■中長期の成長戦略



1. 筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築

冨士ダイス<6167>は新社長の下、昨年、新たな中期経営計画(2021-2023年度)を示した。基本コンセプトは「筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築」とし、具体的に重点施策として、(1)生産性向上・業務効率化、(2)次世代自動車への対応・拡販、(3)新成長エンジンの創出、(4)海外事業の強化、を掲げた。また今回の中期経営計画はその位置付けとして、2026年度(2027年3月期)に売上高200億円達成をターゲットとし、そのフェーズ1と捉えるとした。



今回の中計の目標数字は、2024年3月期予想で売上高17,000百万円、営業利益1,490百万円とし、売上高ピークの2019年3月期の18,356百万円、営業利益ピークの2018年3月期の1,465百万円にいずれも達しない予想となっていた。しかし2022年3月期に売上高16,874百万円、営業利益1,113百万円と、当初の2023年3月期計画である売上高16,300百万円、営業利益1,050百万円、経常利益1,100百万円をすべて上回った。今回の2023年3月期予想も当初計画を上回っており、会社側でも改めて2024年3月期計画の見直しを検討し始めている。自動車生産をどう見るかが鍵となるものの、従来予想を上回る目標数字となることを期待したい。なお成長戦略・重要施策に変更はないが、新社長の下で人事制度、インセンティブの導入、さらに熊本製造所での冶金棟の建設なども行っており、経営にスピード感が出てきた印象を受けた。



2. 次世代自動車への対応・拡販

同社の業容拡大を見ていくうえでは、最大需要先の自動車産業向けの対応が非常に重要となり、新中計でも重要施策として次世代自動車への対応・拡販を掲げている。特に、従来の顧客個別の最適化対応から成長市場分野の専門営業と開発担当による集中マーケティングを実施するなど、体制強化も実行している。製品としてはモーター関連、電池関連に注力、材料開発等による積極的な試作品の投入を行い、成果が出つつある。例えば次世代自動車向けでは車載燃料電池用金型が既に販売開始となっている。またモーターコア用抜き金型では以前から放電加工性に優れたフジロイVシリーズを多くの顧客に提供しているが、電磁鋼板の薄板化に伴い、耐摩耗性と耐チッピング性に優れた新材種を開発、販売している。車載電池関連では成形金型について、従来岡山製造所で対応していたが、今回郡山製造所で専用ラインを構築、2022年7月には稼働できる見通しで、能力的には従来の2.5倍となる。また電池関連金型部材については中国などへ拡販していく方針だ。



3. 新成長エンジンの創出

同社は中長期的成長に向けた研究開発の方向性として、粉末冶金技術では超硬合金に限定しない新材料開発の加速、超精密加工技術においては次世代先端技術への挑戦、この実現に向けての新鋭設備研究と工法の最適化などに注力する。具体的には自動車産業向け以外でも市場ニーズを先取りした高付加価値製品の開発に注力している。



残念ながらコロナ禍が2年にも及び、新製品開発・新技術開発の進捗が1年以上停滞した状況となっている。しかしここにきてモーターコア金型材料でユーザーの拡大が進展、医療用デバイス成形金型の加工、高熱膨張レンズ用金型材料は開発から販売に移行、ユーザーも広がっているとのこと。また今回、従来示されていなかったアイテムも新たに加えた。潜在成長力も大きく、フェーズ2となる2026年度には量産化されるものも多いと見られる。



4. 海外事業の強化

同社はこれまで、多品種少量生産、受注生産直販システムを売り物として、国内で確固たる顧客基盤の下で成長してきたが、今後は海外子会社、輸出の両輪で売上拡大を目指す。2022年3月期の海外売上高は前期比23.8%増の3,229百万円、海外売上比率は同0.5ポイント向上し19.1%となった。同社が得意としている超精密、耐摩耗性能を必要とする顧客は国内発注で実際は海外利用の事例も多く、実質的にはこれ以上の伸びを示している模様である。なお仕向け先別では中国向けが伸長著しく、販売員増強、オンラインや商社機能活用で拡販を図る。ただし中国での現地生産については慎重で、カントリーリスクやノウハウの流出懸念、また現状では同社が得意とする精密加工技術のニーズが把握できていないとしている。一方、タイでは技術水準が向上し、付加価値の高い異形複雑形状品などの製品も日本の技術レベルに近づいており、今後、製造範囲を広げて生産拡大を加速させる方針だ。当面、海外売上比率20%超を目指すが、2023年3月期については新型コロナウイルスによるロックダウン、自動車生産の停滞などで足踏みを見込んでおり、海外売上比率20%への挑戦は2024年3月期が鍵となろう。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)