■今後の見通し



3. 事業別成長戦略

(1) マテリアルソリューション事業

マテリアルソリューション事業の2024年3月期業績目標は、売上高で186億円、営業利益で14.0億円を掲げている。既述のとおり、原材料価格の高騰による値上げを実施していることやエイゼンコーポレーションを子会社化したことにより、売上高については2023年3月期に前倒しで達成する見通しだが、利益面ではハードルが高くなっている。今後の原材料価格の動向次第で、2024年3月期の利益水準は変わってくるものと見られる。



こうしたなか、ウェーブロックホールディングス<7940>は収益基盤の強化施策として、生産性向上に寄与する生産体制の再構築(外部パートナーとの協業含む)や、流通チャネルの最適化による販売効率の向上に加えて、競合優位性があり差別化が可能な製品やサービスの育成により原材料価格の動向に左右されづらい事業への転換に取り組んでいく。一方、新規分野としては環境関連ビジネスと海外市場の開拓を進めていくことにしている。特に、環境関連ビジネスでは、熱交換の大幅な効率化を実現するシステム「ヒートクラスター(R)」による地中熱ビジネスを育成する方針で、設計・施工を担う子会社もM&Aによりグループ化するなど、事業拡大に向けた体制は整ったと言える。なお、地中熱ビジネスの売上高として、2024年3月期に7億円を目指している。



熱交換システム「ヒートクラスター(R)」とは、地下10〜200mの地中熱を利用したヒートポンプ方式の冷暖房システムである。年間を通して温度がほぼ一定となる地中に熱交換システムを設置し、冬の暖房時には外気より温度の高い地中から採熱し、夏の冷房時には外気より温度の低い地中に放熱することによって、既存の空調システムに対して大幅な省エネ化を実現したシステムとなる。消費電力の削減効果としては、既存システムの30〜60%程度を達成した事例がある。政府の再生可能エネルギー政策により2011年度以降、経済産業省や環境省、各自治体等で補助金制度が導入されたほか、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)でも普及促進に向けた研究開発事業等に取り組んでおり、脱炭素社会の実現に向けたソリューションの1つとして今後の市場拡大が見込まれている。



課題は、熱交換用のパイプを埋設するための掘削工事費用が高い点にあり、各社が施工方法も含めた低コスト化システムの開発を進めている。同社が開発した熱交換システムは従来技術よりも熱交換効率が3〜5倍高く、掘削回数が少なく済むため、従来工法よりも設備投資費用を抑制できることが長所となっている。従来はシステムの販売のみであったが、2023年3月期からはエイゼンコーポレーションを元請けとして設計・施工まで行うシステムインテグレータとして事業を拡大していく。



ターゲット市場は、既存事業とのシナジーも見込める農業・建設分野を挙げており、大規模ビニルハウスや建物の空調システムとして導入拡大を目指していく。特にビニルハウス栽培を行う農家や農業法人では電力消費を抑えることが課題となっており、「ヒートクラスター(R)」による地中熱ビジネスの普及に取り組むことで、農業の生産性向上並びにサステナビリティに貢献していく考えだ。また、「ヒートクラスター(R)」導入の際には、同社のアグリソリューション分野における関連製品の販売も合わせて提案できることから、シナジー効果も期待される。



そのほか、環境関連ビジネスでは、環境対応素材製品の展開を推進していく。一例を挙げると、ポーション型コーヒーフレッシュでは業界初となる植物由来のバイオマスプラスチックを配合した製品が、スジャータめいらくグループの業務用ミルクポーションに採用され、2021年10月から発売されている。今後ほかの製品にも横展開していくことで売上拡大につなげていく考えだ。そのほかにも、食品のロングライフ化やリサイクル可能な建設資材の開発等、環境対応のための顧客ニーズは増大しており、こうしたニーズに迅速に対応することで、持続的な成長を目指していく。



海外展開では、農業用資材をアジア各国に販売していく。中国では、現地子会社と連携しながら有力な販売パートナーを探索し、日本製の高付加価値品を販売していく。韓国では現地販売チャネルを開拓し、遮光ネットを販売、ベトナムでは現地企業と協業して、周辺国を含めて遮熱ネットや防虫ネットの拡販を進めていく計画となっている。ただ、今回の中期3か年計画での売上貢献としては多くは見込んでいないようで、海外市場展開のための基盤固めを行う期間と位置付けている。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)