■中期経営計画



(2) 音声データ活用によるDX推進

第2の重点施策である音声データ活用によるDX推進は、膨大な応対業務で得た音声活用ノウハウを生かし、音声/CRMデータ基盤の強化を図る計画だ。具体的には、優良顧客との信頼関係をもとにDX推進、音声・CRM基盤の整備によるデータ資産化、データ分析による高付加価値の提供、コンサル機能強化により新たな領域での事業創出などを行う。



ベルシステム24ホールディングス<6183>は、消費者への対応、消費者との通信履歴など、膨大なユーザーとの対話データを保有している。こうしたデータを、自社分析チームにより、AI・シナリオチューニング、FAQ&スクリプト最適化など、現場に即したナレッジを蓄積することで、運用ノウハウの深化を図る。また、蓄積したデータに基づき店舗データ、消費傾向、Web行動などを分析することで、ユーザー接点の拡大や解決業務の多様化を図り、クライアントとの連携強化に役立てる。同社では、データを多面的に分析することで、クライアントが望む品質改良、自動化、解約防止、売上増大などについての施策を提案することが可能になる。すでに生命保険会社業務において、実績があり、今後さらに、AI、音声認識など最新テクノロジーを活用することで、同社のビジネスのさらなる発展を目指す計画である。特に、コロナ禍の完全収束が見通せない現在の環境下では、非対面化、効率化、省力化を検討するクライアント企業からの同社への依頼は増加傾向にあるようだ。



音声データ活用DXの実績としては、同社のクラウド音声基盤のBellCloud+と、アドバンスト・メディア<3773>の音声認識ソリューションAmiVoiceの連携によって、全ての音声をデータ化し活用することを目指している。同社では、音声認識対応型の席数を、2021年8月末の1,100席、2022年2月期末の3,400席から、2023年2月期末には7,000席にまでに拡大する計画だ。また、電話による問い合わせに自動応答するプロダクトのekubotを提供している。2021年6月には、ボイスポット(人工知能搭載が可能なソフトウェアを用いることで、利用者が音声により自動応答システムを操作できる仕組み。)とチャットポットを活用した、自動応答ソリューションのサービスメニュー体系を刷新し、ekubotシリーズとして、提供を開始した。同年7月には、CTCと共同で、コンタクトセンターでのボイスボットの導入から運用までをワンストップで支援する「ekubot Voice Pro」の提供を開始。約50〜100席以上の中・大規模コンタクトセンター業務を想定している。



同社では、ワクチン関連の膨大な問い合わせにおいてAIチャットボット(リアルタイムに自動で短文の会話を行うロボットプログラム)を活用している。コロナ禍関連業務等、短期大型案件にチャットボットを導入し、架電量を削減するとともに、24時間、365日の対応窓口を実現している。また、AIによるJOBマッチングも実施し、早期の合否判定通知により入社までのリードタイムを削減し、業務継続率向上によるオペレーターのスキル向上(業務の安定性向上・品質向上)を実現している。さらに、データ活用の啓蒙「データサミット2021」の開催、Slack(ビジネス用チャットツール)を中心に据えたコミュニケーション、Tableau(膨大なデータをわかりやすく視覚化するツール)の活用による業務効率化、「データ活用人材トレーニングプログラム」の実施など、データ活用人材の育成に向けた様々な取り組みも行っている。このように、音声データ活用によるDX推進戦略についても、着々と実績を積み上げていると評価できるだろう。



(3) 信頼と共創のパートナー成長

第3の重点施策である信頼と共創のパートナー成長では、アライアンス強化によって、パートナーとビジネスネットワークの醸成を図る計画である。伊藤忠商事・凸版印刷との協業を深化、新規パートナー企業との生活者データ活用の強化、新技術ベンチャー企業との提携の促進、現地優良企業との戦略提携による海外展開(ベトナム、タイ、台湾)などを図る。特に、戦略提携の推進により、新たな挑戦にともに取り組むパートナーと相乗価値を創ることを目指す。



