■日本ヒューム<5262>の技術開発戦略



以下、1)「環境問題、社会問題を踏まえた製品開発、技術開発の強化を図る(研究開発投資の強化)」に関する取り組みを取り上げる。



(a) ウェルマン貯留槽

ウェルマン貯留槽は、都市防災ソリューションの1つである。ゲリラ豪雨の発生に伴う内水氾濫への対策として、縦スペースを利用し、狭い面積でも一時貯留が可能な立坑型貯留施設である。工法は、同社のオリジナルであるPCウェル工法を活用している。貯留槽の大きさは内径が約8mあり、4分割されているが、それらを組み立て(プレキャスト製品)、圧入しながら約40mの深さまで沈設する。



ウェルマン貯留槽の特長は3点ある。1)内水氾濫対策が半年という短期間で終了すること。貯留できる量は、1,500〜2,000m3規模である。2)狭隘地(きょうあいち)及び近接地施工が可能であり、公園などピンポイントのエリアに対して貯留施設を提供することができる。3)貯留施設をパッケージ化していること。具体的には、落差工、昇降設備、堆砂ます、排水ポンプ、脱臭装置など貯留施設に必要な設備一式をパッケージ化することで設計の手間を省略できるようにしている。



(b) 「e-CON(R)」

「e-CON(R)」は、脱炭素社会へのソリューションの1つである。同社と東京都下水道サービスが共同で開発したもので、セメントの代わりに産業副産物(高炉スラグ微粉末、フライアッシュ)を用いたコンクリート材料である。具体的には、高炉スラグ微粉末の潜在水硬性、フライアッシュのポゾラン反応により、セメントと同様に安定した水和物(C-S-H)を生成することで固まる仕組みになっている。



「e-CON(R)」の特長は3点ある。1)CO2排出量を80%削減。セメントレス化によるエコロジカルな製品であるため、CO2等の温室効果ガスの排出量を抑制し、地球環境の保全に貢献できる。2)普通コンクリートと比べた場合10倍の耐硫酸性。耐用年数が100年を有する高耐久性の下水道管などが要望されるなかで、優れた耐硫酸性によってコンクリート構造物の長寿命化を実現しており、ライフサイクルコストの低減に応えることができる。3)同5倍の耐塩害性。塩分が浸透しにくい緻密な硬化体組織のため耐塩害性が高く、海洋構造物などに適している。



「e-CON(R)」の対応可能製品は、ヒューム管、RCセグメント、ボックスカルバート、マンホール、壁高欄等である。弊社では、CO2排出量の大幅削減と産業副産物の活用によるゼロエミッションに貢献するカーボンニュートラル時代の新しいコンクリート材料として需要拡大を期待している。



(c) 再生可能エネルギーへの取り組み

同社は長崎県五島市沖に設置された浮体式洋上風力発電設備「はえんかぜ」の浮体部にリング状のプレキャスト部材を提供した。洋上風力発電の方式は、海底に風車を固定する「着床式」と、洋上に浮かんだ浮体構造物を利用する「浮体式」に分けられる。現在、世界で運用されている洋上風力発電の99%以上が着床式と言われている。しかし、着床式のほとんどは水深50メートル以下の海域に設置されていることや、地震多発地帯で海底地形が複雑である日本では、設置場所ごとに個別設計が必要となる着床式より、個別設計が不要な浮体式の方が有利とされている。弊社では、日本において再生可能エネルギーをさらに増やすための国の資金援助や支援策等から、浮体式洋上風力発電設備は増えていくと見ており、同社のコンクリート製品の新たな需要先となることを期待している。



(d) 合弁会社コンフロンティア(株)の設立

2022年2月15日、同社とNJSは合弁会社コンフロンティアを設立した(出資割合:同社50%、NJS 50%)。「社会基盤の整備に参加し豊かな人間環境づくりに貢献する」メーカーとしての同社と「水と環境のサービスを通じて、豊かで安全な社会を創造する」技術コンサルタントとしてのNJSの知見を融合し、インフラの課題解決に取り組んでいく考えである。



コンフロンティアの主な事業内容は、以下のとおりである。

(i) 脱炭素マテリアル事業

脱炭素社会を推進する資材の開発と関連するサービスを提供する。特に低炭素コンクリート、CO2吸収建設資材及びCO2分離利用技術の開発と事業化を推進する。

(ii) 再生可能エネルギー事業

再生可能エネルギーの導入促進、地域のエネルギー自給率の向上、災害時のエネルギー供給等を目的とし、エネルギー関連のサービスを提供する。特に、公共施設やインフラに関連した再生可能エネルギーの導入を推進する。

(iii) インフラソリューション事業

インフラのライフサイクルを通したトータルソリューションを提供する。特にインフラの長寿命化対策、循環型社会に対応した資源再利用及びスマートインフラによる情報活用を推進する。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 藤田 要)