ドル・円相場は心理的節目の150円を上抜け、「為替介入ゾーン」に浮上。米利下げ観測の後退や日銀の政策修正に思惑が広がるなか、年明け以降、ドル高・円安基調を強めています。政府は2年前のような大規模介入に乗り出すか、市場の関心が高まってきました。





2月13日に発表された米1月消費者物価指数(CPI)は前年比で予想を上回り、前月比では昨年12月よりも強い内容となりました。インフレ指標の再加速を受け、市場は3月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利据え置きをほぼ確実視。連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ時期の予想を5月以降に後ずれさせています。他の主要中銀の政策方針が不透明になり、足元はドル選好の様相です。





ドル・円相場は今年140円79銭で寄り付き、1月19日に148円80銭まで上昇した後に失速するも、再び値を切り上げています。堅調な米経済指標はソフトランディングへの期待感からドルの押し上げ要因に。半面、FRB当局者の間では利下げ時期について見解が分かれるものの、一部のハト派的な見解が米10年債利回りを押し下げ、ドルの重石になっています。





日本政府は過度な円安に対するけん制姿勢を強め、一段の円安に歯止めをかけたい考え。2022年に150円以上のレベルで大規模なドル売り・円買い介入を実施しており、市場は実弾介入に身構えています。昨年も150円台に浮上した際、22年の高値151円94銭に迫ったタイミングで神田財務官が介入に「スタンバイ」と発言し、151円90銭から下げに転じた経緯があります。





ドル・円が目先も騰勢を強めていく場合、政府は実弾投下に踏み切るでしょうか。一昨年、昨年と152円手前で下げに転じたことから、同水準を上抜けると、それ以上の水準では抵抗線となる節目が見当たらず、ストップロスを巻き込んで弾みがつけば一気に155円付近まで値を上げる可能性が指摘されています。そのため、152円付近でのドル売り・円買い介入というのが現時点での市場の見立て。





ただ、これまでと異なるのは日銀の政策修正が現実的になってきた点でしょう。マイナス金利解除はすでに織り込まれてしまい、緩和的な環境を維持するとの方針の方が重視され、むしろ円安に振れやすい状況にもみえます。日本の10-12月期国内総生産(GDP)の下方修正で不透明感も増し、円を下押ししています。ドル・円は底堅い値動きが続くとみられ、152円トライのシナリオも想定されます。



円安は一段の輸入コストを押し上げ物価高につながるため、岸田政権にとっては向かい風。ただ、鈴木財務相はドル高・円安局面で訪日外国人の増加といった円安のメリットにも言及しています。足元では米国債発行が縮小する見通しで、米国債は需給の引き締まりで金利安・ドル安に向かう可能性があります。日本政府は春先のドル失速をにらみ、待ちの姿勢とみます。

(吉池 威)

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