■中長期の成長戦略



1. 今後のビジョン

地道な人材育成と技術開発・品質管理体制の着実な整備を進め、オンリーワン(不二=2つとない)企業を目指す。



2. 成長分野への注力

不二精機<6400>は競争力の源泉である精密金型事業では、医療用・食品用容器用分野を伸ばし、売上拡大よりも収益性アップを目指し、精密成形品事業では自動車(2輪・4輪)関連部品に経営資源を集中し、アジア地区での生産拡大で価値の拡大を図る計画である。現状、米中貿易摩擦などの影響もあり、自動車関連部品関連での多少の停滞が懸念されるものの、全体として注力2分野の拡大により収益性の向上が見込まれ、着実な事業拡大が期待される。



(1) 精密金型事業:医療用・食品用を拡大

精密金型事業においては、医療用・食品用を拡大させ、その他分野についてはリスクも高いとしてあえて拡大路線は取らず、同分野に注力する。同事業においては2019年12月期売上高予想で売上比率の58.3%まで比率を高めるとしているが、ニプロ<8086>、テルモ<4543>、ジェイ・エム・エス<7702>、旭化成メディカル(株)などの国内ユーザー、日系現地法人向けに加え、中国市場でも拡大を目指す。3月に発表された経済産業省の医療国際展開カントリーレポート中国編では、中国の医療機器市場は右肩上がりの成長市場であり、2018年に244.8億ドルの規模に上り、2019年以降も平均12%成長し、2022年には354.8億ドルに達すると予想されている。同社の関連する注射器やシャーレなどの消耗品向けも、2018年の44.68億ドルから2022年には84.42億ドルへ拡大すると見られる。同社は既存の成形設備のままで取り数を増やすことで単位当たり生産数量のアップが可能なホットランナー金型(射出成形において、成形機で可塑化された樹脂を製造部へ送る樹脂経路となる部分をヒーターで加熱して経路部が固化しないようにして生産効率を高める金型)中心に需要拡大が見込まれる。また注射器においては、プレフィールドシリンジ(薬剤が充填されている注射器)において薬液の長期保存を求められており、ガラスに替わる耐熱性と高い水蒸気バリアー性を持つ環状オレフィン樹脂(COP/COC)向け精密金型も開発中で、付加価値も高められるだろう。



(2) 精密成形品事業:自動車部品事業に注力

精密成形品事業においては、自動車部品事業に注力する。同社は現在、海外ではタイ、インドネシア、中国(上海)において精密成形品の製造を行っているが、いずれの地域においても日系自動車メーカーの現地生産が拡大している。特に同社は2輪においてはケーヒンを通じたホンダ向けが多く、一部ヤマハ発動機<7272>向けにも対応、また4輪については日系現地法人であるケーヒン、デンソー<6902>、ミクニ<7247>、東海理化<6995>、ミツバ<7280>、アイシン精機<7259>、住友電装(株)、日立オートモティブシステムズ(株)、大同メタル工業<7245>などからトヨタ自動車<7203>、ホンダ向け中心で、その他多数の自動車メーカーに採用されている。



今後、これら3地域ではさらに日系自動車メーカーの生産拡大が期待されるとともに、自動車の軽量化に伴う金属から樹脂化への動きも加わり、樹脂成形品需要の拡大が見込める。



また同社は今回、マツダ<7261>を主要取引先としている秋元精機工業(株)を子会社化した。秋元精機工業は1960年設立で、精密プレス加工用の金型設計・製作と板金プレス部品、インサート成形品、絞り板金プレスなどの製造経験を持つ。2019年6月期の売上高は588百万円、営業利益13百万円と利益寄与は軽微にとどまる。ただし同社はプラスチック金型の専業として事業展開してきており、今後、「CASE」(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)への流れのなかで、自動車各社の電動化への注力が増し、従来の樹脂成形品に加え、精密金属部品を金型内にインサートして樹脂成形する「インサート成形品」への対応を図っていく計画。秋元精機はこのインサート成形ノウハウを持ち、同事業については具体的に自動車用コネクタ部品などを想定している。自動車産業は部品認定に時間がかかるだけに、すぐに成果は出ないだろうが、マツダ関連企業との取引も見込めるとともに中長期的にシナジー効果も発揮できると見られる。



当面、自動車部品関連については2020年前半までは米中貿易摩擦問題や自動車関税問題などがくすぶり、低調な状況が想定されるものの、中長期的には同社の収益を大きくけん引していくだろう。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)