■要約



1. 会社概要

日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、プライベートエクイティ投資(以下、PE投資)や再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を手掛けている。1981年に(公社)経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は16,463百万円(10ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投融資残高は13,784百万円となっている(2022年3月末現在)。PE投資については、VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立に苦戦しており、投資残高も減少傾向にある。ただ、ここ数年はプロジェクト投資に積極的に取り組み、パートナー企業への戦略投資(PE投資)でも成果をあげている。



2. 2022年3月期の業績

2022年3月期の業績(ファンド連結基準※)は、営業収益が前期比13.6%減の3,204百万円、営業損失が237百万円となった。



※同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。





従来連結基準では、営業収益が前期比22.0%減の2,409百万円、営業利益が同59.7%減の86百万円と減収減益となった。また、期初見込値に対しても、営業収益、利益ともに下回る着地となっている。営業収益は、多額の未上場株売却があった前期と比べて株式売却高が減少したことや、プロジェクトの売却についても一部売却にとどまったこと、前期までの売電中プロジェクトの一部売却に伴う売電収益の減少により減収となった。一方、期初見込値を下回ったのは、予定していた上場株式売却の期ずれ(IPO後の株価がロックアップ解除の条件を下回り、売却できなかったこと)が最大の要因である。また、損益面についても、株式売却益の減少及びプロジェクト利益の減少により減益となった。一方、活動面については、戦略投資先のIPOやプロジェクト投資の積み上げでも一定の成果をあげることができた。



3. 2023年3月期の業績見通し

同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2023年3月期については、ある一定の前提をもとに策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。



同社の「従来連結基準による見込値」によれば、2023年3月期については、営業収益を前期比24.5%増の3,000百万円、営業利益を同768.7%増の750百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。大幅な増収となるのは、前期に売却できなかった上場株式の売却に加え、新たにIPOを予定している株式の売却によるものである。また、プロジェクトからの収益についてもプロジェクト4件の売却等を見込んでいる。損益面でも、稼働前のメガソーラープロジェクトや植物工場への先行費用等を見込むものの、総じて利益率の高い上場株式(IPO予定を含む)の売却により、大幅な増益を実現する想定となっている。



4. 今後の方向性(中期経営計画の概要)

同社は、2022年3月期より新たな中期経営計画(3ヶ年)を推進している。投資活動のコアバリューを「ベンチャー投資と特色有るアジアのネットワークを活用した日本とアジアの未来に貢献するSDGs投資」と位置付け、今後、少子高齢化とポストコロナの日本の未来社会で生み出されるイノベーションから創出される事業を見出し、投資活動を通じて成長を支援する方針である。もっとも、基本的な投資方針に大きな変更はなく、戦略投資とプロジェクト投資によりバランスシートの早期改善と安定した収益の造成を図るとともに、ベンチャー投資により高い収益性の確保を目指す内容となっている。最終年度となる2024年3月期にはフィー収益(約2.5億円)とプロジェクトの収益(約9億円)で管理コストを賄うとともに、変動の大きな「PE投資」の収益により超過利益(アップサイド)を狙うシナリオであり、営業総利益で22億円、最終利益で8.5億円を計画している。



■Key Points

・2022年3月期の業績(従来連結基準)は上場株式売却の期ずれにより期初見込値を下回る着地

・一方、戦略投資先のIPOやプロジェクト投資の積み上げでは一定の成果

・2023年3月期は前期からの期ずれ分の売却を含め、大幅な増収増益を見込む

・2022年3月期より新たな中期経営計画を推進。前中計の投資方針をさらに推し進めるとともに、SDGsを強く意識した投資活動に取り組む方向性



(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)