■今後の見通し



2. 成長分野への投資

エヌ・シー・エヌ<7057>は2022年3月期のテーマとして成長分野への投資を掲げている。成長分野である(1)非住宅分野への投資=木構造デザイン、(2)環境分野(住宅の省エネルギー設計)への投資、(3)木造DXへ向けた投資を積極的に行う予定である。これらの成長分野(SE住宅ローンサービス、MAKE HOUSE、木構造デザイン)への投資を積極化させることにより、各段階利益では小幅な増益となる。もっとも、SE構法販売が順調な成長を続けるなか、脱炭素社会へ向けた取組を加速させることによって、将来的には一段の利益成長が見込まれることになると弊社では考えている。



(1) 脱炭素社会への取組み

2010年の「公共建築物等木材利用促進法」制定以降、農林水産省、国土交通省では、同法に基づき、公共建築物における木材の利用に取り組んできた。公共建築物の床面積ベースの木造率は、法制定時の8.3%から2019年には13.8%に上昇した。木造非住宅建築市場は拡大傾向にあるなか、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律が成立し、2022年10月には「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行された。これにより、法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大。非住宅分野や中高層建築物の木造率は今後さらに高まる可能性があるだろう。なお、持続可能な森林資源と経済の循環を実現する新たな木造建築市場等の創出に向けた政府の市場領域ロードマップによると、2030年時点で、木材活用大型建築(※低層住宅を除く)の市場規模は1兆円を見込んでいる。



同社は鉄骨造と同様の精密に構造計算された「SE構法」により、木造建築において資産価値の高い家を提供しているが、樹木は光合成を行うことによって温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を大気中から吸収し、木質繊維の形で炭素を蓄積している。



木造住宅が増えることによって、その分だけCO2貯蔵量が増加するため、大気中からCO2を取り除いたことになり、RC造から木造に構造を変更することで相当量のCO2削減効果となる。耐震長寿命化に繋がる耐震シミュレーションや生活スタイルに合わせたスケルトン&インフィルのほか、省エネ計算、高断熱パッシブといった省エネ住宅化など、同社の事業すべてにおいてCO2削減に不可欠な事業である。



大規模木造建築(非住宅)分野ではコロナ禍で動けなかったプレカット工場ネットワークの拡大について、業界大手とのネットワーク構築が足元で順調に進展している。木構造デザインによる構造設計サポートと加工サポートに加えて、プレカット工場ネットワークといったインフラ構築によって、SE構法だけではなく、在来軸組工法、2×4工法、集成材構造、CLT工法への対応を広げることで、大規模木造建築市場でのシェア拡大が見込まれる。また、BIM事業については、世界の普及状況及び木造分野の普及状況から鑑みて、同社の急成長のカギとなると弊社では考えている。日本の建築物の図面はこれまで手書きや平面図など、2次元で受け渡しが行われているが、世界中で2次元の図面だけで建築を行っている国はほとんどない状況である。国内ゼネコンにおけるBIMの導入率は約8割まで上昇しているようであるが、実際の建物に使われ始めたのは2019年から2020年にかけてからである。木造分野においては導入率が低く比率すらデータ化されていない状況である。世界標準の流れから相当遅れを取っている日本では、Society 5.0の社会実装を進めるため、建設分野の制度改革として、BIMの活用及び進展が進むだろう。



これらの取り組みによって、木造非住宅建築市場の材料マーケットにおけるシェア拡大が期待されよう。同社の現在の売上規模から見ると約10%程度のシェアと見られるが、脱炭素社会に向けた積極的な成長投資とCO2削減に不可欠な事業グループの強みにより、今後シェアを拡大してくる可能性は大きいだろう。現在の推計10%程のシェアが15%に上昇したとしても100億円超の売り上げ規模となるため、同社が計画する2023年3月期の売上高100億円への達成確度は高いと弊社では考えている。



(2) 林業の構造改革を担う立ち位置

日本は先進国の中でも有数の森林国であり、国土の森林率は約67%となる。森林国の日本において木造建築は、地球スケールの課題だけでなく、地域森林の環境保全といった地域スケールの課題解決にも貢献できる。また、林業は地域にとって重要な産業であり、森林資源の活用を促進することで、地域の経済の発展にも寄与することになる。



ただし、ウッドショック問題は国産木材の一般流通市況にも影響を与えており、価格は1年でほぼ倍増となった。一方で、林業の人材不足やコスト高騰といった声は聞かれていない。結局は専門業者や商社による便乗値上げ的な動きもあるのではないかと思えてならない。それ故に林業全体の構造改革が必要なほか、インフラ整備も重要となることから、この改革を進める上でも同社のネットワーク化の拡大が将来的に林業の改革をもたらす可能性があると弊社では考えている。



(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)