■業績動向



1. 2021年12月期の業績概要

井関農機<6310>の2021年12月期の業績は、売上高で前期比6.0%増の158,192百万円、営業利益で同99.0%増の4,147百万円、経常利益で同175.3%増の4,687百万円に急伸し、親会社株主に帰属する当期純利益も3,196百万円と黒字に転換し、増収増益を達成した。



国内売上高については、消費税増税前に発生した駆け込み需要の反動減の影響が弱まったこと、農林水産省がコロナ禍営農継続を支援する目的で支給した経営継続補助金が農家の需要を喚起したこと、コロナ禍による営業活動ではオンラインの活用などの工夫もあり、トラクタなどの整地用機械の売上が前期比4.6%増の23,937百万円、田植機などの栽培用機械が同2.3%増の9,076百万円と好調に推移した。また、作業機・補修用部品・修理収入の売上も堅調に推移し、同3.2%増の43,358百万円と売上の拡大に貢献した。



海外売上高については、前期比22.2%増の40,795百万円と過去最高の売上高を達成した。北米・欧州において、コロナ禍に端を発するライフスタイルの変化により、コンパクトトラクタやハンドヘルド商品などのプライベートユーザー向け商品の需要増加を捉えたことが要因だ。



また、アジアにおける事業も順調に拡大した。中国政府による食糧確保政策の継続やタイ政府が行った補助金政策による需要喚起などを背景に前期比増収を達成した。



上記のように国内外の売上が好調に推移するなか、前期に計上した部品在庫評価損の剥落などによる原価率の改善もあり、営業利益も前期比で2倍弱に急伸した。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益に関しても、営業外収支で539百万円を計上したこと、前期に計上した9,301百万円の固定資産に関する減損損失が115百万円に減少したことなどによって大幅な増益、親会社株主に帰属する当期純利益の黒字転換を達成している。



外部環境での追い風があったものの、2021年12月期から新中期経営計画が始動しており、トラクタや田植機の販売が好調に推移したのは、「選択と集中」により大型・ICT搭載農機である「Japanシリーズ」に販売にリソースを重点配分し、効率的に売上をあげることができたことも影響していると弊社では考えている。



作業機・補修用部品・修理収入の売上が好調に推移したことも見逃せないと言えるだろう。新中期経営計画において「メンテナンス収入のさらなる拡大」を掲げている同社にとって、同カテゴリーが好調だったことは施策の成果が出ている証左であると弊社は考える。



2. 財務状況と経営指標

2021年12月期は親会社株主に帰属する当期純利益が3,196百万円と黒字転換したことにより、利益剰余金がその分増加し、17,690百万円となった。また、期末時点の現金及び預金は前期比4,062百万円増加し、14,850百万円となった。利益剰余金を見てみると、親会社株主に帰属する当期純損失を計上した2020年12月期を除いて増加傾向にあり、しっかりと継続して利益を出してきたことが分かる。



また、自己資本比率が一貫して33〜35%の間と相対的に低い気もするものの、手元流動性を示す流動比率が112.0%であること、長期安全性の指標である固定比率も149.1%であることから財務状況に問題はないと弊社は考えている。



2021年12月期のROA、ROE、売上高営業利益率に関してはそれぞれ、2.5%(2018年12月期は1.3%)、5.1%(同1.6%)、2.6%(同2.0%)となっている。これらの収益性を表す指標について弊社は、改善の余地があると考える。新中期経営計画では、固定費率の改善を目標の1つとして掲げており、ROAと売上高営業利益率の向上に期待したい(新中期経営計画では2025年度の営業利益率を5%と設定)。また、ROEに関しても棚卸資産の削減や固定費率改善を行う中で上昇していくことが期待される。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)