■「中期経営計画Vision2025」



2. 基本戦略

中期経営計画の達成を実現するため、ミロク情報サービス<9928>は以下の6つの基本戦略を推進していく。



(1) 会計事務所ネットワークNo.1戦略

会計事務所ネットワークNo.1戦略を実現するため、ERPシステム「ACELINK NX-Pro」の機能強化を図り、新たな業務効率化ソリューションをミロク会計人会連合会(ユーザー組織)との共同プロジェクトによって企画・開発を推進していく。会計事務所向けERPシステムの市場シェアは約25%と安定しており、約8,400所のユーザーがいるが、ERP以外のサービス(MJS M&AパートナーズのM&A支援サービス等)で取引のある会計事務所もある。こうした会計事務所に対してERPシステムの導入提案を行っていくほか、新たに独立開業する会計事務所の新規獲得にも注力していく。



また会計事務所に対して顧問先企業への経営指導を行うためのツールを提供していくことで、顧客ロイヤルティの最大化に取り組んでいく。たとえば、資金繰りや融資分野等の仕組みとして、税理士が顧問先企業の各種データを確認してファイナンスが必要と判断した場合は、そのアドバイスを行うと同時に金融機関の紹介を行うことができる。会計事務所にとっても顧問先企業に対する新たな付加価値サービスとなり、顧客満足度の向上にもつながることから導入メリットは大きいと考えられる。なお、こうしたツールについては現在、本格稼働に向けて試験運用中の統合型DXプラットフォームを通じて2023年3月期にリリースする予定となっている。



(2) 中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略

中堅・中小企業のDXに向けた経営課題に応えるサービス領域の拡大と、コンサルティングによる価値創造の最大化に取り組むことで、総合的なソリューション・ビジネスを展開していく。



顧客企業が抱えるDX関連の課題は事業の成長段階や環境変化に応じて多種多様にあり、これらの課題に最適なソリューションをグループ会社のリソースも含めて選択・提供していくことで、顧客ニーズを取り込んでいく。たとえば、会計・税務分野であれば同社の専門領域であり、デジタルマーケティング分野であればトライベック、人事分野であればトランストラクチャ、採用分野であればアド・トップがコンサルティングサービスを提供していくことになる。このように経営に関する多様なコンサルティングニーズに対して、ワンストップでソリューションを提供できる会社は少なく、同社グループの強みと言える。



また、主力のERP製品については、AI機能拡充や、外部製品とのAPI連携を強化し、顧客企業の利便性を向上していくことで競争優位性を構築していくほか、クラウド化(IaaS化)とSaaS型新製品の企画開発を進め、クラウドサービスへの移行を加速していく方針だ。現在、販売形態はオンプレミス型とクラウド型(IaaS型)での提供となっているが、2026年3月期にはクラウド型(IaaS型)もしくはSaaS型でのサービス提供が主体となり、オンプレミス型でのサービス提供は大幅に縮小するものと予想される。



そのほか、営業施策としては中堅・中小企業向けソリューション・ビジネスの強化を図るため、現在11支社体制であるソリューション支社をさらに増やしていく計画となっている。そのほか、パートナーの育成により、販売代理店経由での販売も伸ばしていく計画となっている。



(3) 統合型DXプラットフォーム戦略

同社は統合型DXプラットフォームの構築によって、中小企業・小規模事業者のDXを推進し、生産性向上と売上拡大による企業の成長を支援していくことで、低成長が続く日本経済の活性化を目指している。中小企業や小規模事業者にはデジタル人材が不足しており、DXが思うように進んでいないといった課題を抱えている。同社の統合型DXプラットフォームは、ITの専門知識がなくても導入が容易なUI設計となっており、必要な機能のカスタマイズが可能なほか、統一ダッシュボードで一元操作を実現可能とするなど、使い勝手の良さをコンセプトとして打ち出すことで利用企業の拡大を目指している。



統合型DXプラットフォームでは、4つのDXプラットフォームを提供する。具体的には、顧客開拓等のマーケティングDX、フロントオフィス系のビジネスDX、バックオフィス系のオペレーティングDX、資金管理・調達などのファイナンスDXとなり、それぞれのプラットフォーム上に複数のサービスが提供されるイメージだ。2021年7月より、ミロク会計人会連合会のなかでプロジェクトチームを作り、一部企業も含めて試験運用を行っている段階で、2023年3月期中の本格稼働を予定している。



トライベックが提供するCMS/Webサイト構築・UI改善サービスのほか、キャッシュ・フロー関連サービス、経営者同士がつながりを持つことができるコミュニケーションツールなどを基本サービスとして提供することで顧客基盤を固め、オプションサービスとしてクラウド型ERPやマーケティングオートメーションツールなどのグループ製品だけでなく、SFAやBIツールなど他社製品もプラットフォーム上に乗せ、サービスを提供していくことにしている。



2026年3月期の目標として、ユーザー数3.5万社、ARPU(ユーザー当たり平均売上高)1.2万円/月、売上高50億円を掲げている。中小企業・小規模事業者向けSaaS・ソフトウェア市場のポテンシャルについて、同社は1.42兆円程度と推計しており、潜在的な需要は大きい。中期経営計画の達成に向けて統合型DXプラットフォームは重要な戦略となるだけに、今後の動向が注目される。



(4) クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換

現在、オンプレミスでの販売が9割強を占めているERP製品のクラウド化・サブスク化を段階的に進めていく。サブスク化することによって、一時的に売上高、利益はマイナス影響を受けるものの、外部要因に左右されず安定的な売上が見込めるようになるほか、リプレイス(買い替え)の際の営業工数が削減でき、新規顧客開拓に営業リソースを集中できることになる。また、クラウド化によって常に最新システムをユーザーが利用できる環境となるため、旧バージョン製品のメンテナンスコストを最小化できるといった効果も期待できる。すなわち、クラウド・サブスク化によって継続的な売上成長と収益性向上が見込めることになる。



顧客側から見てもオンプレミスと比較して初期費用が抑えられるほか、サーバーの運用負荷を軽減できること、常時最新機能の利用が可能となることなどから、サブスクモデルへの移行メリットは大きい。前述したとおり、同社単体ベースのサブスク収入を含むストック型収入の比率は2021年3月期実績の39%から2026年3月期に55%に上昇する計画となっている。このストック型収入のなかにはオンプレミス販売の際の保守・サポートサービスの売上も含まれており、現在はこちらの売上比率が高い。今後はサブスクモデルへの移行により、保守・サポートサービスの比率は徐々に低下していくことになる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)