■今後の見通し



1. 2022年7月期の業績見通し

はてな<3930>の2022年7月期の業績は、売上高で前期比17.0%増の3,069百万円、営業利益で同14.2%増の284百万円、経常利益で同12.1%増の284百万円、当期純利益で同13.5%増の196百万円と、3期ぶりの2ケタ増収増益となる見通しだ。売上高については、コンテンツプラットフォームサービスやコンテンツマーケティングサービスが1ケタ台の伸びにとどまるが、テクノロジーソリューションサービスが同27.5%増と伸長することがけん引役となる。なお、2022年7月期より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用するため、2022年7月期の業績予想は当該会計基準等を適用した後の金額となっている。また、従来検収基準を採用していた受託開発サービスは当該会計基準を導入することになるが、全体の収益に与える影響は軽微(旧会計基準で試算した会社計画値は、売上高で3,052百万円、経常利益で282百万円)であることから、2022年7月期の対前期増減率は2021年7月期実績と比較している。



事業費用は前期比17.3%増を見込んでいるため、営業利益率は同0.2ポイント低下するものの、例年、費用については人件費を中心に保守的に策定する傾向にあるため、売上高が計画並みの水準を達成すれば利益は上振れする可能性が高いと弊社では見ている。



(1) 部門別売上見通し

a) コンテンツプラットフォームサービス

コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比1.0%増の529百万円を見込んでいる。コロナ禍の影響が続くことを前提としており、アドネットワーク広告単価の急回復は見込んでいない。また、「はてなブログ」の投稿者数は着実に増加すると見ているものの、2021年7月期第4四半期も売上高の低迷が続いていることから、アフィリエイト広告売上、課金収入ともに慎重な計画となっている。



b) コンテンツマーケティングサービス

コンテンツマーケティングサービスの売上高は、前期比7.0%増の709百万円と3期ぶりに増収に転じる見通しだ。「はてなブログMedia」の運用件数は、前期末比9件増の120件を目標とし、メディア当たりの月平均売上単価は期中平均で2021年7月期下期並みの水準が続くことを前提としている。メディア当たりの月平均売上単価については、低価格帯の「採用オウンドメディアプラン」の動向によっても影響を受けるため見通しづらいものの、単価アップ施策として、新サービスの提供にも取り組んでいく方針を掲げている。具体的には、オウンドメディアへのアクセス数を増やす施策として、公式SNSの運用などマーケティング支援サービスを強化していく予定だ。



c) テクノロジーソリューションサービス

テクノロジーソリューションサービスの売上高は、前期比27.5%増の1,829百万円と成長が加速する見通しだ。引き続き「Mackerel」や「GigaViewer」が売上をけん引するほか、そのほかの受託開発サービスの増加も見込んでいる。なお、受託開発サービスの売上計画については、例年通り期初時点の受注残で7割程度を織り込んだ数字となっている。



SaaS型サーバー監視サービス「Mackerel」の契約件数は前期末比19.6%増を計画している。AWSやGoogle Cloudユーザーの利用増加並びにOEM提供先での契約件数増加を見込んでいる。加えて、オンライン展示会への出展やデジタルマーケティングの強化により、見込み顧客の獲得を図っていく方針だ。また、サービス面での機能強化策として、2021年9月より「カスタムメトリック※1」の保存機能を強化し、ホストサーバー退役後も設定したデータを閲覧できるようにした(追加料金は不要)。ホストサーバーの入れ替えが激しい「コンテナ型仮想化技術※2」を採用する企業※3にとっては、サーバー退役後も「カスタムメトリック」で利用ユーザー等の長期的な傾向を把握・分析することが可能となる。



※1 Mackerelで監視できるメトリックとして、CPU使用率やメモリ使用量等の「ホストメトリック」と「サービスメトリック」があり、「ホストメトリック」には標準機能によって投稿される「システムメトリック」と、クラウドインテグレーション(AWS、Microsoft Azure、Coogle Cloud)や各種プラグインによって投稿される「カスタムメトリック」に分かれている。

※2 従来のサーバー仮想化技術(1台の物理サーバー上に複数の仮想的なサーバーである「仮想サーバー」をつくり実行する技術)に比べて、軽量性、移植性、再現性などの利点を持ち、開発効率の改善やサービスの可用性向上に貢献する仮想化技術。「コンテナ」は、アプリケーションとその動作環境をまとめたものを指す。

※3 「コンテナ型仮想化」を採用している企業は、ECモールの運営企業やオンラインゲームなどインターネットサービスのプラットフォーマーが多く、今後の新規顧客獲得につながるサービスとして注目される。





一方、「GigaViewer」は2ケタ増収を見込んでいる。引き続き導入媒体数の増加、課金機能の追加開発、レベニューシェアモデルの導入拡大などによる売上増を計画している。マンガビューワは、主戦場となるスマートフォンアプリ版は競争が激しいものの、Web版については「GigaViewer」の利便性や広告運用も含めたソリューションが顧客から高く評価されており、デファクトスタンダードになりつつある。出版社側から見れば、スマートフォンアプリはプラットフォーマー(AppleやGoogle)に支払う手数料も高いため、Web版で広告運用も含めて収益化を図りたいというニーズが強く、こうしたニーズを取り込んでいることが背景にある。



(2) 事業費用

2022年7月期の事業費用は前期比17.3%増の2,784百万円を計画している。内訳を見ると、人件費で同16.5%増の1,581百万円、DC利用料で同8.0%増の484百万円、その他費用で同26.5%増の719百万円となる。



人件費のうち人員数については、エンジニアを中心に前期末比22名増の189人を計画している。今後の高成長を実現しいくため、サービス制作部門、特にエンジニアの採用強化を進めていく。新卒社員は例年同様の約5名を予定しており、残りを中途採用で補強していく格好だが、採用ペースは計画を下回っているもようであることから、前期と同様に人件費は計画を下振れ、利益の上振れ要因となる可能性がある。



DC利用料については、引き続き料金プランの最適化に向けた見直しを進める方針であるが、運営メディアの利用数増加に伴い、2022年7月期は前期比増加に転じるものと計画している。なお、対売上比率では前期の17.0%から15.7%に低下する見込みである。



一方、その他費用の増加要因としては、2021年7月期から実施しているリモート勤務体制下の生産性向上に向けたシステム投資(コミュニケーションツールや情報共有化ツール等)、「Mackerel」「はてなブログMedia」「はてなブログBusiness」等の新規顧客獲得に向けた広報・広告宣伝費、サービス制作に関する外注・業務委託費を見込んでいる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)