■会社概要



5. 物流事業の収益性が改善したターニングポイント

澁澤倉庫<9304>は老舗企業であるにも関わらず、倉庫業で準大手という位置付けにとどまっている。比較的早期に陸上運送事業に進出・拡大したため、在来船の船内荷役業務は行っているものの、コンテナ船の取扱いが少なく相対的に港湾事業が大きくならなかったことが要因と推測する。しかし、陸上運送が強い倉庫業という位置付けがかえって、同社の足元の成長をけん引することになる。近年、物流事業の収益の伸びが目立っている。



かつては輸出品の取扱いや優良で豊富な不動産の利用によって安定的な業績を挙げていた。しかし、リーマンショックなどを経て経営環境が厳しくなったことから、前々回の中期経営計画「SUCCESS 2012」を策定して貨物構成の変換とともに従来型の倉庫業からの質的転換をはかることにした。大型物流センターを核にした保管・輸配送に加えて、流通加工などの機能を兼ね備えた総合物流サービス機能の拡充へと大きく踏み出したのである。



こうした機能は同社にとって、倉庫業務の収益性が向上するとともに、顧客側にとっても倉庫〜流通加工地の往復運賃がセーブできるという新たな強み=付加価値を生み出した。このため、営業戦略も流通加工ニーズの強い消費財をメインターゲットとすることになった。その結果、首都圏など大都市圏を中心とする大型物流センターの拠点展開や業務の質的転換により、消費財の売上高構成比(上位30社・金額ベース)も2013年3月期の50%から2017年3月期の60%へと急拡大した。そして、こうした戦略は今回の中期経営計画「Step Up 2019」にも踏襲されることになる。



海外物流においては、グローバルに積極的な自社拠点展開を行ってこなかったことや積極的な海外M&Aをしてこなかったことが海外売上が伸び悩んでいる要因であるが、徐々に成果が出始めている。同社は比較的早くから中国とベトナムに進出しており、中国では中国国内の輸送ライセンスを取って自社で陸上運送へ参入し、倉庫の自社運営化を進めている。ベトナムでは現地大手物流会社に出資(現在45%所有)、輸出入は同社で物流は現地という仕組みを構築しつつある。運ぶものを消費財とすることで、日本のノウハウを利用できるだけでなく、両国の消費大国化をにらむこともできるのである。



各種業務において様々なサービスを数多くの取引先に提供するため、その組み合わせは多岐にわたる。従って、収益構造を分解するのは非常に難しい。しかし、概して好収益といえるのは、中期経営計画の中で重点的に取り組んできた大型物流センター運営による消費財の取扱であると思われる。不動産の利益率は高いが保有資産の都市部での開発は一巡しており、新たな再開発や新規資産を取得しない限りなかなか増やせない。前中期経営計画も今中期経営計画も、物流事業の収益を牽引するのは、消費財物流の高付加価値化戦略にあると考えられる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)