■中長期の成長戦略



1. 今後のビジョン

不二精機<6400>は、地道な人材育成と技術開発・品質管理体制の強化を進め、オンリーワン(不二=2つとない)企業を目指す。



2. 成長分野への注力

同社は競争力の源泉である射出成形用精密金型及び成形システム事業について、売上拡大よりも収益力アップを目指し、医療用・食品容器用分野に注力していく方針である。精密成形品その他事業では自動車(2輪・4輪)関連部品に経営資源を集中し、アジア地区での生産拡大で価値の拡大を図る。この成長戦略に基づき、工場の増設・新工場開設・生産効率改善を加速させている。具体的にタイ工場では、検査などの遅れに対し検査の自動化を進めてきた。またインドネシア工場では隣接する貸工場の増床が完了、生産能力拡大が収益寄与する。このほか精密金型の製造では、投資総額4億円で、新たに高知県宿毛市に精密金型の新工場開設を進める。安定的な人員確保に対応し、まずは2022年12月にCAD金型設計業務での操業開始を目指す。



(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業:医療用・食品容器用を拡大

射出成形用精密金型及び成形システム事業では、他分野の拡大は行わず医療用・食品容器用を拡大させる方針である。特に医療分野に注力していく。医療用・食品用の成形品は安全性が重要で、素材として低溶出性などが要求される。また透明性・低臭気性・剛性・高圧蒸気滅菌等の耐熱性・耐衝撃性なども必要となり、成型難易度が高い。同社はCDケースで培った透明樹脂の精密成型金型技術で大量生産できる金型の供給を行い、医療用・食品容器用金型の売上を拡大してきたことで同分野の事業は2020年12月期売上高実績で売上比率の56.7%まで比率が高まった。現在、アイテムとしてはダイアライザーなどが多い。同分野は国内向けに加え、特に糖尿病の患者数が世界一で増加も著しく透析患者数が急拡大し普及が加速している中国ローカル向けにも売上拡大を目指すとしている。また注射器ビジネスでは、特にPFSの売上拡大などが期待される。PFSは針刺し事故の危険性軽減や薬剤調整作業時間の短縮、さらには保管効率化や運搬の簡便化など多くの利点を有し、各種製剤で採用が進んでいる。生理食塩水などの低薬価製剤向けから高粘度のヒアルロン酸製剤やワクチン製剤などへの採用も増えており、現在はニプロ<8086>、テルモ<4543>、ジェイ・エム・エス(JMS)<7702>、旭化成メディカル(株)などの国内ユーザー及び日系現地法人向けに供給している。一方、ニプロファーマ(株)はプレフィルドシリンジ製剤の増産に向け、2023年稼働に向け伊勢工場敷地内に新たな製造棟を建設するなどの動きがある。また、最近は新型コロナウイルス感染症対策としてワクチン接種が話題となっており、注射器用金型では多少のインパクトも期待される。なお、中国の医療機器市場は、同国の経済発展に伴い右肩上がりに2ケタ成長を続けていると言われている。同様に、同社の注力するダイアライザーに加え関連する注射器やシャーレなどの消耗品向けも拡大すると見られ、いかにこれを取り込んでいけるかがポイントとなる。そのほかにも同社は、既存の成形設備で取り数を増やすことが可能なホットランナー金型(射出成形時に可塑化された樹脂を製造部へ送る樹脂経路部分をヒーターで加熱し固化させずに生産効率を高める金型)中心に需要拡大を目指す。



(2) 精密成形品その他事業:自動車部品事業に注力

精密成形品その他事業では、自動車部品事業に注力する。同社は現在、タイ・インドネシア・中国(上海)において精密成形品の製造を行い、いずれの地域でも日系自動車メーカーの現地生産が拡大している。特に同社は2輪において日立Astemoを通じ本田技研工業向けが多く、一部ヤマハ発動機<7272>向けにも対応している。また4輪は、日系現地法人である日立Astemo・デンソー<6902>・ミクニ<7247>・東海理化<6995>・ミツバ<7280>・アイシン精機<7259>・住友電装(株)・大同メタル工業<7245>などのほかトヨタ自動車<7203>・本田技研工業向けが中心で、そのほか多数の自動車メーカーに採用されている。今後、これら3地域ではさらに日系自動車メーカーの4輪生産拡大が期待される。さらに軽量化に伴う金属から樹脂化への動きも加わり、樹脂成形品需要の拡大が見込める。



同社は2019年12月期にマツダ<7261>系の(株)ユーシンを主要取引先としている秋元精機工業を子会社化した。秋元精機工業は1960年設立で、精密プレス加工用の金型設計・製作と板金プレス部品、インサート成形品、絞り板金プレスなどの製造経験を持つ。2020年12月期は秋元精機工業分で売上面では4億円程度の寄与があったもようである。同社はプラスチック金型の専業として事業展開してきたが、今後「CASE」に対し、精密金属部品を金型内にインサートして樹脂成形する「インサート成形品」の対応などを図る。具体的には、車載用コネクタ部品などへの参入を想定している。また新たに鈴鹿工場を開設、海外拠点での供給先である日系メーカーの集中する東海地区での量産拠点と位置づけ、グループ全体の精密成形品その他事業のマザー工場として、EVや自動運転車などに対応した新製品の受注・開発拠点となる。



上記のように積極的な成長戦略を志向する同社であるが、足元はコロナ禍の影響を受けて2020年12月期は業績低迷を余儀なくされた。しかしここに来て中国での自動車販売の回復、さらには自動車の軽量化や精密部品ニーズの高まりから同社の精密成形品に対する需要が着実に増加している。全体として注力2分野の拡大により2021年12月期は下期にかけて収益拡大が見込まれ最高益更新、さらに2022年12月期は収益性も改善が進み新たな事業拡大が期待される。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)