■農業総合研究所<3541>の業績動向



1. 2019年8月期業績

2018年末から年明けの暖冬による相場安の影響を受けたが、物量調整等の取り組みにより黒字転換となった。また、KPIは堅調に増加し、計画どおりの投資により収益成長の基盤を着々と固めることができた。



2019年8月期における連結の売上高は前期比34.3%増の3,102百万円となった。同社がKPIとしている数値は、店舗数、生産者数、集荷場の数であり、それらが増加することによって流通総額が拡大することを目標としている。流通総額は、スーパー等において最終消費者が購入した最終販売価格の総計を言う。2019年8月期末時点で、店舗数は前期末比231店舗増の1,416店舗、生産者数は760人増の8,605人、集荷場は6拠点増の92拠点となった。その結果、流通総額は前期比9.5%増の9,614百万円と順調に増えている。



(1) 店舗数

国内店舗は1,416店舗あり、前期末の1,185店舗から231店舗増加した。自社センターが稼働し、物流拡大に向けた体制が整ったことで店舗数が増加した。同社の主要取引先にはイオンリテール、(株)阪急オアシス、サミット(株)等があり、取引先における導入率は25.4%に達している。また、全国20,840店舗(2019年スーパーマーケット白書)のスーパー等での導入率は6.8%と拡大の余地が十分あり、スーパー等からの引き合いで拡大を続けている。



2019年8月期は(株)イトーヨーカ堂など大手小売店への導入が決まり、今後の店舗展開に好材料となる。



(2) 登録生産者数

登録生産者数は2019年8月期末時点で8,605人と、前期末の7,845人から760人増加した。自社センターとITプラットフォームの強化等により、登録生産者増を図っている。登録生産者は全国に展開しており、全国総農家数2,155,082戸(農林水産省「2015年農林業センサス」)のうち、登録率はまだ0.40%であるので、今後の増加も見込まれる。基本的には口コミで拡大を続けており、地域別では関西エリアが4,126人、関東エリアが1,721人となっている。



ただ、登録者数は重視しつつも、安定的に供給できる生産者の増加に今後は注力していく。



(3) 集荷場

集荷場は2019年8月期末時点で92拠点あり、前期末と比べて6拠点増加した。一部地域では拠点の集約も実施し、現在33都道府県に設置されている。地域別では関西エリアが21拠点、関東エリアが18拠点、中国・四国エリアが16拠点となっており、鳥取県は集荷拠点を初開設した。



(4) KPIの推移

売上高はスーパー等の需要が旺盛であり、それに伴って買取委託販売が売上高をけん引した。売上総利益は、対流通総額売上総利益率は前期比で1.4ポイント増加し、経常利益は黒字化した。自然災害や増加する店舗数に対し一定量の商品を確保し安定的な供給(同社ではこれを「プラットフォームの安定化」と呼んでいる)を図るため、今後も買取委託販売が増加していく見込みだ。



(5) 業績

同社は流通総額(スーパー等において最終消費者が購入した最終販売価格の総計)を重視している。2018年9月期は8,778百万円だったのに対し、2019年8月期末には9,614百万円となった。2019年8月期は売上高も前期比34.3%増の3,102百万円となったが、これは買取委託販売が貢献している。



(6) 投資

2019年8月期の投資としては、物流投資に関しては、同社の物流拠点である大田センター近くに東京加工センターを開設し、加工業務の受託体制を整備した。また、九州便や北海道便などを試験運用し、単品大量輸送には効果的であることを確認できた。名古屋エリアではトライアルを開始し、自社センターの増設(大阪エリア)は2020年8月期に予定している。IT投資に関してはシステム開発を概ね計画どおりに行い、バイヤーと生産者を直接結び、スーパー等のPB商品として受発注をする、小売店向けアプリ「直ぽ」の試験利用を実施した。人材投資に関しては中部地域に名古屋営業所を開設し、5人体制で本格稼働を開始した。また、物流や新規事業を担う部署を立ち上げ、組織体制の充実を図った。なお、採用は概ね計画どおりで、単体で106人まで拡大した。



今後も投資を進め、生産者側、販売側の重層化に取り組んでいく。また、2019年8月期にも課題となった、現行の出荷手数料の仕組みは相場変動が業績に影響を及ぼすことや、店舗数は順調に伸びているものの、物量抑制により流通総額が伸びないという課題があるので、2020年8月期には対策を実施する予定だ。



(7) 市況相場と業績

2018年11月から2019年5月まで市況相場の安値が続き、同社商品の単価の下落を招いた。業績への影響としては、流通総額と利益率に影響を与えた。流通総額に関しては、同社プラットフォームでは市況相場を参考に生産者が値付けをするため、相場が安い局面では同社の商品売価も下落傾向になり、流通総額の下振れ圧力となる。利益率に関しては、物流費がコンテナ当たりの従量課金であるため、相場下落や重量野菜の買取増加などによってコンテナ当たり売上高が下落すれば、物流費率が上昇し、利益率が下落する。



同社の対応としては、相場の安い局面以降、出荷するほど利益率が低下するため、物量を抑制してでも利益率改善を優先するべく舵を切った。例えば、需要に基づく物流効率の高い品目(トマトやキュウリなど)に絞り買取りを強化した。また不確実性が高い新規店舗への供給を調整し、比較的効率の低い物流便を抑制した。また、仕入れ交渉時から商品仕入れ時までの相場変動が大きい場合は、価格を再交渉できるオプションを設定した。その結果、対流通総額限界利益率が改善した。ただし、利益率の改善に貢献したが、物量抑制を伴う施策であるため、流通総額の下振れ要因になった。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 福田 徹)