■業績動向



1. 2022年3月期連結業績の概要

飯野海運<9119>の2022年3月期の連結業績は、売上高が2021年3月期比17.1%増の104,100百万円、営業利益が10.1%増の7,524百万円、経常利益が38.5%増の9,431百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が63.6%増の12,526百万円だった。平均為替レートは112.06円/米ドル(2021年3月期は105.79円/米ドル)、平均燃料油価格(補油地:シンガポール)は423米ドル/MT(2021年3月期は269米ドル/MT)、適合燃料油平均価格は558米ドル/MT(同346米ドル/MT)だった。



海運業における市況上昇、既存契約の有利更改や効率配船への取り組みによる運航採算の向上、不動産業における日比谷フォートタワーの稼働などで大幅増収増益だった。営業利益の2021年3月期比6.9億円増の分析は、増益要因として、ドライバルク船が市況上昇による採算改善などで15.3億円増、ケミカルタンカーが入渠隻数の減少による費用減少や高運賃スポット貨物の獲得に加えて、市況が想定を上回ったことも寄与して6.3億円増、大型原油タンカーが新造船2隻の本格稼働も寄与して5.3億円増、不動産業が英国不動産の稼働増加や日比谷フォートタワーの稼働などで2.9億円増、その他が4.8億円増、減益要因として、大型ガス船が保有船の売却による稼働減少やLNG船の入渠による費用増加などで27.7億円減だった。営業外収益は1,786百万円増加(受取配当金が1,247百万円増加、円安・ドル高に伴って為替差益が650百万円増加など)し、営業外費用は143百万円減少(支払利息が149百万円減少)した。特別利益では固定資産売却益(売船)4,428百万円を計上、前期計上の子会社清算益822百万円が剥落、特別損失では投資有価証券評価損969百万円を計上した。



なお、前回予想(2022年2月8日付の上方修正値、売上高103,000百万円、営業利益5,900百万円、経常利益6,800百万円、親会社株主帰属当期純利益10,000百万円)に対しても大幅に上回って着地した。主に外航海運業において、ウクライナ情勢の悪化に伴って米国や中東から欧州への輸送需要が増加し、ケミカルタンカーの市況が想定よりも高い水準で推移して採算が改善した。さらに、事業投資先からの配当金が増加したことや、第4四半期に為替が大きく円安・ドル高に振れて為替差益を計上したことも寄与した。



2. セグメント別動向

セグメント別の動向は以下のとおりである。



(1) 外航海運業

外航海運業は売上高が前期比19.1%増の82,546百万円、営業利益が同16.1%増の2,860百万円だった。大型原油タンカーは、入渠による費用が増加したが、支配船腹を長期契約に継続投入し、2021年3月期に竣工した新造船2隻の本格稼働も寄与して安定収益を確保した。ケミカルタンカーは、夏場以降に採算が改善した。基幹航路である中東域から欧州およびアジア向けの安定的なCOA(数量輸送契約)に加えて、アジア域からの高運賃スポット貨物の獲得、コスト面での入渠隻数減少による費用減少も寄与した。なお米国オペレーターとの合弁事業は、第3四半期にパートナーシップ形態を変更し、米国オペレーター向けプロフィットシェア付き定期用船契約に移行した。大型ガス船は、保有船の売却で稼働が減少し、LNG船の入渠に伴う費用増加が影響した。ドライバルク船は、専用船が順調に稼働し、市況が想定よりも高い水準で推移したことも寄与して運航採算が当初の予想を上回った。



(2) 内航・近海海運業

内航・近海海運業は売上高が前期比11.1%増の9,535百万円、営業利益が同1.7%増の513百万円だった。内航ガス輸送は、コロナ禍で民生用LPG需要の低迷が続いているが、中長期契約に基づいて安定的収益を確保した。近海ガス輸送は市況軟化の影響を受けたが、第4四半期に一部の契約更改を実現して採算が回復傾向となった。



(3) 不動産業

不動産業は売上高が前期比9.8%増の12,254百万円、営業利益が同7.4%増の4,150百万円だった。営繕費が増加したが、主力の飯野ビルディングの稼働が堅調に推移し、2020年3月に取得した英国ロンドンBRACTON HOUSEの稼働増加、2021年6月に竣工した日比谷フォートタワーの稼働も寄与した。コロナ禍に伴うイベント中止・延期の影響を受けていたイイノホール&カンファレンスセンターも、影響が徐々に和らいで稼働が改善傾向となった。





自己資本比率上昇、D/Eレシオ低下

3. 財務の状況

財務面で見ると、2022年3月期末の資産合計は2021年3月期末比1,519百万円増加して247,130百万円となった。主に売掛金が増加したことによる。負債合計は9,979百万円減少して155,797百万円となった。船舶売却などで設備資金を返済し、有利子負債が10,816百万円減少した。純資産は11,497百万円増加して91,333百万円となった。主に利益剰余金が増加したことによる。この結果、自己資本比率は4.4ポイント上昇して36.9%となった。またD/Eレシオは0.33ポイント低下して1.32倍となった。利益剰余金の積み上げによる自己資本比率の上昇、有利子負債の返済によるD/Eレシオの低下など、財務体質の改善が進んだ形である。海運業と不動産業を両輪に安定した収益基盤を構築しており、財務健全性に大きな問題は無いと判断できるだろう。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)