15日の後場の取引では以下の3つのポイントに注目したい。



・日経平均は続伸、プラス圏で堅調に推移、29500円台を回復

・ドル・円は小じっかり、米金利にらみ

・値上がり寄与トップはファーストリテ<9983>、同2位はダイキン工業<6367>



■日経平均は続伸、プラス圏で堅調に推移、29500円台を回復



日経平均は続伸。118.73円高の29507.03円(出来高概算7億4028万株)で前場の取引を終えている。



前週末12日の米国株式市場のダウ平均は8.89ドル安(-0.03%)と小幅に続落。5月のミシガン大学消費者信頼感指数が予想を大幅に下回り、景気減速懸念が強まった。また、同指数の長期期待インフレ率が予想外に上昇したため、6月の利上げ停止期待が後退し金利高に伴う売りが広がった。ただ、終盤に、バイデン大統領とマッカーシー下院議長の電話会談や来週の会合が明らかになると債務上限問題の警戒感が緩和して下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数も下落、軟調な展開となった米株市場を横目に、15日の日経平均は前週末比158.74円高の29547.04円と3営業日続伸でスタート。その後は堅調もみ合い展開となっている。



個別では、NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信株、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの銀行株が堅調に推移。三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株のほか、ソフトバンクG<9984>やキーエンス<6861>、日本製鉄<5401>、資生堂<4911>、神戸製鋼所<5406>なども上昇。そのほか、想定以上の収益成長見通しがインパクトとなった長野計器<7715>、が上昇、24年3月期営業利益は前期比36%増と予想している大阪チタ<5726>が急騰、アルテリア<4423>、アイスタイル<3660>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。



一方、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株の一角、日産自<7201>やトヨタ自<7203>などの自動車株が軟調に推移。郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの海運株のほか、ルネサス<6723>、クボタ<6326>なども下落した。そのほか、コスト増で今期ガイダンスは市場想定下振れとなったオリンパス<7733>、23年3月期の営業利益が前期比81.9%減の9.8億円となったVテク<7717>が大幅に下落、T&Gニーズ<4331>、パンチ工業<6165>、ギークス<7060>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。



セクターではその他金融業、繊維製品、食料品が上昇率上位となった一方、精密機器、パルプ・紙、石油・石炭製品が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の57%、対して値下がり銘柄は39%となっている。



シカゴ日経225先物清算値は大阪比155円高の29575円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均はやや買いが先行。約1年半ぶりに29500円台を回復してセンチメントがやや上向く格好となっている。また、国内主力企業の決算発表が本格化する中、引き続き投資家の目線が東証プライム市場中心に向かっている。



一方、新興市場は強弱入り混じる展開が続いている。マザーズ指数は下落スタート後、マイナス圏で軟調に推移。一方、グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、プラス圏でもみ合う展開となっている。米長期金利が3.4%台まで上昇、米国では債務上限問題や景気後退懸念のほか金融不安が再燃しており、国内の投資家心理の悪化は続いている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.30%安、東証グロース市場Core指数は0.58%高で時価総額上位銘柄中心に物色が向かっている。



さて、12日に発表された5月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は57.7で4月の63.5から低下、昨年11月以来6カ月ぶりの低水準となった。1年先のインフレ期待は4.5%で4月の4.6%からやや低下した。米4月の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)でインフレの鈍化基調を確認し、米金利も大きく低下していることで安心感が生まれつつある。



ただ、景気後退懸念や連邦債務上限問題などネガティブなニュースも散見されている。米国では一部地銀の預金流出の動きが確認され、金融不安が再燃している。また、米連邦政府の債務上限問題が遅々として解消に向かわず、早ければ6月1日にも米政府の資金繰りが行き詰まる可能性が指摘されている。仮に債務上限問題の解決に失敗した場合、債務不履行(デフォルト)による経済への悪影響を懸念する見方もやや強まっている。足元の米国債5年物の保証料率(CDS)は2011年以来の水準に急上昇し、市場にもデフォルトへの警戒が広がっているようだ。



わずかながらの可能性であるが米国がデフォルトする場合は、信用力を失った米国債の価格が下落して金利が上昇する。住宅ローン金利も上昇し、不動産販売が冷え込むという。米国GDP(国内総生産)は4%低下し、700万人が職を失うことになる可能性があるようだ。また、米国債の格付けは最低位の「D」に降格され、国民への社会福祉費の支払いが滞るほか、公務員や軍人への給料支払いが滞るなど政府停止状態に陥る可能性があるとも報じられている。



ただ、バイデン米大統領とマッカーシー下院議長(共和)ら議会指導者は米国のデフォルトを回避するため、16日に再度会談する予定。バイデン大統領は交渉の条件について口を閉ざしたままだが、妥結は可能との認識を表明しており、引き続き楽観しているようだ。会談日程確定せず変更もあり得ると関係者が発言しているようだが、ひとまずは上記のデフォルトが起きた場合を頭の片隅にとどめておくとする。



そのほか、話は一転するが、フロリダ州のジミー・パトロニス最高財務責任者(CFO)が、同州の公的な資金360億ドル(約4兆8000億円)を預かる金融機関に対して、社会・政治的問題には積極的に関与しないよう警告したという。フロリダ州は、融資の是非を判断する際に社会・政治的要素を考慮する金融機関が州の公金を保持することを禁じる新法を可決し、この州法に違反する一部金融機関と関係を断つこともいとわないとの考えを示したようだ。バンク・オブ・アメリカ(BofA)やウェルズ・ファーゴが含まれており、金融不安が再燃する中、こういった情報にも目を向けておきたい。



さて、米国を取り巻く環境は強弱入り混じっており、株価が上下どちらにむかってもいいように今後のシナリオを考えていきたい。過去の月曜日の当欄では、今後のシナリオを想定している記事もあるので、そちらをご覧いただきたい。後場の日経平均は、プラス圏での推移が続くか。東証プライム市場を中心に決算発表を終えた銘柄への物色が継続するか注目する。



■ドル・円は小じっかり、米金利にらみ



15日午前の東京市場でドル・円は小じっかりとなり、135円72銭から136円02銭まで値を上げた。米10年債利回りと米2年債利回りは前週末から高水準を維持し、ドルは売りづらい。一方、ユーロや豪ドルなど主要通貨は、対ドルで底堅く推移する。



ここまでの取引レンジは、ドル・円は135円72銭から136円02銭、ユーロ・円は147円25銭から147円64銭、ユーロ・ドルは1.0846ドルから1.0864ドル。



■後場のチェック銘柄



・イオレ<2334>、シダー<2435>など、17銘柄がストップ高



※一時ストップ高(気配値)を含みます



・値上がり寄与トップはファーストリテ<9983>、同2位はダイキン工業<6367>



■経済指標・要人発言



【経済指標】



・日・4月国内企業物価指数:前年比+5.8%(予想:+5.6%、3月:+7.2%)



【要人発言】



・ボウマンFRB理事

「物価高と労働力ひっ迫が根強ければ追加利上げ必要」

「インフレ率は依然高過ぎる」

「最近の雇用、インフレ指標は、著しいインフレ改善の証拠になっていない」

「ファンディングコスト上昇で、銀行は一段と貸付基準を厳格化する可能性が強い」

「利上げが正当化されるかどうかデータを綿密に監視」

「金利を当面、引き締め水準で据え置く必要性を見込む」

「物価高と労働力ひっぱく根強ければ追加利上げ必要」



<国内>

特になし



<海外>

特になし