■今後の見通し



1. 2023年3月期の業績見通し

2023年3月期の連結業績予想については、売上高33,000百万円(前期比6.7%増)、営業利益3,065百万円(同3.3%増)、経常利益3,135百万円(同1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,100百万円(同1.5%増)を見込む。DX促進に向けた企業のIT投資は前期に引き続き好調に推移する見込みで、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連の案件は堅調に推移する見通しだが、新卒採用者の教育やそれに付随するコストの増加が収益を圧迫するため、前期のような高い伸び率は示現できないというのがTDCソフト<4687>の見方だ。前期はITコンサルティング&サービス分野を筆頭に予想を上回る活況となり、2021年9月、2022年2月と二度にわたる業績の上方修正が行われた。人材リソースの増加が同社の業績拡大に貢献してきた経緯と、前期から積極的なリソースの拡大に取り組んでいることを考えると、今期も上方修正への期待は高まる。まずは、2023年3月期の第1四半期と9月中間期における、各分野の売上高の伸びを確認したいところだ。



新たな中期経営計画では、前中期経営計画で掲げたビジョン「次世代型システムインテグレーター」を踏襲する。ニーズに対応した次世代型のSI事業へ進化するため、高付加価値SIサービスを一段と追求する。なお、高付加価値SIサービスは、引き続き同社の成長をけん引する格好になると考えられるものの、将来的にはサービスが広がるとともに、いずれ一般的なサービスとなるものとして、同社は楽観視していない。アジャイルについてはSI各社ともに注力している分野であるため、高付加価値から一般のサービスになる可能性があると見ているようだ。そのため、アジャイルに続く高付加価値サービスを生み出すための投資及び戦略を推進していく方針である。



ちなみに、同社は一時的な採用抑制をフォローするため、2021年度は新卒採用を積極的に行った。そのため、2023年3月期の中間期決算では、新卒採用の強化に伴う教育費など諸経費が増え、それによる販売管理費が増加。これによって、売上高こそ前年同期比6.4%増の15,600百万円と増収を維持するものの、営業利益1,340百万円(前年同期比15.6%減)、経常利益1,365百万円(同17.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益915百万円(同18.1%減)と増収減益を予想している。もっとも、2023年3月期通期では増収効果がそれら費用増加をカバーし、増収増益で着地する見通しだ。同社は人材リソースの確保を最重要課題の1つとして掲げ、2022年3月にはそれを目的としたテレビCMを展開した。今後も同様に人材リソースの確保を目的としたブランディング及びマーケティングへの投資を続ける方針である。



2. 2023年3月期の重点施策

(1) 積極的な投資の推進

同社では堅調な経営状況を踏まえ、さらなる成長に向けた足場固めを行うため、積極的な投資を推進。アジャイルやセキュリティなどの重点戦略分野の投資のほか、5G関連のビジネス化に向けた研究、自社製品であるクラウド型ワークフローシステム「Styleflow」の販売促進強化を挙げている。DXの潮流が加速するなか、重点分野の事業の拡大、高収益化を推進するうえで、今後主流になると見込む、要素技術の獲得に向けた成長投資を積極的に行う計画である。また、同社は2022年3月にテレビCMの放映を開始したが、今後も人材リソースの確保を主な目的に、テレビCMやSNS、YouTubeなどを活用したブランディング及びマーケティングにも投資を行っていく計画である。



(2) 人材対応

コロナ禍において、そもそもSI人材が転職市場に想定よりも流動的でない状況ではあるが、新入社員の採用によって育成・対応していく方向で進める。同社は人材確保における独自の強みを持っていることもあり、人材不足のなかにおいても同業他社と比較して、現状では堅実に確保できているもようだ。ただ、競合他社がDXの加速に向けて人材確保を進めるなか、今後はさらにリソースの獲得が困難になることが予想される。そのため、同社は新卒採用者の育成のほかに、M&Aも視野に入れた人材リソース獲得戦略を検討しているようだ。



3. 事業分野別の業績

「ITコンサルティング&サービス分野」は、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連案件の需要は継続することにより、拡大基調を維持できるとして、前期比18.6%増の4,600百万円を計画。「金融ITソリューション分野」は既存領域が堅調に推移すると見ており、SoE、Sol領域の拡大に伴い同3.2%増の14,850百万円を見込んでいる。「公共法人ITソリューション分野」は運輸業・製造業向けでの拡大を見込んでおり、同8.6%増の9,550百万円を計画。また、DX需要などを背景とした顧客のIT企画支援などが活況になると見ている。「プラットフォームソリューション分野」は同3.7%増の4,000百万円を計画しており、クラウドニーズの高まりによる事業拡大を見込んでいる。



4. 新中期経営計画「Shift to the Smart SI Plus」策定

同社が現在掲げている新中期経営計画(2022年4月から2025年3月)は「Shift to the Smart SI Plus」だ。(1)「高付加価値SIサービスの追求」(2)「SIモデル変革の推進」を主要戦略に据え、(3)「事業領域の拡大」としてPlusを加えている。既存のSI事業領域を軸に新たな領域へ事業を拡大し、新たなビジネスモデルに必要なケイパビリティを獲得し、次世代型SI企業を目指す。中期経営計画における業績目標は、2025年3月期売上高40,000百万円(2022年3月期実績30,925百万円)、営業利益率10%を掲げている。



SI事業においては、次世代型SI事業の拡大のほか、維持・保守領域などのSI事業におけるマネージドサービスによるビジネスボリュームの拡大。コンサル事業においては、ナレッジの蓄積やメソッド化を図り、次の事業拡大を目指す。既存のDX/ITコンサルやSAFe(R)コンサルのさらなる拡大のほか、技術教育サービスの拡充・拡大を図る。サービス・製品販売事業において、蓄積ナレッジを活用した新たな自社製品の販売事業の拡大のほか、マーケティング機能を強化することで、ユーザーニーズやシーズを捉えた製品やサービスの販売を行う。



その他、人材の確保として積極的な人材採用施策を推進するほか、人材育成施策の推進により、早期戦力化や高付加価値領域へ育てる。グループ・M&A戦略推進においては、新たな事業領域の拡大に向けた、未保有の機能・特性の獲得に向けたグループ・M&A戦略を推進する。企業基盤の強化に向けては評価戦略的な意思決定を可能とするデータ活用などのコーポレート機能を強化。事業拡大に向けた投資の強化に関しては、DXの潮流が加速するなか、今後主流になると見込んでいる要素技術の獲得に加えて、事業領域の拡大に向けたケイパビリティを獲得するための投資を推進する計画である。



この事業領域の拡大に向けた投資については7つの投資分野を対象としており、「アジャイル」「クラウドネイティブ」「データアナリティクスプラットフォーム」「UXD(ユーザーエクスペリエンスデザイン)」「セキュリティ」に加え、新たに「フロントエンドフレームワーク」「オートメーション・マネージドサービス」を対象としており、新規事業や高付加価値分野のさらなる拡大をねらう。



なお、「フロントエンド フレームワーク」に関しては、React、Angular、Vueなどのフロントエンドフレームワーク関連技術に投資を行い、技術者の育成及び当技術を活用したプロダクトの開発を目指す。「オートメーション・マネージドサービス」に関しては、運用や保守機能をサービスとして提供する。クラウドネイティブの活用や自動化などの効率化によるマネージドサービス事業の構築を目指すことを挙げている。



(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)