■要約



3. 今後の成長戦略

中長期的な企業価値向上のため、ROIC(投下資本利益率)を意識した資本コスト経営を取り入れている。アジア圏での再生エネルギーグローバル企業になることを目標に、企業価値の持続的成長を図るため、以下3つのステップを掲げる。今後の市場環境は、海外・国内ともに再生エネルギーを推進する各国の方策に大きな変更はなく、グリーンエネルギー事業や太陽光パネル製造事業を営むVSUNにとっては引き続き追い風となる。



(1) 発電所の自社保有による安定収益、キャッシュ・フローの確保

Abalance<3856>は2030年までに、国内外を合わせて1GW規模の発電所を保有することを目標として掲げている。1GWの発電能力は原発で1基分に相当する規模となり、同社にとって売電事業は将来的に安定収益源となる。開発を推進してきた発電所は売電を開始し、ストック型ビジネスモデルの移行期から初期の実現段階へと移行しつつある。建設中の発電所が順次完工後、売電収入へと転化するため、全体の保有発電所の増加に伴い収益、キャッシュ・フローが増加し、収益基盤が拡大していく見通しだ。2021年3月に大規模開発となる角田市太陽光発電所が売電を開始するなど、メガソーラー発電所が相次いで稼働することで、2022年6月期以降は事業構造の転換期から、ストックビジネスの積み上げに伴い、安定的な収益拡大局面へ移行していくものと予想される。



(2) 適切なリスク管理のもと、海外投資の着実な推進

2つ目の戦略として、自社保有発電所の売電収入で獲得したキャッシュ・フローを使って、コロナ禍における適切なリスク管理のもとで、電力需要が旺盛な海外市場での投資を拡大していく。既に、ベトナムや台湾等の現地企業との合弁会社でソーラー発電プロジェクト(EPC及びIPP事業)を含む複数のプロジェクトを推進してきた実績があり、JCM※案件などを含め総合的な押上げを図る方針だ。また、ODAプロジェクトについても積極的に応募し、案件獲得を目指すしていく。またVSUNは旺盛な需要を背景に、生産能力増強を図るため新工場建設などを企図しているもようだ。現在は欧米市場向けが中心だが、今回の連結化が契機となり、今後は同社グループ間での共同事業なども期待できる。ベトナムを中心とした東南アジア市場においても太陽光発電ニーズは大きく、VSUNの中長期的な成長余地は大きいものと考えられる。



※2020年2月には、環境省が実施する2019年度「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)」資金支援事業に、WWBがカンボジアで進める太陽光発電とバイオマス発電を併設した計1.5MW規模のハイブリッド発電設備整備プロジェクトが初めて採択された。





(3) 新規事業によるアップサイド(+α超過利益)の獲得

既存事業の拡大戦略に加えて、卒FIT、蓄電池、風力開発、再生エネルギー関連のM&Aなどによる新規事業の育成にも注力していく。市場では2019年11月以降、順次買取契約期限を終える卒FIT(固定価格買取制度)※1に注目が集まっており、同社は卒FIT戦略として第三者保有やPPAモデル※2等を検討しているほか、FIT売電型に代わって自家消費型の市場拡大によって需要増加が見込まれる蓄電池事業への本格参入を企図している。そのほか風力開発では、WWBが北海道檜山エリアで陸上小型風力発電所を開発、売電を開始しており、今後は採算性も見ながら計画的に進めていく方針となっている(設備投資額は1基当たり約30百万円)。また同社は、再生エネルギー関連で会社の方針に見合った企業があれば、事業機会としてM&Aを行う方針を示している。実際に子会社のバローズが2021年3月にBLESSの全株式を取得し(取得額281百万円)、子会社化している。



※1 FIT制度(固定価格買取制度)とは、再生エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。発電した電気は全量買取対象となるが、住宅用等の10kW未満の発電設備では自家消費した後の余剰分が買取対象となる。

※2 PPAモデルとは、「Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル」の略で、電力の需要家がPPA事業者に敷地や屋根などのスペースを提供し、PPA事業者が太陽光発電システムなどの発電設備の無償設置と運用・保守を行い、需要家からの売電収入によって収益を獲得するモデル。





■Key Points

・グリーンエネルギー事業と新たに加わった太陽光パネル製造事業を両輪とした再生エネルギーのグローバルカンパニー

・2021年6月期第2四半期累計業績は、VSUNの連結化により大幅増収増益に

・上方修正した2021年6月期業績見通しは保守的。なお上振れ余地あり

・VSUNの子会社化によりアジア圏における再生可能エネルギーのグローバル企業を目指す体制が整う



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)