■中期経営計画



1. 長期経営構想と中期経営計画

ROEや利益率の水準、多角化に関する課題は、当然だが、シナネンホールディングス<8132>も十分理解している。というのも、2017年に始まり、2027年の創業100周年をも視野に入れた長期経営構想で、「人財」を強化し、既存事業における経営基盤を強化、新規事業と海外事業を深耕し、持続的成長と企業価値向上を目指すとしているからだ。まさにエネルギー事業の収益力向上と多角化による成長力強化という改善策そのものである。なお、長期経営構想は第一次から第三次の中期経営計画として実行計画に落とし込まれている。第一次中期経営計画(2018年3月期−2020年3月期)で事業の選択と集中、資本効率化に着手、第二次中期経営計画(2021年3月期−2023年3月期)で創業100周年や第三次中期経営計画に向けたマイルストーンとして基盤を整備、第三次中期経営計画(2024年3月期−2026年3月期)では更なる飛躍・躍進を目指して成長するというシナリオである。



しかし、第一次中期経営計画は計画どおりに進捗したとは言えなかった。特別利益を計上したためROEは6.3%と当初計画の6.0%を上回ったが、営業利益は2,400百万円と当初計画の4,800百万円を下回った。これは、収益構造改革のための新規事業開発の先行コスト、人口減少や例年にない暖冬、省エネ化によるエネルギー消費量の減少、プロジェクトの遅延など、想定以上にネガティブなインパクトが生じたためである。この結果、企業風土、収益化のスピード、効率化ノウハウの共有、タイムリーな経営情報の提供、既存事業の利益率向上、適材適所の人材配置といった課題が浮かび上がった。





今は躍進のための基礎固め

2. 第二次中期経営計画の定性目標

2020年春スタートした第二次中期経営計画では、こうした課題を克服する内容にもなっている。まず、スローガンとして「Challenging New Worlds with Big Sky-thinking〜大胆な発想で新しい世界への挑戦」を掲げ、第三次中期経営計画でさらに躍進するための、すなわち持続的な成長を続ける組織となるための事業構造改革を基本方針とした。この基本方針をベースに、資本効率の改善、持続的成長を実現する投資、社員の考え方・慣習・行動様式の変革を定性目標として設定した。具体的には、資本効率の改善では、既存事業の利益率の向上策に加え、低効率資産の活用・売却ほか事業の選択と集中を強力に推進する。持続的な成長を実現する投資では、M&Aによる既存事業の収益基盤の強化、関東での建物維持管理事業のM&A、国内外での再生可能エネルギーの推進、シェアサイクル事業など優先実行すべき新規事業開発の明確化を進める。さらに、競争力の維持・強化のためデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、環境変化に対応した高度な基幹システムの構築やLPWA※(Low Power Wide Area)などITを駆使した業務の効率化を目指す。社員の考え方・慣習・行動様式の変革では、職を楽しむ働き方改革、適材適所の人材配置、自由闊達な社内風土の醸成、アントレプレナーシップ(起業家精神)を持った多様な社員の育成によって、予測不能な時代に対応可能な企業風土・企業体質への改善を目指すとした。この企業風土の変革は、長期的な視点からも最重要な施策と言うことができるかもしれない。



※LPWA(Low Power Wide Area):省電力かつ広域対応の通信技術で、IoTの代表例。LPガスのメーターに応用することで、リアルタイムの自動検針が可能となる。このため、検針や配送作業などのコスト削減や新たなサービスの創出などが期待されている。







資本効率を重視した目標設定

3. 第二次中期経営計画の具体的施策

定性目標に対して定量目標は、持続的に「ROE6.0%以上」を生み出す事業構造の確立だけで、やや控え目な表現になっている。理由は、第二次中期経営計画が、創業100周年を臨む第三次中期経営計画で更なるROE向上や成長性の確保に向けたマイルストーン(中間達成目標)としての位置付けであり、収益や成長の基盤を構築するため、つまりやや先行投資的になるためと思われる。一方、第一次中期経営計画で浮かび上がった課題を解消する必要があり、セグメント別の収益改善や成長性確保への施策や投資は、以下のように具体的かつ明確である。



BtoC事業では、M&Aによるシェア拡大や新規商材による顧客深耕によって経営基盤を強化する戦略である。石油・ガス事業では、営業権の買収やガス事業者のM&Aなどにより顧客基盤を拡大・強化、自社営業により直販顧客の獲得も進める。また、物流アライアンスやIoTを活用して業務の効率化も行う。電力事業では、ガス・灯油とのセット販売や登録店・取次店方式・パートナーなどを活用し、「ミライフでんき」の拡販を推進する。住まいと暮らしその他の新規事業では、水回りリフォーム専門店やアフターFIT商品※の拡充による顧客層の拡大、顧客管理システムを利用した効果的な営業の仕組みづくり、石油からガス、電気、住まいと暮らしまでのワンストップサービスの確立、空家管理サービスなど不動産関連サービスの拡充などを進める方針である。



※アフターFIT商品:FIT(Feed-in Tariff)とは、太陽光など再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取る固定価格買取制度のこと。アフターFITとは買取期間終了後の課題を指し、現在は買い取りの新制度化や自家消費としての有効利用などが課題解消の候補。いずれにしろ、同社にとっては蓄電池やメンテナンスなど新たな需要が期待される。





BtoB事業は、既存事業の安定的な成長に加え、新規事業の開発でより高い収益を目指す戦略である。石油事業では、物流機能の強化、グループ会社と連携した拠点の開発・整備、好採算の川下分野において軽油販売や灯油宅配でホームセンターなどとの協働により収益力の向上を図る。電力事業では、取次店開拓のほか、法人向け低CO2電力など環境配慮型料金メニューの拡充や、太陽光発電関連のメンテナンス事業で製販一体化した新商材・新販路の開発を進める。新規事業では、アジアを中心とした風力や水力など再生可能エネルギー事業への投資、国内外での新型マイクロ風車関連事業(製造販売)の開発促進を推進する。



非エネルギー及び海外事業は、個々の事業環境や特性に応じた成長戦略の展開を目指す戦略である。建物維持管理事業では、事業エリアの関東全域への拡大と設備工事・保守事業への展開に加え、集合住宅メンテナンスのワンストップサービス推進を図っていく。自転車事業では、プライベートブランド開発による顧客開拓と収益力強化に、「ダイシャリン」店舗の構造改革も図る。シェアサイクル事業では、ステーションの設置エリアを限定することによる運営の効率化や、自治体・コンビニ・不動産会社などとの連携を推進する。環境・リサイクル事業では、木質チップ工場の安定稼働と効率化による収益安定化、新商材や新たなバイオマス燃料事業の開発を図る。抗菌事業では、抗菌・消臭の総合ソリューション事業への進化を目指す一方、鉛吸着剤など新規事業開発も進める。システム事業では、機能強化やサービス拡大による顧客獲得とIoTを活用した新規事業開発を推進する。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)