■成長戦略



2. 各戦略分野の方向性

(1) 不動産

好調な契約実行高の維持・拡大により、最終年度の営業資産残高は4,800億円(5年間で約2倍)、ROAは2.2%(0.3ptの改善)を目指す。引き続き、アライアンス先の拡大を図るほか、土地情報の持ち込みによるニーズの発掘や芙蓉総合リース<8424>自らテナント付けを行うなどリスクテイクを拡大していく方針である。また、不動産ファイナンス、REITへの投資、不動産投資などフロンティア拡大にも取り組むとともに、SFCでの不動産リース提案など、グループでの連携を推進する。



(2) 航空機

航空機リースの組成数を増やし、最終年度の自社保有機体数を4倍規模の70機(51機の増加)に拡大する方針である。それに伴って営業資産残高も2,800億円(2,049億円の増加)に増加させるとともに、ROAも2.3%(0.4ptの改善)を目指す。世界的な需要が拡大するなかで競争も厳しくなってきたが、同社の強みを生かした付加価値の提供により、不動産リースと同様、規模の拡大と資産効率の向上の両方を実現する戦略である。特に、取引エアラインの拡大やパッケージ(複数機体)案件の取り組みのほか、インオーガニック(M&A)を含め、ビジネス領域の拡大についても検討していく方針である。



(3) 海外

北米・アジアを中心として非日系ビジネスをさらに推進するとともに、インオーガニック(出資や買収、提携等)を含めた事業拡大により、最終年度の営業資産残高は約1.5倍の1,200億円(359億円の増加)、ROAは1.8%(1.2ptの改善)を目指す。インオーガニック戦略は、北米・アジア新興国の専門性の高い非日系リース会社をターゲットにしているようだ。一方、オーガニック戦略には、海外拠点の拡大やアクリーティブの海外拠点活用(タイやカンボジアにおける小口金融を展開)を挙げている。



(4) エネルギー・環境

主力の太陽光発電事業は、最終年度の発電容量を165MW(5年間で2倍の電力供給)、営業資産残高を340億円(5年間で約2倍)に拡大するとともに、ROAも6.0%と高水準の維持を目指す。すでに発電容量140MWが稼働しており、さらには同社最大規模の超大型事業(60MW)も2019年2月に完成予定である。今後は「ポストFIT」(固定価格買取制度後)に向け、PPA(電力販売契約)サービスの提供や自家消費型発電の取り組みのほか、新たに参画した植物工場※の運営などへ展開し、持続可能な社会構築にも貢献していく方針である。



※2019年4月に東京電力エナジーパートナー(株)及び(株)ファームシップとの合弁会社の設立により、植物工場(静岡県藤枝市)の運営に参画。単一の植物工場としては国内最大規模の生産能力となる見込みである。操業開始は2020年春頃を予定している。





(5) 医療・福祉

具体的な数値目標は掲げていないが、国が推進する「地域包括ケアシステム」の普及を含め、今後の需要拡大が見込めるうえ、同社グループ各社によるシナジー創出が可能な分野として位置付けている。医療事業については、病院再生や経営管理などのコンサルタントへの参画、中古医療機器販売会社(連結子会社(株)FUJITA)との提携によるノウハウの活用、アクリーティブの診療・介護報酬ファクタリングなどフロンティア拡大を中心に推進するとともに、新設した「ヘルスケア・アドバイザリー部」を通じてソリューション提案への転換を図る方針である。一方、福祉(介護)事業についても、業界に先駆けて取り組みを始めた老人ホームなど介護施設の建物リースについて、介護業界大手である(株)ニチイ学館とのパートナーシップを軸に、さらに推進していく。



(6) 新領域

新領域は、新規事業やビジネス領域の拡大など「新しい取り組みとなるビジネス」の総称であり、ノンアセットビジネスを中心としたフロンティア拡大により、最終年度の経常利益40億円程度を計画している。2019年4月には新領域の中核分野として、顧客の多様な業務効率化ニーズに応えるための「BPOドメイン」を立ち上げると、2019年8月には幅広いバックオフィスサービスを展開するNOCを連結子会社化した。今後は、インボイス(一括請求サービス)やアクリーティブ(ファクタリング)などとのグループ連携の強化※により、既存の顧客基盤とその窓口(経理・総務部門)との接点を生かしたマーケティングを展開し、経理・決済領域の「BPOサービス」におけるポジション確立を目指す方向性である。



※他にも、メリービズ(株)(決算作業受託)、芙蓉オートリース(株)(車両管理業務)、SCF(集金代行)のほか、SAPとの共同開発による固定資産管理サービス「FLOW Cube+」との連携も含まれている。





以上から、中期経営計画の達成に向けては、引き続き、「不動産」と「航空機」分野による営業資産残高の拡大と収益性の向上が大きなカギを握ると言える。また、資産効率の高い「BPOサービス事業」の拡大(ノンアセット収益を含む)もROAの向上に貢献するものと考えられる。特に、BPOサービス事業への展開は潜在的な需要が大きいうえ、同社の強みが生かせる分野であることから、新たな収益ドライバーとなる可能性は高い。



弊社では、戦略分野における外部環境やこれまでの実績、同社の優位性から判断して、営業資産残高の拡大は十分達成できると評価している。最大の注目点は、ROAの向上をいかに図っていくのか、その道筋にある。同社のROA向上への取り組みは、1)「不動産」や「航空機」、「再生可能エネルギー」などROAの高い事業の拡大(構成比の変化)によるものと、2)「不動産」及び「航空機」自体のROA向上によるもの、の2つの要因に分けて進捗を見る必要がある。これまでの進捗を振り返ると、前者1)(構成比の変化)については、収益性の高い「不動産」の拡大や資産効率の高いBPOサービス事業の伸びがベース利益の底上げに貢献していると評価できる。一方、後者2)(不動産及び航空機自体のROA向上をいかに図っていくのか)については、外部環境及び内部施策の両方から注意深く見守る必要があるだろう。もっとも、競争激化の中でしばらく低スプレッドが続いていた一般リース(不動産リースを除くリース)に目を向けると、案件選別やオペレーティング・リースの活用などによって足元のスプレッドは改善傾向※にあり、こちらの動向にも注意する必要がある。



※一般リースのスプレッド(単体における管理会計上の数値)は、2018年3月期が0.3%、2019年3月期が0.6%、2020年3月期上期が0.8%と改善傾向にある。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)