■いちご<2337>の事業概要



1. アセットマネジメント事業

当該事業セグメントは、いちごオフィスリート投資法人<8975>、いちごホテルリート投資法人<3463>及びいちごグリーンインフラ投資法人<9282>と、同社がスポンサーを務める3つの上場投資法人に対し、投資対象資産の発掘及び供給による成長支援、運用期間中の運用・管理などを展開している。



いちごオフィスは、運用資産残高の増加や保有不動産の価値向上による賃料収入の増加などにより、J-REIT最長の18期連続増配の実績を持つ(2010年4月期〜2019年4月期)。安定的かつ収益成長が見込める中規模オフィスに特化したポートフォリオに特徴がある。2019年12月には、世界の上場不動産株式、REITなどで構成され、世界中の機関投資家が指標とするグローバルインデックスファンド「FTSE EPRA / NAREIT Global Real Estate Index Series」に組み入れられた。2022年2月末日の運用資産は85物件、残高2,054億円、2022年2月期の期中運用フィー粗利1,725百万円(前期比201百万円増)となった。いちごホテルは2015年11月に上場したビジネス・観光に優位性のある好立地の宿泊主体・特化型ホテルで構成されるホテル特化型J-REITである。2022年2月末日の運用資産は23ホテル、残高519億円、2022年2月期の期中運用フィー粗利95百万円(前期比53百万円増)となった。いちごオフィス及びいちごホテルは、グループの資産運用会社に対する報酬体系を投資主価値向上に連動するJ-REIT初の完全成果報酬制をとる。このため、コロナの影響によるホテル売上の減少の影響でベース運用フィーが減少している。いちごグリーンは、2016年12月に東証インフラ市場に上場したグリーンインフラ特化型投資法人である。長期にわたる安定収益を背景に、史上初となる10ヶ年の長期業績予想を行った。2022年2月末日の運用資産は15発電所、残高114億円、2022年2月期の期中運用フィー粗利77百万円(前期比2百万円減)となった。



そして、同社はスポンサーとして各投資法人の成長サポートを担う。同社が心築を施した物件の各投資法人へのブリッジや物件入替を行うなど、スポンサー(同社)と各投資法人が連携することで、グループ全体として株主価値を向上させ、安定収益を生み出せるシステムが同社の総合力である。2022年2月期には、いちごオフィス向けにブリッジファンドを組成、高稼働の優良オフィス4物件を譲渡した。



2022年2月期は、ベース運用フィーが堅調に推移したこと、いちごオフィスにおいて物件売却に伴う増益に連動して報酬が増加したことなどにより、セグメント売上高は2,898百万円(前期比16.9%増)、セグメント利益は1,839百万円(同31.0%増)となった。



2. 心築(しんちく)事業

心築事業は同社事業の柱であり、不動産価値向上ノウハウは同社のコアコンピタンスである。心築という言葉は同社の造語であり「心で築く、心を築く」の信条のもと、同社の技術とノウハウを活用し、1つ1つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造することを言い、日本における「100年不動産」の実現を目指すものである。



心築事業の収益には、保有不動産の賃貸収益(ストック収益)と譲渡収益(フロー収益)の両面がある。賃貸収益は自己保有資産(2,475億円)から生み出され、2022年2月期の粗利ベース収益で4,842百万円(前期比1,377百万円減)と、コロナの影響によるホテルの賃貸収益の低調及び大規模オフィスの空室の影響を一時的に受けた。譲渡収益は売却における譲渡益であり、オフィス、商業施設、ホテル等のマルチアセット及びいちごオーナーズによるレジデンス物件売却による収益で、2022年2月期のALL-INベースの粗利益は9,515百万円(前期比65.5%増)となった。コロナの環境においても引き続き順調なレジデンスに加え、オフィスにおいても売買環境が正常化、またホテルや商業施設もプレーヤーやエリアは限定されるものの、一部でコロナ前の水準での売却が行われるようになった。



保有資産の特徴は、物件タイプとしては商業施設(28%)、ホテル(25%)、オフィス(25%)、レジデンス(17%)とバランス型のポートフォリオになっている。地域別では東京(54%)が多く、福岡(19%)と東京以外首都圏(12%)が続く。また物件規模では、10〜50億円未満の中規模物件が46%と多く、主にいちごオーナーズが対象とする10億円未満の物件も20%と一定割合を占める。



心築事業の成功のカギは、好立地かつ価値向上のポテンシャルを持つ良質な物件の取得である。2022年2月期では簿価ベースで34物件、31,045百万円(平均913百万円/物件)の資産を取得した。2021年2月期が41物件、38,206百万円(平均931百万円/物件)であり、前期比では総額はやや減少したが、案件規模は変わらない。いちごオーナーズでの取得が26,727百万円と全体の86%に上っており、いちごオーナーズの成長に合わせ、このところは10億円前後のレジデンスの取得が目立つ。取得物件種類では、レジデンスが全体の87%、次にオフィスが12%で続く。



売却に関しては、2022年2月期では売上高ベースで63物件、45,830百万円(平均727百万円/物件)の資産が売却された。売却物件種類の中ではレジデンスが23,948百万円(構成比で52%)と最大だったが、前期の35,229百万円(構成比で85%)からは減少した一方で、オフィスの売却が12,412百万円(構成比で27%)、ロジスティクスの売却が6,011百万円(構成比で13%)、ホテルの売却が2,663百万円(構成比で6%)と、市況の回復に合わせバランスの良い売却となった。本来の、多様な物件ポートフォリオを持つ同社の特徴を取り戻しつつあることが見て取れる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)