■戦略的M&A及び資本業務提携の実現



エルテス<3967>は、2022年5月9日付けで、2023年2月期に入ってから4件目のM&A(基本合意)を公表した。また、4月21日には、ラック<3857>との間で資本業務提携を締結するとともに、ラック等を割当先とする第三者割当増資(約8億円の資金調達)を決議している。これらの一連の動きは、中期経営計画で掲げる「変革と基盤構築」の推進に狙いがあると考えられる。また、「加速度的な成長サイクルの実現」に向けて、事業体制及び運営組織の刷新にも取り組んでいる。



1. 戦略的M&Aの概要

(1) 北海道札幌市を地盤とする警備会社

2022年3月10日付で、連結子会社AIKによるISA(株)(及びその関連会社のSSS(株))の完全子会社化を公表した。ISAは2011年に北海道札幌市で創業し、大手電機通信工事会社を始めとした強固な顧客基盤を有する成長性のある警備会社である※。同社グループでは、創業来培ってきたデジタルリスクマネジメントの知見や、最先端のテクノロジーを活用することで、「デジタルとリアルが融合する新たな警備事業」の創出を目指しており、本件を機に、ISA及びSSSの警備事業における知見とAIKのDXソリューションの相乗効果により、AIセキュリティ事業の展開を加速する方針である。



※ISAの直近の業績(2021年3月期)は、売上高が408百万円、営業利益30百万円、SSSの直近の業績(2021年1月期)は、78百万円、営業利益4百万円となっている。





(2) 急成長のシステム開発支援会社

2022年3月18日には、システム開発支援を手掛ける(株)GloLingの完全子会社化を公表した。GloLingは、金融、物流・製造、小売、行政、通信、教育など幅広い業種・業界の企業に対して、コンサルティングから実装までのシステム開発支援を行っており、過去3年間で約82%増の売上成長を遂げている※。GloLingのシステム開発支援に同社のセキュリティ領域の知見を付加し、さらなる成長加速を目指すとともに、大規模プロジェクトが増加している「内部脅威検知サービス」におけるエンジニア拡充や、各ソリューション開発の内製化といったシナジーにより、大きな収益貢献を見込んでいる。



※GloLingの直近の業績(2021年9月期)は、売上高が231百万円、営業利益が26百万円となっている。





(3) 地方銀行等に実績のあるデジタルマーケティング会社

2022年4月8日には、中国銀行<8382>等にデジタルマーケティング関連(広告運用等)のソリューションを提供しているアクター(株)の完全子会社化を公表した※。アクターは、これまでのノウハウやネットワークを生かし、他の地方銀行や金融機関向けに横展開していく構想を描いており、そのためには営業力や信用力のある企業の後ろ盾を必要としていた。一方、同社にとっても、デジタルマーケティング分野への進出強化(リスクモニタリングとの連携を含む)や、地方銀行グループを始めとする金融業界とのビジネス拡大に向けた足掛かりとして大きなメリットが期待できる。特に本件を機に、金融業界向けに需要が拡大している「内部脅威検知サービス」の地方銀行への展開にも注力していく考えだ。



※アクターの直近の業績(2021年2月期)は、売上高が210百万円、営業利益が62百万円となっている。





(4) プロパティ・マネジメント事業を含む不動産関連会社

2022年5月9日には、連結子会社JAPANDXが、不動産の賃貸借における賃料保証を手掛けるバンズ保証(株)の完全子会社化、及びバンズシティ(株)からのプロパティ・マネジメント事業の取得について基本合意に至った(7月中旬にすべて完了予定)※。バンズシティは、「社会の変化と多様化するニーズに柔軟に応えるサービスと街づくり」をビジョンに掲げ、不動産の管理から開発まで手掛ける総合不動産カンパニーとして実績を有している。また、バンズシティの事業のうち、不動産経営に関するサービスを提供するプロパティ・マネジメント事業は、デジタル化による成長余地の大きい領域であり、同社とのシナジー創出が期待できる分野である。本件を機に、バンズシティとスマートシティ構築に向けた連携を強化し、プロパティ・マネジメント事業に留まらない「街づくり」の知見を得ることで、「スマートシティ構築」に向けた歩みを加速させていく方針である。



※バンズ保証及びバンズシティのプロパティ・マネジメント事業の直近の業績(2021年3月期の単純合算値)は、売上高が1,839百万円、営業利益が237百万円となっている。





2. 資本業務提携(第三者割当増資)について

2022年4月21日には、ラックとの間で資本業務提携を締結し、ラック及びDOSO(株)※1を割当先とする第三者割当増資(約8億円の資金調達)※2を決議した(払込期日は5月17日)。ラックは日本を代表するサイバーセキュリティのリーディングカンパニーであり、同社が独自の強みを持つ内部不正監視(インターナルリスクマネジメント)とラックのセキュリティ監視サービス(JSOC®マネージド・セキュリティ・サービス等)を組み合わせて提供することにより、企業への提供価値を飛躍的に高めるところに狙いがある。また、第三者割当増資により調達した資金(約8億円)については、新規事業やM&A、資本業務提携に活用していく方針である。



※1 DOSOは、バンズシティ代表取締役の道祖氏の資産管理会社。

※2 ラックが620,000株、DOSOが205,000株、合計825,000株(発行済株数の15.79%)。





3. 事業体制及び組織運営の刷新

同社は、中期経営計画を実現し、成長を確たるものとするため、2022年3月1日付で3つの事業を拡充するための体制を確立するとともに、組織運営の刷新にも取り組んでいる。



(1) 事業拡充の狙いと体制作り

3つの事業ごとに拡充すべき領域を定め、さらなるM&A等を通じてカバーしていく体制となっている。「デジタルリスク事業」では、今回のM&Aによりシステム開発支援や金融業界向けの領域を強化したが、今後は、医療業界向けやサイバーセキュリティの領域へ拡充していく。「AIセキュリティ事業」では、各地方の警備会社を対象として全国への展開を目指している。また、地方自治体や企業のDX化を支援する「DX推進事業」では、DX推進、IoT活用による減災、不動産・建築、再生エネルギー、DX人材育成/地域活性化など、様々な領域を視野に入れており、地方が抱える社会課題を広くデジタルの力で解決することで、官民一体となった「スマートシティ構想」や政府が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の実現にも貢献していく方針である。



(2) 組織運営の刷新

事業拡充に向けた体制作りに加え、同社は新たに「PMI推進本部」と「経営戦略本部」を設立した。M&Aによって拡大を続ける組織の経営効率を改善し、グループ全体での利益体質の改善を図るところに目的がある。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)