■中期経営計画



1. 長期ビジョン“Century 2025”とは

三機工業<1961>は2017年3月期から創立100周年の2026年3月期に向けて、10年間の長期ビジョン“Century 2025”を発表している。この長期ビジョンの最終目標を「選ばれる会社」と定め、その目標達成のために10年間を3つのPhaseに分け、中期経営計画に基づく事業戦略を推進していく方針を掲げている。



2. 2021年3月期の総括

(1) “Phase2”の業績目標と実績

2022年3月期を最終年度とする中期経営計画の“Phase2”に差し掛かり、2021年3月期はコロナ禍の影響により売上高、営業総利益、経常利益は目標に届かなかった。“Phase2”の最終目標値は、2022年3月期に経常利益率5.0%以上、年間配当金60円以上、自己株式の取得500万株程度(2020年3月期から3年間)、総還元性向70%以上、ROE8.0%以上としている。今後、コロナ禍の影響がどこまで長引くかは不透明であるが、現時点においては、この目標は変えておらず引き続きこれらの計画を推進していく方針だ。同社は「今後のコロナ禍の影響は不透明であり、業績に影響を及ぼす可能性があるものの、“Phase2”計画を粛々と推進し、目標を達成する」と述べている。



(2) 「質」と「信頼」の向上に向けた取り組み

“Phase2”では、同社への「信頼」を高めるため、「質」を高めるためにさらなる追求をしていくフェーズである。



「質」の向上については、技術開発の推進、省エネ・省力化ニーズへの対応に取り組んでいる。具体的には、建築設備工事向けの自律走行型風量測定ロボットを開発し、建設現場におけるロボットの活用による省力化、省人化に向けた取り組みを進めている。さらに、脱水汚泥の含水率をAIで予測するシステムを開発し、汚泥処理設備全体の省エネを目指している。省エネ・省力化については、大幅な省エネとCO2削減の、発電も可能にするバイナリー発電システム付過給式流動炉が「北多摩一号水再生センター 汚泥焼却設備再構築工事(東京都)」に採用された。



「信頼」の向上については、1)株主還元(配当金、自己株式取得・消却)、2)協力会社への支払条件見直し、3)働き方改革、社内コミュニケーションの向上、社会貢献、 情報発信、の3つに取り組んでいる。



1) 株主配当(配当金、自己株式取得・消却)

同社は株主還元策の一環として、株式市場での積極的な自己株式の取得及び消却を行っている。2014年3月期から2021年3月期までに同社が行った自己株式の取得及び配当金の総額は34,919百万円となり、この間の親会社株主に帰属する当期純利益の総和40,678百万円に対する割合、つまり総還元性向(加重平均)は85.7%となる。この水準は多くの上場企業のなかでも非常に高いと言える。同社は“Phase2”の最終年度となる2022年3月期に5,000千株程度の自己株式の取得(うち、2,958千株は取得済み)を行い、配当を合わせた総還元性向は70%以上とする目標を掲げている。



2) 協力会社への支払条件見直し

同社は、株主以外のステークホルダーに対しても前向きに対応している。具体的には、協力会社への支払い条件を見直し、資本金4,000万円未満の協力会社に対しては全額現金払いとした。また今後のコロナ禍の影響などの社会情勢の変化に備え、協力会社支援のための資金確保や運転資金の一時的な需要に備えることを目的としてコミットメントラインの契約締結を実施している。



3) 働き方改革、社内コミュニケーションの向上、社会貢献、 情報発信

働き方改革については、社長をリーダーに「スマイル・プロジェクト」を立ち上げ、休暇制度見直しや工事現場の業務負担軽減など、全社を挙げて働く環境の整備に努めている。また、社内コミュニケーションについては、コミュニケーション不足となりやすいコロナ禍において、オンラインで社長と社員との意見交換や役員による意見交換会を行うほか、人材確保・人材育成に生かす試みも行っている。社会貢献については「SANKI YOUエコ貢献ポイント」制度を設け、環境保全活動を助成している。顧客にCO2削減につながる設備の省エネを提案し採用となった場合に、その削減量をエコ貢献ポイント(1トン当たり100円)に換算し、植樹活動支援を行っている。2021年3月期で10周年となった。情報発信については、同社の新広告「カイテキをカタチに。」のCMやポスターを各支社・支店の地域においてオーロラビジョン・デジタルサイネージなどで展開している。



(3) 各セグメント別トピックス

以下に“Phase2”の2021年3月期の取り組みをトピックスとしてまとめた。



1) 建築設備

コロナ禍の影響により補修等の小規模営繕工事の受注売上が停滞したが、好調な半導体・5G関連等の需要を取り込み2020年3月期以上の受注を確保

a. 施工省力化新技術の現場導入(自律走行型風量測定ロボット開発・現場運用開始)

b. 三機テクノセンター活用による災害件数、施工中トラブル・クレームの削減



2) ファシリティシステム

感染防止策として、オフィスのワークスタイルコンサルティングが増加

a. コンサルティング推進課を新設し、新コンサルティングサービスを提供

b. 次世代中央監視システム(SIer)の受注・売上が堅調に推移



3) 機械システム

コロナ禍の影響により製造業向け受注売上が停滞するも、ロボットによる省力化・自動化ニーズ拡大

a. ロボットと搬送設備を組み合わせたハイブリッドシステムの受注・売上が堅調に推移



4) 環境システム

国土強靭化のニーズ拡大を受け、受注が大幅に増加

a. 同社初のバイナリー発電システム付過給式流動炉を採用した大型案件を受注

b. 脱水汚泥の含水率をAIで予測するシステムを開発



3. ESGへの取り組み

同社はESG活動にも積極的に取り組んでいる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)