■マザーズ指数保ち合い下放れ



今週の新興市場は下落。米債務上限問題を巡る先行き不透明感で個人投資家心理が上向きにくいなか、米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派発言を受けた米金利高などが重しになった。また、米エヌビディアの好決算を機に東証プライムの半導体関連株に物色が集中する一方、新興株は「蚊帳の外」状態が継続。加えて、東証プライム銘柄や日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>を空売りしていた個人投資家の含み損益の悪化が新興株の手仕舞い売りを誘発するなど、需給面の悪材料も影響したようだ。なお、今週の騰落率は、日経平均が+0.35%であったのに対して、マザーズ指数は−2.92%、東証グロース市場指数は−2.73%だった。



個別では、ispace<9348>が月面着陸失敗後の失望売りが一巡したことに加え、今後の民間月面探査ミッションへの期待の高まりなどから人気化し、週間で+73.2%と急伸した。ウェルプレイドR<9565>は、「eスポーツ」に関して一部メディアが「政府が五輪での採用を見据え、研究や情報収集、医科学支援に乗り出す方向で検討に入った」と報じたことや、国内最大級のポーカールームを運営するPOKER ROOM(東京都世田谷区)と業務提携を締結するなど、材料が相次いだことで買われた。一方、週間下落率上位には、ティムス<4891>、アマナ<2402>、うるる<3979>、Birdman<7063>など、株価下落が続き需給が悪化している銘柄が、手仕舞い売りが膨らむ形で多く入った。



■新興株への資金回帰の可能性も残される、6月IPO続々発表、2社BB入り



来週の新興市場は軟調か。マザーズ指数は今週末に今年に入ってからの保ち合いを下放れ、25日線、75日線、200日線など主要移動平均線を軒並み下放れた。チャート形状の悪化が鮮明になったことで個人投資家の新興株の見切り売りが膨らみそうで、注意が必要な局面になってきた。



今週末の米株式市場では半導体株の急伸劇が続き、日経225先物は夜間取引で31500円まで大幅に上昇した。来週も東京市場では半導体関連への一極集中買いが続く可能性が高く、新興株の手仕舞い売りを加速させそうで注意したい。



英国の物価指標の上振れやウォラーFRB理事のタカ派発言などを受け、米金利が上昇するなか、来週末には米雇用統計が発表される。週末にかけては警戒感から一段と軟調となる展開が予想される。一方、5月ミシガン大学消費者調査(確報値)で1年期待インフレ率が予想外に低下したことは安心感を誘う。米金利が4%に接近しない限りは新興株への金利の直接的な影響は限られると考える。



他方、米債務上限問題を巡る与野党の交渉は合意に近づいていると伝わっている。最後まで予断を許さないが、合意に至れば米国債への資金回帰なども想定される。その場合、短期的にはオーバーシュート気味な日経平均構成銘柄など東証プライム主力銘柄への一極集中が緩和されることが予想され、米金利の低下とともに東証グロースの新興株に資金が回帰する可能性もあろう。



個別では、需給の良くない新興株の中でも比較的良好なチャート形状を維持しているispace Arent<5254> ENECHANGE<4169> Ridge-i<5572> FIXER<5129> eWeLL<5038>、などに注目したい。



6月の新規株式公開(IPO)案件が続々と発表されており、来週はABEJA<5574>、Globee<5575>がブックビルディング(BB)期間に入る。