■業績動向



1. 2021年3月期第1四半期の業績

新晃工業<6458>の2021年3月期第1四半期の業績は、売上高7,214百万円(前年同期比22.7%減)、営業利益660百万円(同54.6%減)、経常利益815百万円(同49.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益775百万円(同32.3%減)となった。第1四半期はコロナ禍に伴う緊急事態宣言の発令により社会経済活動が停滞し、企業収益が急速に減少する厳しい状況であった。空調機器の業界においては加えて、東京オリ・パラに伴う需要の踊り場を迎えたことから、空調機器の全国出荷台数が減少するなど厳しい事業環境となった。



同社は、新晃空調工業と三井鉄工の同社への合併、及び「SIMA」プロジェクトの推進により生産性の向上を図り、またコロナ禍を受けて「健康空調」の営業展開を強化した。しかし、業界の動向に漏れず、同社の空調機器の出荷台数も減少した。売上総利益率は、人手不足で人件費単価が上昇したが、選別受注や派遣などコストコントロールによって横ばい圏を確保した。一方販管費は、業態特性上固定費的な側面が強いことから大きく減じることができず、営業利益は前年同期比で半減となった。



セグメント別では、日本は、東京オリ・パラに伴う再開発や都市圏の大型案件への納入が一段落したことに加え、コロナ禍による建築現場の閉所の影響が重なったこと、空調工事を中心とした戦略受注の効果はあったものの空調機器の国内需要が減少したことから、売上高は6,611百万円(前年同期比24.4%減)、セグメント利益(営業利益)は821百万円(同53.1%減)となった。アジアでは、主力の中国が米中貿易摩擦の長期化で事業環境は厳しかったものの、コロナ禍の影響からいち早く持ち直してきた。そのような状況の中、採算重視の販売戦略に切り替え原価管理を強化したことが奏功し、売上高は609百万円(同3.0%増)、セグメント損失(営業損失)は170百万円(同138百万円改善)となった。





実は評価できる2021年3月期業績見通し

2. 2021年3月期の業績見通し

同社は、2021年3月期の業績を売上高38,300百万円(前期比13.5%減)、営業利益4,950百万円(同45.1%減)、経常利益5,250百万円(同44.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,700百万円(同38.3%減)と見込んでいる。第2四半期以降も東京オリ・パラに伴う需要の踊り場にあること、引き続きコロナ禍の影響があることから、厳しい事業環境が予測されている。しかしながら、中期的に需要の回復が予測され、特にコロナ禍の影響は少しずつ限定的になっていくものと思われ、最悪期は脱しつつあるようだ。



第1四半期の業績は厳しかったが、多くの案件で工事の延期などが生じたことも要因といえる。このため、上期から下期への期ずれ、2022年3月期以降への期ずれが相当数あると想定されることから、2021年3月期通期の売上高は減収予想ではあるものの、減収幅は縮小していく見込みである。固定費的な販管費は短期的に削減が難しいが、売上総利益率については、製造原価をコントロールし販売価格を維持することで下がらないよう努力する方針である。この結果、2021年3月期の営業利益も第1四半期より減益幅が縮小する見込みになるが、前期比45.1%減と大幅減益に変わりない。しかしこれは、2020年3月期の営業利益が東京オリ・パラ特需で突出したことが要因で、減益幅が大きく見えるだけである。実態としては、2021年3月期の営業利益は2016年3月期(6,033百万円)−2019年3月期(5,376百万円)のトレンドラインの中にあり、案件数のピークアウトにコロナ禍が重なった割に評価できる利益水準と言えるだろう。





中期的に利益を維持拡大する予想

3. 中期成長イメージ

同社は、縮小している国内市場が2023年3月期には持ち直すと見ている。一方で、コロナ禍の影響により再び経済全体が低迷するリスクもあり、その後は中長期的に建設市場の低迷に備える必要があるという認識も持っている。また、労務費・人件費の上昇、各種投資による減価償却負担などコストは増加傾向にある。したがって、利益を確保するためには筋肉質な体制に転換することが急務と考えられ、「SIMA」プロジェクトを着実に前進させる意向である。



これまで述べてきたように、東京オリ・パラ特需を背景とした持ち越し案件、コロナ禍による期ずれ案件、首都圏を中心とした駅前再開発プロジェクト、大阪・関西万博、リニア中央新幹線など将来の大型案件、更新需要の増加などから、先行きリスクばかりというわけではない。また、2021年3月期、2022年3月期は先行き不安から一部で投資意欲の減退が見られるなどの理由から市場は縮小する見込みであるが、全国主要都市には数年前から計画されている大規模開発案件が一定数存在するため、中期的には需要は回復基調での推移が予想される。海外は、東南アジアとインドは高級ホテルをターゲットにしたFCU販売が見込みの立たない状況だが、中国はコロナ禍を乗り越え巡航速度に回復しつつある。以上を考慮すると、「SIMA」プロジェクトなどの経営戦略を着実に実行することができれば、シェアの拡大や新規領域への拡張、生産性の向上によって中期的に利益を維持拡大していくことは可能と考えられる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)