■スリー・ディー・マトリックス<7777>の事業概要



(4) 次世代止血材(TDM-623)

次世代止血材の開発を欧州で進めている。「PuraStat®」よりも止血効果が高い(短時間で止血)ことに加えて、ペプチドの配列数が「PuraStat®」よりも少ないため材料費を低く抑えることが可能なこと、常温で輸送・保管が可能なことなどが長所となる。現在、脊椎外科や脳外科など中枢神経系を適用対象とした動物実験を行っているが、対象領域に関してはその他領域も含めて、その可能性について検討していくことにしている。



(5) 粘膜隆起材(TDM-641)

国内で開発を進めている粘膜隆起材とは、内視鏡手術において消化管(食道、胃、大腸など)の粘膜にできた早期腫瘍やポリープなどを切除、または粘膜下層剥離を行う際に利用される。注射によって粘膜隆起材を病巣部の粘膜下層部分に注入し、病巣部を隆起させた後に電気メスなどによって隆起した病巣を切除する手順となる。病巣切除時に止血効果も併せて得られる点が最大の長所となっており、手術の難易度やリスクを下げるだけでなく、手術時間の短縮により患者の負担を軽減できるといった効果も期待できる。現状は主に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムが用いられているが、止血効果がないため止血する時間がかかっていた。



粘膜隆起材に関しては2014年12月より国内で臨床試験を開始したが、有効性をより明確にできる試験方法や製剤の検討を行うために、2015年2月に自主的に臨床試験を一時中断していた。この度、優位性を得られる製剤の改良に目途※が立ったことから、PMDAと臨床試験や承認申請プロセスに関する協議を開始している(2019年4月期第3四半期)。



※前回の臨床試験では粘膜隆起材を注入して隆起部を切除した際に、切除部が白濁して見えにくくなるケースがあったが、自己組織化ペプチドを改良することで透明度を大幅に向上させることに成功した。





国内の市場規模としては、年間で最大60億円規模になると同社では推計している。また、EU市場でも今後、CEマークの取得を目指す意向を示している。国内市場では扶桑薬品工業と独占販売権許諾契約を締結しており、今後、製造販売承認取得時点でマイルストーン収益が得られるほか、上市後は販売に応じたロイヤルティ収入が得られることになる。



(6) 歯槽骨再建材(TDM-711)

歯槽骨再建材は、歯槽骨の退縮によりインプラント手術が適用不可な患者に対して、インプラント手術が適用できるまで歯槽骨を再建することを目的とした医療材料で、目的部位に同材料を注入することにより、歯槽骨の再生を促進する機能を果たす。米国子会社で開発・製品化に取り組んでいる。



米国では歯槽骨再建手術が年間190万件程度行われており、市場規模は年間約200百万米ドル程度と見られる。同手術のうち約120万件は異種骨(豚)や他人の骨を足場材として利用しており、残りは自身の違う部位からの移植または人工骨などを利用している。同社の歯槽骨再建材を使えば、感染リスクもなく安全かつ容易に歯槽骨の再建を行うことが可能となる。



(7) 創傷治癒材(TDM-511)

創傷治癒材「PuraDerm」は、自己組織化ペプチドの持つ組織再生効果を活用して、火傷や裂傷などで傷んだ皮膚組織の治癒を促進する効果が期待できる医療材料として米国子会社で開発され、2015年2月に米国のFDAより510(k)申請による販売承認を取得している。従来は他の薬剤とのコンビネーション(抗生物質、抗がん剤、ヒアルロン酸等との混合投与)によって熱傷治療薬や皮膚がん治療薬など高付加価値品の開発を進めていくことを基本方針としていたが、2019年4月期より単材での市場開拓を目指すべく、高価格でも需要が見込める美容整形外科領域でのマーケティングを開始している。



(8) 核酸医薬用DDS(TDM-812)

抗がん剤等の核酸医薬品を目的部位(がん細胞等)まで送り届けるDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)用材料として、界面活性剤ペプチド「A6K」をアカデミアや製薬企業等に提供している。2015年7月より国立がん研究センター中央病院においてトリプルネガティブ乳がんを対象に、「A6K」をDDSとして用いたsiRNA核酸医薬の医師主導による臨床第1相試験が行われた。同疾患ではファースト・イン・ヒューマンの治験となる。2018年3月に治験期間が満了したが予定症例数に達しなかったため、現在は四国がんセンターなど他の医療施設で治験を継続するための協議を行っている。



また、アカデミアとの共同プロジェクトとして、広島大学医歯薬保険学研究科と悪性胸膜中皮腫を対象とする革新的抗腫瘍核酸医薬の共同開発を進めているほか、2018年11月に岡山大学中性子医療研究センターとがん治療法の1つであるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)※におけるより効果的なホウ素薬剤の開発に関する共同研究契約を締結している。



※ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy)・・・中性子とホウ素原子(10B)が衝突することで大きなエネルギーを生み出す「アルファ崩壊反応」を活用したがん治療法。あらかじめホウ素薬剤を用いてがん細胞にホウ素原子を取り込ませた後、中性子を照射することで、がん細胞のみにアルファ崩壊反応を起こし、これを破壊する。中性子自体のエネルギーは小さく、正常な細胞へのダメージが少ないため、副作用の少ない「切らずに治す」がん治療として注目されている。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)