■今後の成長戦略



1. 今後の運用成長戦略

ザイマックス・リート投資法人<3488>では、2022年2月期(第8期)、2022年8月期(第9期)の環境認識と運用成長戦略について、次のように考えている。



すなわち、2021年8月期(第7期)はコロナ禍の影響を受けてDPU(1口当たり分配金)が減少したが、今後はオフィス物件の収益回復や外部成長(新たな不動産取得による成長)による巡航DPUの向上を通じて、投資主価値の向上を目指している。今までと同様に将来を見据えたオフィス賃料・稼働率のバランスを維持したうえで、今後はリーシング促進によりDPUの回復を目指すだけでなく、外部成長によるDPU向上も検討している。さらに、2021年9月以降は、ホテルの固定賃料復活に伴ってDPUが回復する見通しである。



外部成長戦略としては、スポンサー・サポート契約に基づき、ザイマックスグループの顧客基盤から得られる不動産売却ニーズを捕捉し、同投資法人の物件取得機会につなげることを目指す。同グループは、不動産戦略立案のコンサルティングから、それに基づく実践サービスまでワンストップで対応可能な不動産戦略マネジメントサービスを提供している。同投資法人は、グループの顧客が持つ不動産売買ニーズを捕捉し、投資法人の不動産売買ニーズとマッチングすることで、双方のメリットにつなげることを目指している。引き続き一定の利回り目線を堅持しつつ、物件ポテンシャルを的確に見極めながら、パイプラインを積み上げる方針だ。



内部成長戦略としては、ザイマックスグループから各種不動産マネジメントに関する知見・ノウハウの提供を受けることにより、グループの不動産マネジメントの知見・ノウハウ、データベース、管理システム及び私募ファンドの運用経験等を生かした安定的かつ効率的な運用を行う。



財務戦略としては、中長期的に安定した収益の確保と運用資産の規模の着実な成長及び運用の安定性を考慮し、安定性及び健全性を重視し、かつ、資金調達の機動性を確保する財務戦略を実行する。低位なLTV水準を背景にした借入余力の戦略的な活用を継続するとともに、スポンサーグループと連携して、レンダーリレーションの深耕を継続する方針だ。



2. オフィスの成長戦略

同投資法人にとって、オフィスはポートフォリオのなかで最大を占め、今後も注力する事業である。



オフィスの市場環境について、ザイマックス不動産総合研究所の分析によれば、コロナ禍に伴いリモートワークが増えてきたが、コミュニケーションが難しい、業務・評価などのマネジメントが難しいなどのデメリットが見えてきたなかで、人や機能が集まる場としてのオフィスの機能が再認識されているという。さらに、コロナ禍収束後(ポストコロナ)の出社率として、50%程度とする企業の割合が最も多いものの、中小規模企業では大規模企業と比較して、100%出社を考える割合も多くなっている。



また、東京23区におけるオフィス賃貸の成約件数分布を分析すると、過去から現在の賃貸マーケットにおいて、おおむね1坪当り賃料単価が1万円〜2万円台までに旺盛なテナントニーズが存在し、また、最寄駅から徒歩5分圏内の物件は、5分超の物件に比べて空室率が低い。一方、中小規模のオフィスビルは新規供給が限定的であり、その希少性は今後も高まると考えられる。オフィス規模別の新規成約賃料の推移を見ると、中小規模ビルは大規模ビルに比して賃料のボラティリティが低く、収益の安定性が高いことが示されている。



同投資法人では、現在はコロナ禍を契機に、オフィスの多様化が加速していると見ている。すなわち、企業規模や業種によって将来的な社員の出社計画に差があるという。また、ワークプレイスの多様化を進めている企業では、各ワークプレイスに求める要素が多様化しているという。すなわち、メインオフィスは、社員が「集まる場」としての拠点であり、社員の集合に利便性の高い立地(都心部)、安全な建物性能(耐震性能、セキュリティ性能)、ビルの清掃衛生や維持管理の状態が良いことなどが求められる。一方、メインオフィス以外は、タッチダウンとしての拠点(他のオフィスから来る利用者が作業できる環境を整えた場所)や自宅近くで働くための拠点であり、往訪先や従業員の居住地に近い立地、高いセキュリティ性能、インターネット環境(安全なWi-Fi環境)などが必要と考えられる。



このように、コロナ禍を契機にワークプレイスの多様化が加速しているが、「立地の良さ」と「管理の質の高さ」を強みとする同投資法人の保有オフィスは、ポストコロナにおいて優位性を持つと考えられる。すなわち、同投資法人は、「不動産の使われ方」や企業のオフィス戦略の動向を把握する不動産マネジメント事業やジザイワーク事業を有し、また、ザイマックス不動産総合研究所での調査・研究によって培ったグループの知見・ノウハウの活用によって競争優位に立てる。実際、同投資法人が保有するオフィスの平均稼働率推移を見ると、リーマンショック後に他のJ-REIT保有オフィスは稼働率が低下したのに対し、同投資法人の保有オフィスは一貫して高い稼働率を維持していたことが注目される。2021年8月期は、退去があったことで一時的に稼働率が低下したが、同投資法人では、2022年2月期には空室区画の順調な埋戻しと新たな退去予定もないことから、稼働率は100%に回復すると予想する。



同投資法人が2021年8月期末に保有するオフィスは8物件であり、取得価格ベースではポートフォリオ全体の52.7%を占める。附置住宅(一定規模以上のオフィスビル等の建設・開発を行う事業者に対し、開発に合わせて義務付けられた一定戸数以上の集合住宅など)を除くオフィステナント67件の分散状況を見ると、テナントは業種の偏りが少なく、また、賃貸面積上位10社の入居期間は14年1ヶ月に達し、同投資法人の保有オフィスの全テナント平均の11年5ヶ月や、ザイマックス不動産総合研究所が「東京23区オフィステナントの入居期間分析(2018年)」にて公表した東京23区オフィスビルの平均入居期間9.6年を上回り、高い粘着性を持ち、同投資法人の管理の質に対する満足度が高いことが示されている。



また、感染症対策として、同投資法人ではスポンサーグループの管理運営ノウハウを集約し、「安心・安全」なオフィスに向けた取り組みを進めている。すなわち、ウイルス不活性化コーティングを全オフィスに実施し、共用部にアルコール消毒足踏式スタンドを設置するなどの対策を実施している。加えて、スポンサーグループにおいても各ビルオーナーに対して、アルコールスタンド、抗ウイルス壁紙、抗菌フィルターなど、「Withコロナオフィス」に向けた提案を実施している。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)