■ファーストコーポレーション<1430>の業績動向



2020年7月10日に発表した2020年5月期の決算は、売上高が前年同期比23.2%増の23,418百万円、営業利益が同28.5%減の1,342百万円、経常利益は同30.8%減の1,297百万円、当期純利益は同31.6%減の872百万円と増収減益となった。



ただ、売上高、利益ともに当初の計画値を上回る結果となっている。ちなみに、売上高は20,005百万円、営業利益は1,282百万円、経常利益は1,264百万円を当初は見込んでいた。その背景にあるのは、事業用地売却による不動産売上高の増加。これによって、共同事業のマイナス分をカバーした。



共同事業が減収となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きい。コロナ禍によって、外出自粛制限が実施される中で、モデルルームを利用した商談がストップ。顧客の出足が鈍ったため、思うような営業活動ができなかった。これが期末に重なったことが影響したのは言うまでもない。



完成工事総利益は、進行工事の減少によって1,201百万円と前年実績の2,191百万円から大きく落ち込んだ。共同事業収入総利益も、前年比で332百万円減の148百万円とダウンしたが、不動産売上総利益が前年から910百万円増加し1,030百万円となり、マンションの落ち込みをカバーした。



完成工事総利益率は、前年実績の15.2%から9.4%に低下。共同事業収入総利益率は17.9%から9.9%に大幅縮小。とくに、共同事業収入は、新型コロナウイルス感染拡大という一時的な要因が大きいため、コロナ禍が収まった後に、どう巻き返していくかが注目される。



事業を遂行するうえで肝となる用地の確保は、依然として厳しい環境が続いている状況だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに伴う特需は一巡しながらも、利便性が高い好立地の案件に関しては取得競争が激しいことには変化が見られない。今後も、あくまで採算を無視して取得することはしないと言う。



これまではホテルとの用地確保における競争において、ホテル業界が提示する利回り等の条件で、どうしてもマンションは優位に立てず、良質な用地がホテル建設にさらわれる状況が続いていた。こうした厳しい状況が一巡した今後の動向が注目される。



一方、受注については、2020年5月期は計画の8件を上回る9件を確保。受注額も14,323百万円と前年に比べ9.9%増となった。計画案件8件のうち2件が2021年5月期にずれ込み、その中の1件が大型案件だったため、計画の22,824百万円を大きく下回ったが、後ずれのため中期的には影響はない。このほか、計画外案件が3件あった。なお、造注方式の受注額は1,873百万円。全体の期末受注残高は18,489百万円と前年比で3.8%増加した。



受注に関して引き合いは依然として活発化しているものの、成約までに時間がかかる傾向が続いているという。なお、収益をけん引する役割を果たす造注方式の割合は、13.1%と前年の27.0%に比べて下回った。今後は、かつてはピーク時で70%に達していた造注方式の比率の回復を目指していく方針だ。



利益面では、用地確保の苦戦がそのまま工事の受注編成に響いている。ただ、同社では事業収支が合わない案件は見送る姿勢を徹底しており、今後もこのスタンスを継続しながら、用地確保に全力を注ぐ。



一方で、財務面は底堅い印象。一般的に建設業、不動産業は借入金が多く、他の産業に比べて脆弱なイメージがあるが、同社は公募増資を実施した上に、安定した利益計上によって内部留保の蓄積も進んだ。自己資本比率は2020年5月期実績で33.9%となっている。2019年3月期末の51.9%から低下したものの、これは下期の用地取得などによる期末在庫と借入金が一時的に増加したためで、今期見込まれる利益率改善で向上が期待できる。



2021年5月期の見通しについては、売上高が前期比9.9%減の21,100百万円、営業利益が同11.7%増の1,500百万円、経常利益が同9.5%増の1,420百万円、当期純利益は同9.5%増の955百万円と減収増益を見込んでいる。売上高の減少は、前期に不動産販売の大型案件があったことによる反動減が大きな理由だ。



さらに、進行工事、受注予定工事も慎重に見積もった。前期も3件の計画外案件があったが、この成約が順調に進めば上乗せもあり得る。また、いよいよ課題になっていた再開発案件が今期から稼働することも収益改善要因になりそうだ。



売上総利益は2,710百万円(前期比10.1%増)を予想。この結果、売上高総利益率は前期の10.5%から12.8%に、売上高営業利益率は5.7%から7.1%にそれぞれ改善が見込まれている。



受注高は21,700百万円(前年比51.5%増)を想定。これは前期に予定していた大型案件のずれ込みを含むため、決して無理な数字ではない。造注方式による受注を8,000百万円想定しており、前年の4.2倍となる。受注高に占める割合は36.8%と急速に改善し、これが利益率の向上につながりそうだ。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)