■今後の見通し



2. 今後の成長戦略

アクセル<6730>は、LSI開発販売関連をキャッシュ・カウとして安定的な収益を確保しながら、同事業で得たキャッシュを新規事業関連への投資に振り向けることで、新規事業関連の持続的かつ飛躍的な成長を目指していく。中長期的にはLSI開発販売関連と新規事業関連の事業規模を同程度まで育成することを目標としている。



(1) LSI開発販売関連

LSI開発販売関連については、今後もG-LSIの性能向上(独自の動画圧縮伸長技術による臨場感のある映像表現の実現等)と、消費電力の低減、顧客との信頼関係の維持向上などに注力していくことで、高シェアを維持し安定的な収益を獲得していく戦略だ。パチンコ・パチスロ機においても臨場感のあるVR/AR技術の導入が進む可能性がある。そうなればG-LSIの性能向上だけでなく、メモリの搭載容量もさらに増加し、遊技機1台当たりの同社売上単価も上昇する可能性がある。また、市場全体が成熟化しているため、新規参入によって競争が激化するリスクも殆どないと考えられ、今後も安定収益事業として同社の業績を下支えしていくものと予想される。



(2) 新規事業関連

新規事業関連についてはコロナ禍の影響もあり当初の計画と比べて、売上高の成長ペースが遅れているものの、機械学習/AI領域を中心にターゲットとしている市場の成長ポテンシャルは高く、将来的に収益をけん引していく可能性は十分あると弊社では見ている。新規事業関連は、同社がパチンコ・パチスロ機市場で培ってきたアルゴリズム・ハードウェア・ソフトウェア等の開発ノウハウや技術力を活用できる領域であり、飛躍的な成長を実現していくために必要となるリソースはあると弊社では考えている。課題は幅広い業界にアプローチするための営業力にあったが、日本エンタープライズと提携するなど、アライアンスによってこうした課題が解決できる道筋も見えてきている。当面は機械学習/AI領域での売上規模拡大を最優先にアライアンスやM&Aも含めて積極的に事業展開を図る方針であり、今後の動向が注目される。



(3) 機械学習/AI領域

機械学習/AI領域では、ファクトリーオートメーション市場、監視カメラ市場、スマートモビリティ市場の3つの市場を重点分野として取り込んでいく。ファクトリーオートメーション市場では「ailia SDK」を用いたAIによる画像検査システムや故障予知システムの開発・提供に取り組む。製造ラインの目視検査による検査工程において、AIの活用により自動化・高精度化を実現していくほか、装置の状態をリアルタイムでデータ収集・監視することで故障予知を行い、製造ラインの不具合発生を未然に防ぐといった需要を開拓する。ここ数年、AI技術を活用して同様の取り組みを進めている企業は多いものの、AIの精度がまだ低く、期待したほど普及が進んでいない。同社は「ailia SDK」を中核とする学習から推論までのプラットフォームを提供することで、こうした課題を解決していく。



監視カメラ市場については、侵入検知や不審行動検知、マーケティング用途に向けてAIアプリを開発中で、監視カメラ向けAI統合プラットフォームとして展開する予定だ。スマートモビリティ市場に関しては、2021年4月に(株)NTTドコモが実用化を推進している「対話型AI自動運転車いすパートナーモビリティ」のアプリケーション開発に参画したことを発表した。「パートナーモビリティ」はNTTドコモが久留米工業大学と共同研究している、音声対話で行き先を相談しながら自動運転で目的地まで案内するモビリティのことで、移動が困難な人が介助者なしで移動を楽しむことを目指したソリューションである。自動運転車いすに複数のカメラを設置し、カメラから入ってくる映像情報を遠隔のサポートセンターに5Gの高速通信で送信し、音声でやりとりしながら遠隔操縦を行う仕組みとなる。



同社は、自律走行及び遠隔制御を実現するため、カメラから入ってくる映像情報をもとに障害物の検知と距離の測定を行う障害物探知機能、映像情報のなかに人物が紛れ込んでいれば、それを認識してリアルタイムでモザイク処理を行うプライバシー保護機能などを実装した。これらは「ailia SDK」が持つ世界最高水準の推論速度によって実現を可能にしている。また、推論フレームワークを自社で開発・保持しているため最適化のためのチューニングが容易なほか、200種類を超える学習済みモデルが既にあるため、顧客は独自で学習モデルを開発する必要がなく、AI実装における開発の効率化が可能となるといった強みを持つ。



開発支援プロジェクトの引き合いは増加傾向にあり、当面はこうした開発案件を数多くこなすことで事業を拡大していく。次のステップとして、積み重ねた実績をもとに用途別ソリューションをパッケージ化して提供し、「ailia」のロイヤリティ収益も獲得しながら、安定かつ高収益なビジネスモデルの構築を目指していく。



(4) 自動運転向けAIチップ

NEDOの公募事業の一環として2017年から研究開発を進めてきた「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」に関しては、2022年夏頃に試作AIチップが完成し、2022年秋以降、実証実験を開始し製品化の検討を進めていく計画である。完全自動運転の実用化に向けて、資本業務提携先の(株)ティアフォーや複数の大学と共同で開発を進めてきたプロジェクトで、ティアフォーがアプリケーションソフト(完全自動運転・監視)、埼玉大学がミドルウェア、東京大学がコンパイラ・OSの開発をそれぞれ担当し、同社はLSIの設計・開発を担当した。



用途としては、工場内で走行する自動搬送車両やショッピングモールの移動車両など走行エリアが限定されるモビリティ市場を想定しており、自動運転用途以外のAI活用領域への転用も可能と見ている。ビジネスモデルとしては、AIチップの開発販売、AIチップのIP販売によるロイヤリティ収入の獲得、提携先と組んでビジネス展開するなど様々なケースが想定されており、今後事業化に向けて検討していく。まずは、実証実験の動向に注目したい。



なお、自動運転分野においては2021年6月に(株)エヌエスアイテクスと協業していくことを発表した。エヌエスアイテクスは2017年にデンソーからスピンオフして設立した先進的なプロセッサを開発するIPベンダーで、FuSa(機能安全)に対応したRISC-VベースのプロセッサIP「DR1000C」を開発している。同プロセッサに同社のAIフレームワーク「ailia SDK」を実装して、モビリティ市場への展開を進めていくものと予想される。エヌエスアイテクスでは、「DRC1000C」上で高速処理できるAIエンジンを探しており、同社の「ailia SDK」をカスタマイズして提供することになった。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)