■富士ソフト<9749>の事業内容



3. 存在感を増す狭義のプロダクト・サービス

SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスの2020年12月期の売上高は前期比15.4%増、営業利益は同63.0%増と大きく伸長、全社に占める構成比は売上高で前期比3.2ポイント増の33.2%、営業利益が同8.4ポイント増の32.1%となり、存在感が一段と増している。また、四半期ごとの受注獲得ペースは概ね期を通して好調に推移(第1四半期:前年同四半期比18.5%増→第2四半期:同30.8%増→第3四半期:同19.4%減→第4四半期:同24.1%増)、期末受注残高は前期末比30.8%増と大幅に積み上がっている。



狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」、SIMフリー向けモバイルルータ「FS030W、FS040W」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)、から成る。



2020年12月期の前期比増収率を見ると、自社プロダクトが38%増(2019年12月期13%増)、ライセンスビジネスが46%増(同28%増)、物販等が14%減(同15%増)となり、ライセンスビジネスと自社プロダクトの好調ぶりが際立つ。ライセンスビジネスでは、AWS導入先が前期比80%超の大幅伸長となり、自社プロダクトでは、AIS-CRM領域のプロダクトである「SIMフリー向けモバイルルータ」が同市場でシェア54%を占めるヒット商品へと成長した。また、「みらいスクールステーション」については、政府によるGIGAスクール構想(全国の小・中学校等における通信ネットワークやPC端末の整備にかかる費用を国が補助する制度)がコロナ禍のなかで前倒しされたことが需要喚起につながっている。



ライセンスビジネスについては、Windows7のサポート終了(2020年1月14日)特需のピークアウト後も販売拡大が継続している。加えて、office365や各種クラウドサービスといったICTプロダクトのサブスクリプションモデル化(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)の進展により、従来以上に事業の安定性が高まっている可能性があるだろう。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上は自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。



また、長期的な人材育成に裏打ちされた同社の一連の取り組みは、事業パートナーからも高く評価されている。具体的には、1)「Microsoft Japan Partner of the Year 2019」におけるModern Deviceアワードの受賞、2)世界最大のITクラウドサービスを運営するAmazon Web Services(AWS)からは2019年に「政府機関コンピテンシー」と「IoTコンピテンシー」、「マネージドサービスプロバイダ」の認定(前者2つは国内初)を取得、2020年には特に優れた実績を残したパートナーだけに与えられる「APNプレミアコンサルティングパートナー」とオンプレミス環境からAWSへ移行するための総合的なスキルと実績が必要な「移行コンピテンシー」、「AWS well-Architectedパートナープログラム」の認定を取得、3)IT仮想化市場で世界一のシェアを誇るVMwareからは、2020年からの新しいパートナー制度においてデータセンター仮想化、ネットワーク&セキュリティ、デジタルワークスペースという3つのカテゴリー(全5カテゴリー)で最上位認定である「Principal」を取得、VMware 2020パートナーオブザイヤー賞(アジアパシフィック及び日本地域のクラウドプラットフォームトランスフォーメーション部門)、4)企業向けインテリジェントオートメーション分野におけるグローバルリーダーであるBlue PrismからRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の技術力等が評価されシルバーデリバリープロバイダー認定を取得、などが2019年以来の実績として列挙できる。



独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、リモート教育関連製品やコミュニケーションロボット、モバイルルータ等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。コアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きと言え、会社側は「投資局面後の収益性については高い水準を求めている」としている。



この点、これまで全社水準を下回って推移してきた狭義のプロダクト・サービスのセグメント利益率が、2020年12月期に6.4%と2018年12月期の2.9%から3.5ポイントもの大幅改善を示していることは特筆できるだろう。品質強化のための先行投資等を受けて子会社サイバネットシステムの収益性改善が続いていることに加え、区分内の売上高ミックスも良化(利幅が最も薄い物販等が従来の50%程度から40%程度に低下、ライセンスビジネスが25%程度から30%強に上昇、自社プロダクトは30%に上昇)している。採算性に幅がある商材のスポット的な売上計上に左右されるため、セグメント利益率の短期的な変動に一喜一憂する必要はないものの、今後の推移については期待を持って見守りたい。



4. 底入れを模索するアウトソーシング

アウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は5.8%(2020年12月期)、営業利益構成比は6.1%(同)、セグメント利益率は7.0%である。2020年12月期の売上高は前期比6.5%減、営業利益は同2.1%増、セグメント利益率は同0.6ポイント上昇、期末の受注残高は前期末比22.3%減となっている。



事業構造改革等により利益率は過去3年6%台を維持し全社平均を上回るものの、近年の減収傾向は流通・サービス向け継続案件の減少によるところが大きく、他社クラウドサービスとの競争が厳しいデータセンター事業については、引き続き底入れ模索局面にあると考える。



5. ノンコア領域ながら高収益のファシリティ事業

保有するオフィスビルの賃貸を収入とするファシリティ事業の売上高構成比は1.1%(2020年12月期)、営業利益構成比は5.1%(同)で、セグメント利益率は30.6%(同)と高い。2020年12月期はグループ内の変動要因に一部イベントスペースやテナントフロアの稼働率低下が加わって、前期比8.5%減収、同33.1%減益となったが、セグメント利益率は全社平均を大きく上回っており、ノンコア領域ながら利益水準の下支え役を安定的に果たしている。



有価証券報告書で確認できるファシリティ事業向け保有不動産は、横浜本社(土地取得年:2000年、土地建物簿価:11,399百万円)、秋葉原オフィス(同:2005年、同32,635百万円)、錦糸町オフィス(同:2000年、同6,065百万円)、門前仲町オフィス(同:2003年、同1,760百万円)の4棟である。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)