■今後の見通し



(2) プライムウェーハ事業

プライムウェーハ事業では、山東GRITEKの徳州工場で8インチウェーハの月産能力が13万枚となっている。2022年12月期第2四半期までにすべての顧客に対する製品認定を完了し、生産効率を高めながらフル稼働を目指していく計画となっている。このため、2025年12月期に向けては売上拡大とともに営業利益率も上昇する計画となっている。



一方、SGRSでは12インチプライムウェーハの量産化に向けた研究開発を、月産1万枚規模のテストラインを使って進めている状況にある。既にモニタウェーハの品質基準はクリアしており、モニタウェーハ用途として販売を行っている。今後、プライムウェーハの品質基準をクリアし、早ければ2022年12月期後半にも月産5万枚の量産ライン導入を進め、2023年12月期中の量産開始と顧客からの製品認定を得ることを目標としている。生産能力5万枚の設備投資を実行する場合には約250億円の資金が必要となるが、RS Technologies<3445>はそのうち約2割を負担する格好となる。



販売戦略としては、中国市場のボリュームゾーンである回路線幅28〜40nm品のプライムウェーハの品質基準を確保して、中国半導体メーカー向けの販売から開始する予定となっており、既に40nm品については品質基準をクリアしているものと見られる。生産能力の拡大施策としては、新規投資だけでなくM&A等により低コストで製造設備を取得することも選択肢として検討しており、低価格戦略を打ち出すことで中国市場におけるトップシェアを目指していく。また、その次のステップとしてグローバル市場でのボリュームゾーンである14〜20nm品のプライムウェーハの品質基準を確保し、中国生産による価格競争力を生かして、大手半導体メーカー向けに販売していく計画だ。同社はウェーハ再生事業で大半の大手半導体企業と取引があるため、品質基準の確保と安定供給体制を構築することができれば、価格面での優位性から採用がスムーズに進むものと考えられる。同社は将来的に12インチプライムウェーハで30%の市場シェア獲得を目標に掲げている。



中国市場における12インチプライムウェーハについては、海外大手企業が販売している状況にあり、中国ローカル企業については多額の設備投資を実施したものの、品質基準をクリアできず量産化に至っていないもようだ。インゴットを均質な純度・品質(酸素濃度や抵抗値等)で引き上げ、高い歩留まりを達成するのに苦戦しているようだ。同社は大手シリコンウェーハメーカー出身のエンジニアを招聘して現地スタッフにノウハウを伝授しており、品質の改善も着実に進んでいる。製造の後工程となる研磨・洗浄工程については再生ウェーハの技術を活用できるため問題ないことから、2023年12月期中に量産を開始できる可能性は十分あると見られる。また、目標とする月産30万枚の能力を構築するためには1千億円規模の多額な投資が必要となるため、中国競合他社のM&A等も視野に入れており、能力増強のための投資資金は合弁先のGRINMや徳州市政府系ファンドと共同で負担していくものと思われる。



なお、子会社のGRITEKが中国版ナスダックと呼ばれる新興企業向け株式市場(科創板市場)への上場申請を行っており、審査が順調に進めば2022年8月頃にも上場することになりそうだ(株式上場費用として数億円を第2四半期または第3四半期に計上見込み)。株式の上場目的は、資金調達の多様化とブランド力の向上、優秀な人材の採用により事業基盤を強化してさらなる成長を目指すことと同時に、同社グループの企業価値向上を図ることも目的となっている。このため株式上場後も同社が実質的に過半の支配権を有し、連結対象子会社として維持していく方針だ。GRITEKの上場準備の一環として、2021年5月にGRITEKによる第三者割当増資(同社及び機関投資家向け)及び、同社が保有するSGRS株式のGRITEKへの譲渡(株式交換)を実施した。SGRS株式の持分比率については、GRITEKに株式が譲渡されたことによって、従前の19.99%から約9%に低下している。SGRSの業績については12インチプライムウェーハの立ち上げ費用が掛かる一方で、12インチ再生ウェーハは比較的早期に収益化が実現できるものと見られる。当面は持分法投資損益として連結業績に反映されることになるが、持分比率が小さいことから業績に与える影響も軽微と考えられる。



(3) 第3の収益柱として半導体製造装置用消耗部材を育成

同社は、ウェーハ再生事業、プライムウェーハ事業に続く第3の収益柱を育成すべく、子会社のDG Technologiesで展開している半導体製造装置用消耗部材に注力していく方針を明らかにしている。具体的には、ドライエッチング装置でシリコンウェーハを固定するための石英リングやシリコン電極などの消耗部材の売上拡大を目指している。



同消耗部材の年間市場規模は約1,500億円と同社では推計しており、当面の売上目標としてシェア10%(約150億円)を目指している。売上高は新工場の稼働によって、2021年12月期の30億円台から2022年12月期は40億円台に拡大する見込みとなっている。2022年12月期も自動化設備の導入を進め、第4四半期にはフル稼働の状況になると見られる。営業利益率は2021年12月期の1ケタ台前半から1ケタ台後半となり、量産効果が顕在化する2023年12月期以降は一段の上昇が見込まれている。同社では、将来的にウェーハ再生事業と同水準となる30%台まで引き上げていくことを目標にしている。



競合は国内、台湾、韓国、米国などに複数社あるが、同社は品質や技術力で強みを持つ。多品種少量生産となるため、従来は生産効率が低い点が課題であったが、自動化設備の導入や人員配置の最適化等によって生産効率の向上を図っていく。また、材料費についても2020年12月期からグループ会社のGRITEKよりシリコン原材料を仕入れることでコスト低減を図っており、こうした取り組みにより競争力を強化していく。また、営業面ではウェーハ再生事業の顧客に対してクロスセルを実施していくことで販売シェアを拡大していく戦略となっている。長期的な目標として世界シェアで約3割、売上高450億円を目指している。石英ガラスの競合であるテクノクオーツ<5217>は、2021年3月期の売上高で127億円、営業利益率は19%の水準となっており、DG Technologiesも売上規模が拡大すれば営業利益率で20%前後の水準は可能と弊社では見ている。



(4) 今後の事業領域及び販売地域の展開

長期的な成長戦略としては、事業領域と販売地域の拡大を進めていく方針となっている。現在、新規展開を予定しているものとして、中国で生産しているプライムウェーハの中国以外の地域への販売が挙げられる。当面は中国向けの需要だけで手一杯となるため長期的な戦略となるが、日米欧市場への輸出も視野に入れている。また、商社機能として半導体・電子部品、消耗材などの販売を日本、アジア、中国で展開しているが、今後は欧米市場での販売展開も進めていく予定にしている。そのほか、M&Aについても半導体ウェーハ周辺領域においてシナジーが見込める案件であれば、国内外問わず前向きに検討していく方針だ。



同社は12インチ再生ウェーハで世界シェア約33%(同社推計)とトップの地位を確立し、世界の大手半導体メーカーを顧客として既に持っていることから、クロスセルによるシナジーを創出しやすい立ち位置にある。半導体産業は好不況の波が大きいものの、同社の基盤事業となるウェーハ再生事業は不況の影響を受けにくく比較的安定した業績推移が見込まれる。中長期的な視点で見れば、高シェアを持つウェーハ再生事業を安定収益基盤とし、プライムウェーハ事業では中国半導体産業の成長を追い風に事業を拡大、半導体製造装置用消耗部材を第3の柱に育成することで、半導体市場の成長スピードを上回る収益拡大を目指す同社の戦略の実現性は十分あると弊社では考えている。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)