■今後の見通し



1. 2023年6月期の業績見通し

イード<6038>の2023年6月期業績は、売上高で前期比7.6%増の6,000百万円、営業利益で同14.4%増の730百万円、経常利益で同14.4%増の730百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同10.9%増の500百万円と売上高・各利益ともに過去最高を更新し、2ケタ増益を目指す。



新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ危機の収束が見えず、先行き不透明な外部環境が続いているものの、同社はこれまでどおりM&Aや事業開発を推進し、運営メディア数や事業領域の拡大、ビジネスモデルの多角化を図ることで、安定的かつ持続的な成長を目指す方針だ。人件費の増加が見込まれるものの、増収効果や業務効率の向上により、営業利益率も上昇傾向が続く見通し。事業セグメント別では、CP事業、CS事業ともに増収増益を見込んでいる。



なお、2022年7月以降も引き続きメディアの取得を進めている。7月には起業家のシバタナオキ氏から、ビジネスパーソン向けメディア「決算が読めるようになるノート」「Web3事例データベース」「KPIデータベース」の3つの事業を取得した。「決算が読めるようになるノート」(2016年サービス開始)は、個別企業の事例などをわかりやすく解説記事にし、noteを通じて販売している。また、「Web3事例データベース」(2022年サービス開始)は、Web3領域で注目されているサービスやプラットフォームを中心に、豊富な事例をわかりやすくnoteを通じて提供する月額サービスとなる。「KPIデータベース」(2021年サービス開始)は、日米の主要IT企業の決算で開示される決算情報やKPI情報を一元的に収録したデータベースで月額サービスとなる。これらの売上規模はまだ小さいものの、サブスクリプションモデルの事業として確立しており、同社が展開しているサブスクリプションサービスと合わせて、同ビジネスモデルでの収益成長加速を目指す。





クリエイターエコノミーカンパニーとしてM&Aも活用しながら事業領域を拡大し、2026年6月期に売上高100億円、EBITDA12億円を目指す

2. 中期目標

同社は2021年8月に発表した中期計画の中で、最終年度となる2026年6月期に売上高100億円、EBITDA12億円を目標に掲げた。2022年6月期以降の年平均成長率は売上高で13%、EBITDAで17%となる。同社は今後のインターネット市場について、技術の進化とともに誰もがメディア(発信者)となり、収益を獲得していくことが可能なクリエイターエコノミーの市場が一段と拡大し、メディアの定義もメディア専門会社だけでなく大企業や自治体、小規模事業者・個人(クリエイターエコノミー)まで裾野が拡大していくものと見ている。こうした市場に対して、メディアの収益化をサポートするプラットフォームとソリューションを提供することで、成長市場を取り込む戦略だ。



事業戦略としては、CP事業を主軸に積極的なM&Aや事業開発を行い、専門領域に特化したメディアを増やしながら事業領域の拡大と収益基盤の多角化を推進することで、持続的な成長を目指す。売上目標100億円のうち7〜8割は既存事業の成長で達成可能と見ており、残りを今後のM&A、新規事業開発で創出することにしている。M&Aについては、同社の財務基盤が強化されてきたこと、過去の成功実績によるノウハウが蓄積されてきたことなどから、従来よりも大型の案件を手掛けていくことも視野に入れている。



収益基盤の多角化では、ネット広告を中心としたBtoBビジネスからBtoCビジネスまで360°広げて収益の最大化を図る。BtoC領域では、ECサイトの物販だけでなくゲーム・エンターテインメント分野のメディアを通じたユーザー課金や投げ銭、イベント収入などの獲得に取り組む。またコンサルティング領域として、メディアを通じたセミナー開催、データ提供、リサーチソリューションなどに注力する。そのほかにもECサイト構築支援やメディア運営支援、メディアを通じたコンテンツ提供などのサブスクリプション型サービスの育成に取り組む。



新規事業領域としては、Web3領域に積極的に投資を行う方針で、2022年5月にはWeb3やNFT領域の起業家を支援するファンド、アクセラレーターであるArriba Studio PTE. LTD.(シンガポール)に初期投資家として投資を実行した。同ファンドは日本でWeb3領域の投資実績があるメンバーによって設立された会社で、既に国内で複数の投資先への支援を行っている。同社はArriba Studioへの投資を通じて、Web3領域における最先端の動向を収集するとともに、国内外の有力なWeb3スタートアップとの協業を模索し、自社の成長につなげていく考えだ。



そのほかEC領域も今後の事業拡大が期待される。SAVAWAYの子会社化を機に、ネットショップ総研やエンファクトリーなどEC関連サービスを展開する子会社とそれぞれ連携した取り組みを進めており、今後のシナジーが期待されるためだ。



第5次モビリティ革命を支援する「iid 5G Mobility」の取り組みも引き続き推進していく。(株)ジゴワッツと共同開発したスマートフォンを車の鍵として使える「バーチャルキー」は、2020年以降着実に導入先が広がっており、2022年に入ってからも北海道電力(株)を中心とした民間企業11社が実施するEVカーシェアリングの事業性と運用面の課題を検証する実証実験に採用された。同社は「バーチャルキー」の月額利用料の一定率をロイヤルティ収入として受け取るため、導入台数が増えればストック収益として貢献することになる。なお、カーシェアリング市場の車両台数は現在の4万台弱から、今後は40万台規模まで拡大すると見られている。またレンタカー市場については約90万台の規模となっており、これらが「バーチャルキー」の当面のターゲット市場となる。同社収益への影響はまだ軽微だが、今後の収益貢献が期待される。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)