■要約



シュッピン<3179>はカメラや高級腕時計など「価値あるもの」に特化したEC(eコマース)企業。中古品と新品のそれぞれのニーズの違いや商品特性の違いを生かし、中古品と新品が相互に作用し合いながら会員基盤の拡大や業績の伸びを実現してきた。最近では、独自のEC買取やOne to Oneマーケティング、CGMの活用などにも取り組み、プラットフォーム型事業モデルとして進化を続けている。この2年間は、新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)により、店舗売上に影響がでているものの、主軸であるEC売上はこれまでの施策の効果により順調に伸びているほか、戦略的在庫投資が奏功した時計事業が大きく拡大しており、明らかに一段上のステージに入ってきたと言える。2022年4月4日には新市場区分である「東証プライム市場」へ移行した。



1. 2022年3月期の業績

2022年3月期の業績は、売上高が前期比28.0%増の43,453百万円、営業利益が同94.7%増の3,140百万円と、2回目の増額修正予想(2022年1月17日公表)をさらに上回る増収増益を実現した。売上高は、コロナ禍においても、同社が取り扱う商材(カメラ、高級時計)への需要は変わらず、EC売上及び店舗売上がともに伸長。特に主軸のEC売上は、好調な外部環境(EC市場の拡大等)や各施策の効果により、カメラ事業を中心に好調に推移しており、第4四半期は過去最高額(四半期ベース)を更新した。一方、コロナ禍の影響が続く店舗売上についても、戦略的な商品ラインアップ拡充(中古ロレックスの買取強化)により時計事業が大きく拡大し、カメラ事業においては、リソースをECへシフトしながらも前期水準を維持し、落ち込みから回復してきた。利益面でも、増収による収益の押し上げに加え、AIMD導入によるカメラ中古品の売上総利益率の改善や販管費のコントロールにより大幅な営業増益を実現し、営業利益率も7.2%(前期は4.8%)に改善した。



2. 主な活動実績

活動面でも、One to One マーケティングにAIMDを掛け合わせた仕組みの導入により、プッシュ配信が格段に強化され、取引機会の増大や売上総利益率の改善に寄与してきたことや、「LINE」公式アカウント及び「YouTube」チャンネルの開設、CGMの活用など、一連のEC強化策により、Web会員数やアクティブ率、EC買取額など、各KPIも好調に推移した。また、戦略的在庫投資に取り組む「時計事業」についても、中古ロレックスを中心に国内最大級の在庫量を確保するとともに、越境EC等を通じたグローバルでの知名度の向上により、業績の伸びを実現することができた。さらに今後に向けても、AIコンテンツレコメンドの開始やカメラ修理を手掛ける(株)フクイカメラサービスとの資本業務提携などに取り組んだ。



3. 2023年3月期の業績予想

2023年3月期の連結業績について同社は、売上高を前期比11.1%増の48,260百万円、営業利益を同11.6%増の3,507百万円と引き続き増収増益を見込んでいる。売上高は、EC売上を軸としてすべての事業が伸長する想定である。また、店舗売上についてもコロナ禍の収束(特にインバウンドの再開)とともに、ほぼコロナ禍前(2020年3月期)の水準にまで回復する見通しとなっている。利益面では、引き続きAIMDの導入効果により売上総利益率は0.5pt改善する想定である。一方、販管費については、今後の事業拡大に向けたスタッフの増員などにより一旦増加するものの、売上総利益の伸びで吸収することにより営業増益を実現する見通しとなっている。



4. 今後の成長戦略

同社は、毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を更新(ローリング)している。主軸となるカメラ・時計のさらなる成長と、越境ECによるグローバル展開の活性化に取り組む方向性であり、シェア拡大に伴うEC売上の持続的成長をドライバーとして位置付けている。また、引き続きAI活用による利益率の改善、スリムな経営による販管費率の低減により、売上高の成長以上に利益成長を重視する方針としており、最終年度となる2025年3月期の目標として、売上高60,385百万円(3年間の年平均成長率11.6%)、営業利益5,091百万円(営業利益率8.4%)を目指している。特に2023年3月期は、中長期目標の達成に向けて、One to OneマーケティングやAIMDに加え、AIコンテンツレコメンドの開始やLINEによる情報提供機能の強化などにより、購入前、購入時、購入後のどのシーンにおいても、楽しさや利便性を感じてもらう3つのサイクルの輪をさらに大きくしていく考えだ。



■Key Points

・2022年3月期は計画を大きく上回る増収増益を実現

・EC売上が順調に伸びるとともに、戦略的在庫投資により「時計事業」が大きく拡大

・2023年3月期もEC売上の伸びや店舗売上の回復により増収増益を見込む

・新たな中期経営計画では、カメラ・時計のさらなる成長と越境ECによるグローバル展開の活性化にも取り組み、EC売上の持続的成長とAI活用による利益率の改善を実現していく方針



(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)