■業績動向



1. 2021年3月期の業績概要

(1) 損益状況

ムサシ<7521>の2021年3月期の連結業績は、売上高30,261百万円(前期比19.5%減)、営業損失97百万円(前期は1,025百万円の利益)、経常利益24百万円(同1,228百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失28百万円(同865百万円の利益)となった。



主力の選挙システム機材において、東京都知事選挙があったものの2019年4月の統一地方選挙や同年7月の参議院選挙のような大型選挙がなかったことにより、売上高が前期比54.5%減となったことが響いた。他の事業もコロナ禍の影響を受けて減収となったが、注力しているメディアコンバート事業(情報・産業システム機材の内数)は順調に拡大し、売上高は4,017百万円(前期比15.8%増)となった。



(2) 財務状況

2021年3月期末の財務状況は、流動資産は前期末比で2,241百万円減少し30,568百万円となった。主に現金及び預金の減少1,699百万円、受取手形及び売掛金の減少801百万円による。固定資産は前期末比で649百万円増加し10,744百万円となったが、主に株価上昇の影響等による投資有価証券の増加250百万円、年金資産の時価上昇等による退職給付にかかる資産の増加451百万円による。その結果、資産合計は41,312百万円(前期末比1,593百万円減)となった。



負債合計は、14,279百万円(同1,422百万円減)となったが、主に電子記録を含めた仕入債務の減少800百万円、未払法人税等減少262百万円、役員退職慰労金の減少82百万円等による。また、純資産合計は、主に親会社株主に帰属する当期純損失の計上及び配当金支払いによる利益剰余金の減少228百万円、自己株式の取得393百万円、その他有価証券評価差額金の増加185百万円等から27,032百万円(同171百万円減)となった。この結果、2021年3月期末の自己資本比率は65.4%(前期末63.4%)となった。



(3) キャッシュ・フローの状況

2021年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは689百万円の支出であったが、主な収入は税金等調整前当期純利益の計上22百万円、減価償却費326百万円、売上債権の減少903百万円などで、主な支出は、仕入債務の減少782百万円などによる。投資活動によるキャッシュ・フローは612百万円の支出であったが、主に定期預金の預入による支出200百万円、有形固定資産の取得による支出203百万円、無形固定資産の取得による支出155百万円等による。財務活動によるキャッシュ・フローは591百万円の支出であったが、主な支出は、配当金の支払い198百万円、自己株式の取得393百万円による。



以上から2021年3月期の現金及び現金同等物は1,893百万円減少し、期末残高は17,391百万円となった。



2. 2021年3月期のセグメント別状況

セグメント別及びサブセグメント別(単体ベース)の状況は以下のとおりであった。



(1) 情報・印刷・産業システム機材セグメント

セグメント売上高は18,179百万円(前期比12.6%減)、セグメント利益は5百万円(前期は168百万円の損失)となった。減収ではあったが、メディアコンバート事業の増加や印刷事業の利益率改善により前期比で損益は改善した。



a) 情報・産業システム機材

注力している文書のデジタル化事業(メディアコンバート事業)の連結売上高は、4,017百万円(前期比15.8%増)と好調であった。2021年3月期においては民間企業からの受注が62%、官公庁・自治体からが38%で、増加分(548百万円)の大部分は官公庁からであった。一方で、その他の製品の売上高はコロナ禍の影響もあり低調に推移した。成長が期待されている業務用ろ過フィルターの販売は、コロナ禍の影響で多くの飲食業が休業したことから飲料需要の減少を受けて不振であった。特にビール業界の低迷が大きく響いた。その結果、サブセグメントの売上高(単体ベース)は6,825百万円(同2.5%減)となったが、コロナ禍の影響があったことを考慮すれば健闘した結果と言えるだろう。



b) 印刷システム機材

印刷システム機材の売上高(単体ベース)は、8,452百万円(同22.1%減)となった。コロナ禍の影響で各種イベントの中止や店舗の営業自粛等により、商業印刷物の需要が減少し、印刷材料の販売が低調であった。また印刷会社の設備投資意欲減退により、機器販売も減収となった。



(2) 金融汎用・選挙システム機材セグメント

大型選挙がなかったことなどから選挙システム機材が大幅減となりセグメント売上高は、3,491百万円(同48.6%減)、セグメント営業損失は155百万円(前期は1,101百万円の利益)となった。



a) 選挙システム機材

東京都知事選挙などの地方選挙向けの機器やシステムの販売は好調に推移したが、前年のように大型選挙(参議院選挙や統一地方選挙など)がなかったことから売上高(単体ベース)は2,333百万円(前期比54.5%減)と大幅減収となった。これらの製品は、自社開発品で利益率も比較的高いことから、全体の利益にも大きく影響した。



b) 金融汎用システム機材

コロナ禍の影響による巣ごもり需要などでスーパーマーケット向けは比較的堅調であったが、金融機関向け貨幣処理機器の販売が設備投資抑制の影響により低迷、さらに外出自粛の影響を受けたタクシー業界向けも低調であった。この結果、金融汎用システム機材の売上高(単体ベース)は1,087百万円(前期比28.1%減)となった。



(3) 紙・紙加工品セグメント

医薬品向け高機能紙器用板紙の販売は増加したものの、コロナ禍による経済活動の停滞やテレワークの拡大で、印刷用紙や情報用紙の販売が需要縮小の影響を受けた。この結果、セグメント売上高は8,315百万円(前期比14.6%減)、セグメント営業損失は92百万円(前期は55百万円の損失)となった。



(4) 不動産賃貸・リース事業等セグメント

おおむね順調に推移し、セグメント売上高は273百万円(前期比3.4%増)、セグメント営業利益は142百万円(同1.4%減)となった。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)