■要約



アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャー。遺伝子医薬を中核とした開発を進めており、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況などによって得られるマイルストーン収入、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するビジネスモデルとなる。2020年12月に米国で先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化した。



1. 米アイガーと希少遺伝性疾患治療薬「ゾキンヴィ」に関する国内独占販売契約を締結

2022年5月10日付で、同社は米バイオ医薬品企業のEiger Bio Pharmaceuticals Inc.(以下、アイガー)と、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(以下、HGPS)とプロジェロイド・ラミノパチー(以下、PL)※1の適応症の治療薬である「ゾキンヴィ(一般名:ロナファルニブ)」※2について、日本における独占販売契約を締結した。今後、同社が日本の薬事承認取得を担当し、承認取得後に製品を販売していくことになる。HGPS及びPLは患者数が世界でも合わせて600人程度と極めて少なく致死性の高い遺伝的早老症で、「ゾキンヴィ」は死亡率の減少と生存期間延長効果のある治療薬として米国で販売承認されている。同社は米国での臨床試験データを援用することで販売承認申請を行う予定となっている。薬価や投与患者数次第ではあるものの、国内での売上高は年間で数億円程度になるものと予想される。また、同社は薬事承認取得と並行して、2021年から新生児のオプショナルスクリーニング(希少遺伝性疾患検査事業)を開始したアンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下、ACRL)において、これら疾患の検査を実施する準備も進めていくことにしている。



※1 HGPSやPLは遺伝子の突然変異により発症し、平均14.5歳までに心臓病(動脈硬化症)で死亡するのが一般的とされ、病気の症状としては、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、骨格形成不全、心血管系の衰えを伴う全身性動脈硬化の促進、衰弱性の脳卒中が含まれる。日本でも難病指定されており、HGPSは約10人の患者が確認されている。

※2 HGPSの死亡リスク低減、プロセシング不全性早老性PLの治療薬として、2020年11月に米国で承認された。臨床試験の結果ではHGPS患者において死亡率を60%減少させ、平均生存期間を2.5年延長させることができたとしている。開発元はメルクでアイガーはメルクから全世界での独占的権利をライセンスされた。





2. 主要開発パイプラインの動向

主要開発パイプラインについては、前回レポート(2022年3月23日発行)から大きな進捗はない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するDNAワクチンの開発については、高用量製剤での第1/2相臨床試験の結果が早ければ2022年夏頃に判明する見通しで、内容が良好であれば第2/3相臨床試験、第3相臨床試験に進むべくPMDAと協議を進めていくことになる。ただ、大規模な臨床試験を行う場合は多額の資金が必要となるため、国による補助金が下りることが前提となる。一方、カナダのVasomune Therapeutics(以下、Vasomune)と共同開発中の治療薬「AV-001」(中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者を対象)は、2022年1月より前期第2相臨床試験を米国で開始(南米でも行う予定)、2022年内の後期第2相臨床試験入りを目指している。



慢性動脈閉塞症を対象としたHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」の国内における市販後調査並びに適応拡大のための第3相臨床試験は2021年末に予定症例数の患者登録が完了しており、2024年の本承認取得を目指している。また、米国で実施している後期第2相臨床試験も順調に被験者登録が進んでいる。椎間板性腰痛症を適応症としたNF-κBデコイオリゴDNAについては、ライセンス契約も視野に入れながら第2相臨床試験の開発計画を策定中で、オーストラリアで実施している高血圧DNAワクチンの開発についても、第1相/前期第2相臨床試験のデータを分析して今後の開発戦略を策定していく計画となっている。また、米子会社のEmendoでは独自技術である先進的なゲノム編集ツール「OMNI(オムニ) Platform」を用いて、希少遺伝性疾患であるELANE(好中球エラスターゼ遺伝子)関連重症先天性好中球減少症(以下、SCN)を対象とした臨床試験の開始に向けた協議をFDAと進めているほか、複数企業と「OMNI Platform」のライセンス提供に向けた交渉を進めている。



3. 業績動向

2022年12月期第1四半期の売上高は前年同期比33.3%増の15百万円、営業損失は3,543百万円(前年同期は3,628百万円の損失)となった。売上高はオプショナルスクリーニング検査の手数料収入を主に計上した。営業損失は新型コロナウイルス感染症ワクチンの臨床試験費用が減少したことにより前年同期から若干縮小した。2022年12月期の業績見通しは、開発プロジェクトの状況によって研究開発費が変動することなどから現時点では未定としているが、研究開発費については約100億円と前期並みの水準を見込んでいる。ワクチン関連の開発費用は減少するもののEmendoの開発費増を見込んでいる。なお、2022年12月期第1四半期末の現金及び預金は15,411百万円となっており、当面の事業活動を進めていくうえでの資金は確保されている。



■Key Points

・新たな希少遺伝性疾患治療薬の国内独占販売契約を締結

・2022年12月期第1四半期の営業損失は前年同期並みの3,543百万円に

・2022年12月期も100億円規模の研究開発費を投下し、開発パイプラインの進展に取り組む方針

・治療法がない疾病分野や希少遺伝性疾患等を対象に開発を進め、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)