■業績見通し



1. 2022年3月期の業績見通し

世界経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種率の増加や各国の景気支援対策などにより、先進国を中心に正常化が期待されている。国内経済は、ワクチン接種が始まるなど景気回復への期待は増すが、新年度になっても緊急事態宣言が発出されるなど厳しい現実もある。リソルホールディングス<5261>は、ホテル運営事業を中心に回復状況に不透明感が残ることから、2022年3月期の業績見通しに関して未定とした。ただし、2021年3月期におけるコロナ禍と比較すると、少しずつ先行きが見通せるようになってきていることから、十分とは言えないかもしれないが、業績回復へ向けた動きになることが想定される。以下、各事業のシナリオを考察する。





投資再生事業は反動減、ホテル運営事業は大幅改善へ

2. 2022年3月期業績部門別のシナリオ考察

ホテル運営事業は、コロナ禍の影響を最も強く受けた事業領域であるため、2021年3月期に引き続いて感染防止対策や新たな集客プランなどコロナ禍に対応した施策を打つ方針である。具体的には、マンスリーやウィークリーなど中長期滞在マーケットへの対応、宿泊特価から滞在して周辺観光、体験、食事まで楽しめる付加価値観光型ホテルへの転換、テレワークやデイユース、連泊への対応など、宿泊以外でも楽しめる付加価値を付けたプランを強化する計画である。また、札幌・京都・大阪・博多・関東など重点エリアのサポートを強化する一方、中長期滞在に対応した機能が充実した“ホテルリソル”ブランドの新たなシリーズとして「ホテルリソルステイ秋葉原(2021年冬)」と空港アクセスの良い「ホテルリソルトリニティ那覇(2021年12月)」をオープンする予定である。さらに大好評のスパ & ゴルフリゾートは、久慈で密を避けた安心のプライベートのリゾート空間を演出する新規ヴィラ3棟を新設するほか、ノウハウのほかのゴルフ場への横展開も積極的に行う。また、「暮らすように泊まれる」をコンセプトとする高級貸別荘のリソルステイ事業を拡大する予定である。以上から年間平均稼働率の向上が見込まれる上、新型コロナウイルス感染症のワクチン普及も期待されるため、2020年3月期の業績水準には届かないかもしれないが、業績が大きく改善すると思われる。



ゴルフ運営事業では、引き続き個人を主体とした集客を強化する方針である。グループ内のゴルフコースに久慈のようなフェアウェイフロントヴィラ事業を拡大する計画もある。また、イベントやポイント施策といった会員価値向上策や会員向けWeb告知の強化などによりリピートを促進し、登録数15万人を目途にリソルカードG会員を増やし顧客基盤を強化、ロイヤルカスタマーの拡充を目指す。一方で、ワクチン接種後の法人需要も視野に入れ、下期に向けてコンペ用リソルカードサークルメンバーの獲得も強化する。さらに、2021年4月に新施設として木更津東カントリークラブ(旧亀山湖カントリークラブ)の運営や、光センサー技術「LiDAR」搭載の“ラフ用無人芝刈り機”の実用化に向けた実証実験を開始するなど積極展開を続ける。これにより、ゴルフ運営事業では、コロナ禍以前の収益水準を目指すことになると思われる。



リソルの森(CCRC)事業では、リソルの森の総合力をベースに、体験型と滞在型の両輪で収益を確保する計画である。アウトドアリゾート需要を見据えて「グランヴォー スパ ヴィレッジ」を拡充、湖畔をイメージした新エリア「Glamping Area水-MIZU-」にグランピング施設を新設するほか、スポーツクラブやラク・レマンプール、ターザニア、キャンプサイトなどスポーツアウトドア関連施設を強化する計画である。また、体験プログラムやイベント、連泊商品、ニューノーマル時代の合宿・研修など、リニューアル施設を中心に新企画で集客や付帯売上の拡大を図る。ゴルフ宿泊プランやレストランイベントなど、ゴルファーの層に合わせた商品企画やきめ細かい情報配信でリピート率の向上も狙う。ゴルフバケーションクラブやトリニティ書斎(分譲)など、リゾートリビングの販売も強化する計画である。これらにより収益改善を進め、早期に黒字化を達成する意向である。



その他の事業では福利厚生事業で、アドバンテッジリスクマネジメントとの資本提携による成果を追求する。サービスの相互提供やシステムの連携により、新たなサービス商品を開発することで付加価値を向上させる。出資の一部をシステム投資に充当し、会員個人に直接アクセスできる環境を整え、最適なサービスのレコメンドを通じて売上の拡大を図る。このため、収益的にはややコスト先行の期になりそうだ。再生エネルギー事業では、脱炭素ニーズへの取り組みを加速し、「地球にやさしい企業」を実践する考えである。福島石川太陽光発電所の設備では発電効率の向上、「リソルの森」内の1.5メガワットの太陽光発電事業では期中の売電開始を進める予定である。投資再生事業では、既存ゴルフ場の一部や新規取得ゴルフ場の再生可能エネルギー事業への転用、再エネルギー権利の付いた土地の売却などを推進する方針だが、2021年3月期の売却益の反動は想定する必要がありそうだ(とはいえ、想定にない売却が発生する可能性もある)。





ESGそのものを事業としている

3. 中長期成長イメージとESG・SDGsの関係

今後、中長期的にインバウンド宿泊需要やレジャーが復活することが想定されるため、同社の「リソルの森」を中心とする基本的な経営方針は変わらないと考える。しかし、コロナ禍を経験したことで、新しい生活様式が真にニューノーマルとなるにつれて企業は脱炭素など様々な面で環境や社会への貢献が求められるようになる。このため、同社のコア事業であるリソルの森事業はブランディングと収益拡大が進みやすい環境となり、ホテル運営事業やゴルフ運営事業では新たな商品サービスがビジネスチャンスを広げることになると思われる。再生エネルギー事業は、EV(電気自動車)の普及などを背景に脱炭素の本丸となり、福利厚生事業はグループシナジーの要としての位置付けがより強まると予想される。



同社は、長期方針の中で「人にやさしい」「社会にやさしい」「地球にやさしい」という3つの「やさしい」をすべての事業を通じて実現することを目指してきた。そして現在、事業を通じて、1)「生きがい・絆・健康・くつろぎ」を実現し、2)顧客、株主、取引先、従業員などすべてのステークホルダーとの友好関係を維持、3)省エネや再生可能エネルギー、緑地保全、森林整備などを実践している。その際、1)は企業統治の前提となり、2)は社会貢献、3)は環境貢献そのものとなっている。これはまさにESGそのものであり、同社はESGそのものを事業としていると言うことができる。いずれにしろ同社の「3つのやさしい」は今、それぞれ単なる経営理念を超えて、持続可能な開発目標(SDGs)として、具体的な成果をあげるステージに入りつつあるといえよう。こうしたESGやSDGsに即した事業展開が、同社の中長期成長を後押ししていくことになると予想する。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)