■業績動向



1. 2022年3月期の業績動向

澁澤倉庫<9304>の2022年3月期の業績は、営業収益71,746百万円(前期比9.8%増)、営業利益4,516百万円(同24.5%増)、経常利益6,924百万円(同76.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,257百万円(同91.1%増)となった。日本経済は、ワクチン接種の促進などによりコロナ禍による厳しい状況から社会経済活動が正常化に向かい始め、個人消費、企業活動ともに持ち直しの動きが見られた。しかし、半導体などの供給不足や原材料価格の上昇など景気下振れ要因もあり、依然として先行き不透明な状況で推移した。物流業界では輸出入貨物や国内貨物の動きが鈍化したほか燃油費などのコスト上昇が継続し、不動産業界では都市部オフィスビルの空室率が上昇する一方賃料相場が下落するなど、いずれの業界も厳しい状況が続いた。こうした事業環境下において、同社は2022年3月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画「経営計画2023」を着実に遂行した。物流事業では、競争力のある物流サービスの提供や業域の拡大に向けて、国内外拠点における新規営業活動や先進的荷役機器の導入などによって業務の効率化と採算性の向上を推進した。不動産事業では、既存施設で計画的な保守及び改良工事を実施し、安定的な収益基盤の維持強化に努めた。



営業収益は、不動産事業で一部賃貸スペースの解約による不動産賃貸収入の減少はあったものの、物流事業では、拠点拡充などによる各業務の取扱い増加やコンテナ不足などを背景とする海上・航空運賃単価の上昇や航空便の緊急利用、中国現地法人の連結化により増収となった。利益面では、取り扱い増により作業費や燃油費、施設賃借費用は増加したものの、取扱量増加による増収効果に加えて機械化・自動化などによる効率性の向上や販管費の抑制などもあり、営業利益は大幅な増加となった。また、為替差損益の改善やデータ・キーピング・サービス株式の追加取得に伴うのれんなど持分法による投資利益の増加により、経常利益は営業利益を上回る伸びとなった。



物流事業の営業収益は各業務とも増加し、66,056百万円(前期比11.0%増)となった。倉庫業務は、飲料や新規に取扱いを開始した輸入雑貨などの入出庫及び流通加工業務が好調に推移した。港湾運送業務は、船内荷役業務や自動車部品関連などの荷捌業務の取扱いが増加したほか、輸出沿岸荷役業務が好調に推移した。陸上運送業務は、飲料や非鉄金属製品などの輸配送業務に加え、引越業務やフェリー輸送業務が増加した。国際輸送業務は、輸出入航空貨物、輸出入海上貨物、香港やベトナムの海外現地法人の取扱いが増加したことに加え、コンテナ不足などによる海上・航空運賃単価の上昇や航空便の緊急利用、中国の現地法人の連結化といった一時的な要因もあって大幅な増収となった。その他の物流業務は、中部地区や大阪地区などで前期に開始した物流施設賃貸業務が寄与した。利益面では、取扱い増による費用増の一方、効率化や販管費の抑制などにより、営業利益は3,330百万円(同31.9%増)と大きく伸びた。不動産事業は、一部賃貸スペースの解約による不動産賃貸収入の減少、空調使用料などの不動産付帯収入の減少などにより、営業収益は5,838百万円(同2.5%減)となった。一方、賃貸ビルの補修工事費などが減少したため、営業利益は3,026百万円(同1.5%増)と増益を確保した。





2023年3月期は、引き続き中期経営計画の営業利益目標の達成を目指す

2. 2023年3月期の業績見通し

2023年3月期業績見通しは、営業収益71,800百万円(前期比0.1%増)、営業利益4,600百万円(同1.9%増)、経常利益5,100百万円(同26.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,200百万円(同39.1%減)としている。日本経済は、コロナ禍の影響に加え原材料価格の上昇や急激な円安、ウクライナ情勢など懸念材料を抱えているが、各種政策の効果を背景に景気が持ち直していくと期待されている。物流業界においては、国内貨物、輸出入貨物ともに荷動きが緩やかに回復するものの、競争の激化に加え人手不足や燃油費上昇などに伴う物流コストの増加が見込まれ、引き続き厳しい環境が予想される。不動産業界においては、空室率の増加や賃料相場の下落など依然下押しリスクが高まっている。こうした厳しい事業環境ながら、同社は「経営計画2023」を軸とした積極戦略により増収営業増益を予想し、営業利益については引き続き中期経営計画目標値の達成を見込んでいる。なお、持分法による投資利益の減少などから経常利益は減益となり、神戸市の倉庫解体費用(特別損失)などから親会社株主に帰属する当期純利益は経常利益を上回る減益幅になることが見込まれている。



事業別の状況に関しては海上・航空運賃単価の正常化や航空便の緊急利用の減少により国際輸送業務の減収が予想されるものの、輸入雑貨など前期に開始した新規業務の通期寄与のほか、松戸市や横浜市の拠点増床による倉庫業務や陸上運送業務の拡大、横浜市のR&D施設への新規テナントの誘致などにより、物流事業全体で微増収を予想している。不動産事業では、新規賃貸開始もあってオフィスビルを中心に安定した収益を見込んでいる。利益面では、増収に伴う作業費や施設賃借費用の増加に加えて、前期の一時的な収益拡大要因がなくなることで国際輸送業務が減益見込みだが、そのほかの業務の増収効果や業務効率化などによる販管費の減少から、物流事業全体では増益を確保することが予想されている。不動産事業も、オフィスビル新規賃貸開始により営業増益を確保する見込みである。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)