■要約



シンバイオ製薬<4582>は、患者数は少ないが医療ニーズの高い「がん、血液、希少疾病」領域をターゲットに、臨床試験段階からの開発を進めるバイオベンチャーである。主要開発パイプラインには、悪性リンパ腫向け治療薬として適応拡大が進んでいる「トレアキシン(R)」のほか、米国Onconova Therapeutics(以下、オンコノバ)から導入した「リゴセルチブ」、同Chimerix(以下、キメリックス)から導入した抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル」(BCV)がある。



1. 2021年12月期の業績動向

2021年12月期の売上高は前期比176.4%増の8,256百万円、営業利益は1,016百万円(前期は4,506百万円の損失)となった。2020年12月より「トレアキシン(R)」に関して自社販売体制にシフトしたことや、2021年3月に再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下、再発・難治性DLBCL)を対象としたリツキシマブとの併用療法(以下、BR療法)、及びリツキシマブ、ポラツズマブ べドチンとの併用療法(以下、P-BR療法)の製造販売承認を取得し、適応領域が拡大したことが増収要因となった。また、自社販売体制にシフトしたことに加えて、FD製剤(凍結乾燥注射剤)からRTD製剤(液剤タイプ)への切り替えを進めたことで、売上総利益率も前期の29.0%から70.2%と大きく上昇し、黒字化を達成する要因となった。



2. 開発パイプラインの動向

「トレアキシン(R)」については2022年2月に「RI(急速静注)投与」(静注投与時間が従来の60分から10分に短縮)の販売承認を取得した。「RI投与」によって医療従事者及び患者の負担が大幅に軽減されることになり、さらなる売上拡大につながるものと期待される。また、「リゴセルチブ」や既存薬との併用療法による新たな適用拡大の可能性を探るためアカデミアとの共同研究も開始するなど、製品価値の最大化に取り組んでいる。一方で、2022年2月に製薬企業4社がRTD製剤の後発医薬品について製造販売承認を取得したことを発表した。同社はライセンス元である米国Eagle Pharmaceuticals(以下、Eagle社)と協議し、特許権の侵害が明らかになった場合には、法的手段を講じていく意向であることを表明している。弊社では同社が「RI投与」に販売をシフトしていくことから、仮に後発医薬品の販売が開始されたとしても影響は限定的なものにとどまると見ている。



BCV(注射剤)は、造血幹細胞移植後に発症するアデノウイルス感染症を対象とした国際共同第2相臨床試験を2021年12月期第3四半期より開始しており、順調に進めば2023年にも第3相臨床試験に進む可能性がある。また、2022年12月期の後半には、腎臓移植後のBKウイルス(BKV)感染症を対象とした国際共同臨床試験も開始する予定となっている。さらにアカデミアの研究論文から、サイトメガロウイルス(CMV)感染による神経膠芽腫や多発性硬化症の治療効果も期待できることが明らかとなり、今後これら領域での開発も進めていく方針を明らかにしている。これら疾患は難治性疾患で有効な治療薬がまだないことから、開発に成功すればBCVの市場価値は1,000億円を超える可能性も出てくるだけに、今後の開発動向が注目される。



3. 2022年12月期業績見通し

2022年12月期は売上高で前期比33.1%増の10,992百万円、営業利益で同74.2%増の1,770百万円となる見通し。売上高は再発・難治性DLBCL向け「トレアキシン(R)」の売上高が通年で寄与することが増収要因となる。また、期初からすべてRTD製剤/RI投与の販売に切り替わっており、売上総利益率も80.0%とさらに上昇する見込みとなっている。販管費は同46.9%増の7,026百万円を見込む。販管費のうち研究開発費は、BCVの治験費用を中心に同76.0%増の3,056百万円を計画している。第1四半期は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で売上高は若干計画を下回りそうだが、利益面では計画通りに進捗したものと見られる。なお、グローバル治験の統括拠点となる米国子会社で人員体制を増強していることから、2022年12月期より連結決算に移行する予定となっている。



■Key Points

・「トレアキシン(R)」は再発・難治性DLBCLへの適応拡大とRI投与の承認取得で売上拡大が続く見通し

・BCVは抗ウイルス活性と抗ガン活性を併せ持つユニークな薬剤として治療対象領域が拡大

・2022年12月期業績は、再発・難治性DLBCL向けの売上拡大と売上総利益率の上昇により増収増益が続く見通し



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)