■今後の見通し



1. 2022年3月期業績の見通し

KADOKAWA<9468>の2022年3月期の連結業績は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大が継続しており市場環境の不確実性が高いことを踏まえて、レンジ形式で見通しを発表している。売上高は218,000〜228,000百万円(前期比3.8%〜8.6%増)、営業利益は10,000〜14,000百万円(同26.6%減〜2.8%増)、経常利益は10,500〜14,500百万円(同26.9%減〜0.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,900〜9,600百万円(同28.0%減〜0.2%増)となる。



下限値はコロナ禍の影響が深刻化する可能性を考慮した数値となっている。また、上限値でも営業利益率が2021年3月期より低下する見込みとなっている。これは将来の成長に向けた投資を継続していくほか、減価償却費も増加することが主因となっている。EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)では、15,300〜19,300百万円(前期比15.7%減〜6.3%増)となり、上限値での利益率はほぼ前期並みの水準となる。





主力の出版事業は成長投資の実施により増収減益を見込む

2. 事業セグメント別見通し

(1) 出版事業

出版事業の売上高は133,000〜136,400百万円(前期比2.6%〜5.3%増)、営業利益は10,600〜12,400百万円(同17.5%〜3.4%減)を見込む。電子書籍の成長が続くほか、紙書籍についても堅調な推移を見込んでいる。紙書籍の返品率については前期並みの水準を前提にしているが、ECストア経由の販売構成比の上昇や専用発注端末導入店舗数の増加があれば、さらに改善が進む可能性もある。ただ、2021年3月期はコロナ禍において紙書籍も想定以上に伸長したこともあり、保守的に見ているようだ。



こうしたなかで利益率が低下する計画となっているのは、IP創出力の強化を図るため編集者の増員を進めること、海外で普及が進んでいる縦スクロール漫画の開発投資を行うこと、「ニコニコチャンネル」との連携強化に向けた投資を行うこと、広告宣伝費を積み増すことの4点となる。編集者の増員については今後数年間かけて前期比2割増の約600名体制まで増員する計画となっている。縦スクロール漫画とはスマートフォンで読むことを前提にして描かれた漫画のことで、今後の市場拡大を見越してIPの創出とプラットフォームの開発を進めている。2022年3月期中にも販売を開始する見通しだ。また「ニコニコチャンネル」との連携については、書籍のIPを「ニコニコチャンネル」で収益化していくための投資となる。



業績下限値の前提としては、紙・電子書籍の新刊刊行遅延・中止、書店の休業、権利許諾等へのマイナス影響などを織り込んでいる。



(2) 映像事業

映像事業の売上高は35,000〜37,100百万円(前期比11.8%〜18.5%増)、営業利益は2,500〜3,400百万円(同9.9%〜49.5%増)を見込む。前期に引き続きアニメ事業がけん引する格好で、実写事業や「ムビチケ」、スタジオ事業についてはコロナ禍でほぼ横ばい水準にとどまる見通しだ。アニメ事業では、ゲーム化を含む国内外における権利許諾収入が増加する見通し。またアニメ需要の拡大に対応するため、本数増加と制作能力向上のための投資も行っていく予定だ。



業績下限値の前提としては、劇場公開、映像スタジオ、「ムビチケ」事業等へのマイナス影響を織り込んでいる。2021年4月下旬より4都府県で3回目となる緊急事態宣言は発出され、5月に入ってからは対象都市が10都道府県に拡大したうえ映画館の休業要請も出されており、マイナス影響が徐々に出始めている。



(3) ゲーム事業

ゲーム事業の売上高は14,000〜14,800百万円(前期比15.8%〜11.0%減)、営業利益は1,300〜1,800百万円(同52.6%〜34.4%減)と減収減益で見込んでいる。前期の収益に貢献した旧タイトルのリピート需要が減速すると見ていることが主因だ。前述したとおり、2021年3月期第4四半期からその兆候が出始めている。業績下限値の前提としては、コロナ禍での新作ゲーム開発遅延が挙げられる。



なお、フロム・ソフトウェアが過去最大規模のゲームとして開発を進めている「ELDEN RING」については、販売時期が未定となっている。同タイトルは全世界で累計2,700万本超の販売を記録している「DARK SOULS」シリーズの進化版となるアクションRPGで、海外からも非常に注目度の高いタイトルとなっている。このため、販売が開始されれば収益へのインパクトも大きくなることが予想されるが、リリース時期が未定のため業績計画にはほとんど織り込んでいないものと思われる。直近で大ヒットしたタイトルとしては、フロム・ソフトウェアの「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」があり2019年3月の発売日から10日間で200万本の販売を記録した(累計500万本以上)。



(4) Webサービス事業

Webサービス事業の売上高は21,400〜22,200百万円(前期比2.8%減〜0.9%増)、営業利益は2,100〜2,500百万円(同0.2%〜19.3%増)を見込む。「ニコニコ」関連事業では、売上高で前期比横ばい水準となるが、プロモーションコストなどの費用を抑えることで増益となる見通しだ。「ニコニコ動画」のプレミアム会員数が減少したとしても、有料生放送や「ニコニコチャンネル」等、収益源の多様化が進むことで安定した収益を継続していく。



ライブ事業については、「ニコニコネット超会議」など引き続きオンライン開催したイベントがある一方で、「Animelo Summer Live」についてはリアルでの開催を予定している。業績下限値の前提は、イベントの中止となる。



(5) その他事業

その他事業の売上高は22,400〜25,300百万円(前期比28.3%〜44.9%増)、営業損失が4,600〜4,200百万円(前期は4,491百万円の損失)を見込む。教育事業については、「N高等学校」などインターネットによる通信制高校の生徒数が、2021年5月1日時点でおよそ18,731人と2020年4月時点から約2割増と順調に拡大しており、2ケタ増収が続く見通しだ。特に、2021年4月より開始した「普通科プレミアム」コースでは国内で初めてVR技術を用いた本格的な授業となっており、VR技術を用いることで学習力の向上がどの程度変わってくるか、今後の動向が注目される。同コースは2021年5月現在、約3,000人の生徒が受講している。



一方、MD事業については前期比横ばい水準で見込んでおり、コトビジネスに関しては「ところざわサクラタウン」が通年で寄与することで大幅増収を見込んでいる。ただ、利益面では減価償却費の増加によって前期並みの損失額が予想される。業績下限値の前提に関しては、コロナ禍によるMD事業やコトビジネスへのマイナス影響を織り込んでいる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)