■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向



e) 肝細胞がん(免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬との併用療法)

中外製薬において肝細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブとの併用療法による第1相臨床試験が2021年1月より開始されている。安全性、忍容性及び有効性の評価を行う。予定症例数は20例で、2024年第1四半期の終了を見込んでいる。既にスイスの製薬会社ロシュ〈ROG〉が米国において切除不能な肝細胞がんを対象としたアテゾリズマブとベバシズマブとの併用療法による第3相臨床試験を実施しており、全生存期間が19.2ヶ月と、既存治療法(分子標的薬ソラフェニブ単剤)に対して死亡リスクが34%減少する(ソラフェニブは全生存期間で13.4ヶ月)との試験結果を2021年1月に発表しており、同疾患に対するファーストライン治療として既存薬よりも有効性があるとの認識を示している。



今回、中外製薬において実施する臨床試験において、さらに高い治療効果が確認されれば、国内だけでなく海外でもロシュを通じて開発が進められる可能性がある。仮に、ロシュで開発を進めない場合は、メルクやファイザーなどほかの免疫チェックポイント阻害剤を開発する企業に持ち込んで開発を進めていく可能性がある。なお、肝細胞がんに関しては2014年から2020年にかけて台湾・韓国で提携先のメディジェンが単剤による第1相臨床試験を実施しており、評価可能な18例において安全性が確認されている。また、18例のうち3例で部分奏功が確認されたほか、8割は投与後の腫瘍体積が変化しないといった結果が出るなど薬効が確認されている。同試験結果の内容については、2021年第3四半期のESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表する予定となっている。



f) 頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤、放射線との併用療法)

同社は2020年8月にコーネル大学医学部らを中心とする研究グループと、頭頸部がん患者(手術不能・再発または進行性頭頸部がん)を対象とした医師主導の第2相臨床試験を実施する契約を締結した。試験内容は、免疫チェックポイント阻害剤及び放射線との併用療法による試験で、安全性と有効性を評価する。コーネル大学では放射線療法とテロメライシンの併用による局所作用としての腫瘍縮小効果に加えて、免疫チェックポイント阻害剤を併用することでの全身性の臨床効果を検証する。予定症例数は36症例で、2021年5月に第1例目の投与を開始しており、良好なレスポンスが得られているとの報告を受けている。2022年第2四半期に12例で中間解析を行い、臨床試験継続の可否を判断することになる。既存治療法(放射線+化学療法)より良好な結果が得られれば、中外製薬がオプション権を行使して企業治験に切り替えて開発を進めていく可能性がある。



また、国内でも中外製薬がアテゾリズマブと化学放射線療法の併用による第1相臨床試験を2021年以降開始する予定となっている。予定症例数は23例で2024年第2四半期の終了見込みとなっている。



g) 中国市場での取り組みについて

2020年6月に中国のライセンス供与先であったハンルイとの契約解消を発表して以降、中国圏(香港・マカオ含む)については中外製薬及びその他の大手製薬企業を候補として契約交渉を進めており、2021年内の契約締結を目指している。中国市場でも食道がんや肝細胞がん患者は多く、開発ニーズは大きいと見られる。なお、ハンルイとの契約解消理由については、ハンルイの開発戦略の変更によるもので、テロメライシンの有効性、安全性、製造面での疑義は発生していない。



(3) 製造体制

同社はテロメライシンの製造体制の充実、製造拠点の分散によるリスク軽減などを目的に、商業用製品の製造委託先として新たにベルギーのHenogen SA(以下、ヘノジェン社)と提携し、米Lonza Houston, Inc.(ロンザ)との2社供給体制を構築していくことを発表した。今後、ヘノジェン社の製造拠点でプロセス開発及びバリデーションを行い、2023年末までにGMP※製造ができる体制を整えていく計画となっている。ヘノジェン社は経験も豊富でGMP製造で作っていく実力が十分あると判断した。



※GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造及び品質管理に関する基準のこと。GMP認定のためには、製造工場ごとに構造や設備の運用・管理、製品の品質・衛生・製造管理などの細部にわたる審査・査察を受け、基準を満たすことが必要となる。創薬においては、GMP準拠施設で製造されたGMP製剤でないとヒトを対象とする治験に適用できない。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)