■業績動向



1. 2021年3月期決算はクリクラ事業の好調目立つ

ナック<9788>の2021年3月期の業績は、売上高55,513百万円(前期比37.1%減)、営業利益2,782百万円(同31.3%増)、経常利益2,683百万円(同27.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,837百万円(同3.57倍)と、大幅減収となったものの大幅増益を達成した。売上高・利益ともに大きな変動要因となったのは、これまで赤字が続き収益を圧迫していた子会社レオハウスを第1四半期期間中にヤマダ電機(現 ヤマダホールディングス)に譲渡したことが背景にある。



セグメント別に見ると、クリクラ事業は、価格改定効果により売上高・利益ともに伸長した。また、加盟店部門で新型サーバーを投入した効果も収益に貢献した。さらにコロナ禍に伴い、感染予防へのニーズが高まり、自社製次亜塩素酸水溶液「ZiACO」の売上増が寄与した形となった。同事業のセグメント営業利益は前期の1,030百万円から1,627百万円に拡大、売上高営業利益率も7.7%から10.9%に飛躍し、全体を押し上げる要因になった。



レンタル事業では、ダスキン事業が新規出店を通じた商圏拡大、既存顧客の深耕によって好調に推移したものの、新規出店と販売促進体制の強化に伴い販売費及び一般管理費が増加し、利益面を圧迫した。さらに、利益率が高い害虫駆除事業がコロナ禍に伴い、主要顧客である大都市圏の飲食業の需要減により大幅に計画を下回ったことも響いた。以上によりレンタル事業のセグメント営業利益は1,333百万円(前期は1,844百万円)と減益を余儀なくされるとともに、売上高営業利益率も12.5%から9.1%に低下した。



建築コンサルティング事業は、前期に子会社化したエースホームとの共同開発商品が好調であった。当期のセグメント営業利益は807百万円と前期の730百万円を上回った。



住宅事業は、前述したようにレオハウスの譲渡により売上高が大幅に減少した。しかし赤字体質だった同社が連結対象から外れたことにより利益率が向上し、セグメント営業利益は前期の545百万円の赤字から74百万円へと黒字転換した。



美容・健康事業では、主力の化粧品会社JIMOSの自社ECサイトにおいて使用しているサーバーへの不正アクセスが2020年3月期(2019年7月)に発生した。発生後4ヶ月間のECサイト停止による顧客減の影響が続いているが、広告宣伝費や販売促進費の削減などによって、セグメント営業利益は122百万円(前期は125百万円)と前期と横ばいで着地した。



全体としては、クリクラ事業において新型サーバーの投入によってビジネス機会が広がっているほか、感染予防のニーズを捉えた商品の好調によって利益を確保、他分野の伸び悩んだ分をカバーした。事業の多角化によるリスク分散が功を奏したほか、レオハウス譲渡による事業構造の変革の効果が早くも現われた格好となった。



2. 2022年3月期は先行投資で“足場固め”

2021年3月期の業績見通しは、売上高57,600百万円、営業利益2,600百万円、経常利益2,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,600百万円としている。今後の顧客確保のための先行投資を活発化させる予定であり、同社は2022年3月期を“足場固め”の1年と位置付けている。



またコロナ禍により先行きが不透明でありながらも、カバーできる要因は多い。たとえば、クリクラ事業においては、オフィス需要は低下してもテレワーク化の推進等で家庭用需要が増加傾向にある。現在、家庭向けとオフィス向けの比率は8対2である。オフィス向けは単価が大きいものの、1人当たりの水分摂取量が変わらないとすれば、需要が家庭用へシフトしてもトータルでは大きな変化は生じないだろう。



さらに、自社製次亜塩素酸水溶液「ZiACO」については、今後も需要が拡大していくものと見られる。コロナ禍が収束した後も除菌液やレンタル事業の有望製品である空気洗浄機など感染予防へのニーズは残るだろう。そのため、当面は収益をクリクラ事業がリードすると弊社は見ている。



一方、利益面では、同社は営業活動の強化を重要な課題としているため、セールスマンの増加による人件費や販促費などを顧客獲得に向け積極的に投入する考えである。同社が中期経営計画に掲げた利益目標の達成に向け、2023年3月期以降に業績へ効いてくるものと見ている。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)