算→伊藤忠、郵船、JFEHD、欧・ユーロ圏サービス業PMI(10月)、欧・ユーロ圏生産者物価指数(9月)、米・10月雇用統計など