同社では、これまでも優良顧客と対話データの活用で提携を進めてきた。また、筆頭株主である伊藤忠商事とは、伊藤忠グループ関連の案件やその取引先との新規案件の獲得による伊藤忠シナジーが年々拡大し続けている。さらに、大株主の凸版印刷とも、コールセンター業務の統合・効率化、デジタルマーケティングサービスの提供を開始し、凸版シナジーによる売上収益も大きく伸びている。



パートナー成長の実績としては、2021年4月に同社は伊藤忠商事、ブレインパッド<3655>と、企業のマーケティング領域におけるDX推進を支援する新サービス創出について協業することに合意した。ブレインパッドは、企業の経営改善を支援するビッグデータ活用サービス、デジタルマーケティングサービスを事業内容とし、年間500億件以上のデジタル接点データを分析し活用する基盤構築のノウハウを有しており、国内上場企業のデータ活用における縦割りのデータ基盤や人材不足などの課題への対応が可能である。一方、同社はオペレーション力や型化力や多様な人材を有しており、音声など非構造化データの整備や、施策の継続的な運用などの課題への対応が可能だ。また、伊藤忠商事は幅広い顧客層に向けて、企業の個別ニーズに応じた提案が可能である。このサービスも、連携3社やクライアント企業とのWin-Winの関係を示す好事例と言えよう。



2020年5月には、凸版印刷と、企業のDX推進を支援する次世代BPOサービス会社TBネクストコミュニケーションズを設立し(出資比率:凸版印刷51%、同社49%)、2022年2月期決算では、同社の好決算に大きく貢献した。さらに、2022年3月に、(株)レイヤーズコンサルティングと人事経理のコンサルティングからアウトソーシングなどを提供する新会社「Horizon One」を設立した。また、同月には、ベルフェイス(株)と、電話と映像サポートによる「オンライン窓口センター」の開発を開始した。コロナ禍の拡大を受け、企業活動において、従来の対面型から、デジタルを活用した非対面型ビジネスモデルへの転換が進んでいる状況を受け、ベルフェイスが従来より提供しているオンライン営業システム「bellFace」の機能を活用することで、生活者側は電話・パソコン・スマートフォン等を使って簡単に、オペレーターに音声で問い合わせをしながら手続き書類の共有等を行うことができる。さらに今回、ベルフェイスが新たに開発した「リモートコントロール機能」、「スマホ画面サポート機能」、「写真撮影機能」などの機能を組み合わせることにより、生活者とオペレーターが会話をしながら画面を通じて自由にやり取りができるようになり、対面に近い感覚で、手続き処理を進めることが可能である。これらにより、従来、電話問い合わせ後、書類を発送・返送し、不備確認を行っていた一連の手続きや、複雑なWEB申込み手続きをリモートで支援し、オンラインでスピーディに完結させることが可能となる。同社では、「bellFace」の導入支援をはじめとする、本サービス構築のための業務設計から運用、工数のかかる契約や手続きの支援およびプロセスの改善を行う計画だ。このように、同社では、新たな領域に挑むパートナー企業とのアライアンス推進により、次の事業の創出を目指す計画である。



一方、同社は海外事業展開についても積極的に進めており、ベトナム・タイ・台湾などで海外展開の足掛かりを構築してきた。2020年1月に、タイのTrue Touchへ49.99%に出資。タイ、日本、及び多国籍企業などのニーズに応え、タイにおけるコンタクトセンター業界の売上トップシェアを目指し、タイ通信サービス大手のTrue Corporationより、コンタクトセンター勤務者3,000人を受け入れて、事業拡大を加速している。また、2017年7月に出資したHoa Saoでは、コンタクトセンター運営におけるスーパーバイザー支援に特化したベトナムでのオフショア業務を開始している。現状は、コロナ禍の影響から、海外での新たな事業展開は制約を受けているが、事態が収束すれば再び同社成長の一翼を担うと期待される。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)