■主要開発パイプラインの概要と進捗状況



6. VAP-1阻害剤

2020年4月に子会社のクボタビジョンと皮膚科領域におけるグルーバル製薬企業であるLeo Pharmaが、VAP-1阻害剤の治療薬候補の探索に向けた共同研究契約を締結したことを発表した。



窪田製薬ホールディングス<4596>はエミクススタト塩酸塩の基礎研究を進める過程において多くの低分子化合物のライブラリを作成してきたが、そのなかでアトピー性皮膚炎や変形性関節症などの炎症性疾患に関わっているとされるVAP-1※の働きを阻害する化合物を数十種類発見しており、今回はこれら化合物の中から有望な化合物をさらに絞り込むため、LEO Pharmaの研究ツールと予算を用いて探索していく取り組みとなる。同社の候補化合物は、他社の候補化合物と比較して、VAP-1の阻害効果が高く、かつ選択制が高いこと(副作用リスクが低い)がin vitro試験で確認されており、今後、LEO Pharmaでのスクリーニング評価によって、有望な治療薬候補化合物が絞り込まれれば、前臨床試験や臨床試験に向けた共同開発契約につながっていく可能性がある。スクリーニング評価に関しては半年から1年程度かかる見通しで、2021年の前半には結果は判明するものと思われる。



※ VAP-1(Vascular adhesion protein-1)は血管内皮表面に存在する白血球接着分子のことで、アトピー性皮膚炎や乾癬、変形性関節症、糖尿病性腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの炎症性疾患では、VAP-1の異常な活性化が認められている。このため、VAP-1の働きを阻害することで、これら炎症性疾患の症状を和らげる効果があると考えられている。





VAP-1阻害剤については、適応範囲が広く潜在的な市場価値が大きいため大手製薬企業でも活発に開発を進めているが、上市実績がまだないだけに今後の動向が注目される。また、皮膚科領域以外についてはほかのパートナー企業との共同開発の可能性についても検討していく予定となっている。米国では新型コロナウイルス感染症の重症患者において一定数が、ARDSを発症し死に至ると言われている。VAP-1阻害剤は、ARDSにも薬効の可能性があることから、現在、米国の研究機関と協議を進めており、補助金を活用した開発を進めていく可能性もある。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)