■業績動向



1. 2022年3月期の連結業績概要

巴川製紙所<3878>の2022年3月期の連結業績は売上高32,785百万円(前期比6.6%増)、営業利益1,982百万円(前期は15百万円の損失)、経常利益2,310百万円(前期比1493.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,650百万円(前期は1,152百万円の損失)となった。同社の期初計画は売上高32,000百万円、営業利益600百万円、経常利益600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益500百万円であり、2021年7月21日、10月28日、2022年1月21日の3回の増額修正を行った。結果として、最新予想に対し売上高では未達成も、利益は増額修正での着地となった。この要因は、半導体・電子材料関連事業やトナー事業でコロナ禍の影響が緩和され売上高が回復し、利益面では構造改革や固定費削減が進み、第2四半期以降は円安進行もあったことで、営業利益面では大幅な収益改善が進んだことである。なお「収益認識に関する会計基準」等を適用したため、従来ベースより売上高1,991百万円減、営業利益4百万円減となった。また、経常利益の前期比は新旧数値の単純比較による参考数値である。



営業利益の増減要因分析では、主に、増販影響が19億円、為替影響が2億円、その他のコストダウンによる2億円の利益に対し、原燃料価格上昇による4億円の減益影響があった。増販影響がほぼ営業利益の増加となったことがわかる。また、経常利益については、ディスプレイ向けフィルム加工事業を手掛ける持分適用関連会社の好調から、持分投資利益が459百万円(前期比213百万円増、86.6%増)となり、営業外で167百万円改善し経常利益の増額が大きくなった。



2. セグメント別業績

(1) トナー事業

トナー事業は、売上高12,303百万円(前期比20.1%増)、営業利益1,198百万円(前期は291百万円の損失)となった。売上面では、コロナ禍の影響による反動増に加え、リモートワーク拡大により個人宅でのプリント需要が拡大したこと、下期の円安傾向も追い風となり、増収を確保した。利益面では、米国トナー工場閉鎖に伴う固定費圧縮効果や国内工場の生産量増加、原燃料価格上昇分の一部を販売価格へ転嫁したことのほか、円安効果も加わり、営業利益は大幅な増益となった。なお収益認識基準による新会計基準等を適用による影響額が売上高で1,177百万円発生した。従来の基準による売上高は13,481百万円(前期比31.6%増)で、増収効果による増益が大きいことがわかる。



(2) 電子材料事業

電子材料事業は、売上高6,121百万円(前期比8.9%増)、営業利益970百万円(同67.7%増)となった。光学フィルム関連は、スマートフォン向け光学フィルム案件が上期に業績寄与した。半導体関連事業は、レガシー半導体などの繁忙もありポリイミド製静電チャックなどが好調を維持した。また、自動車産業向けにもEV化や自動運転など車載半導体の拡大により信頼性の高いQFPパッケージ需要が増加した。同社の「リードフレーム固定テープ」も好調で、販売数量の急回復が続いた。利益面でも数量増効果、MIX良化、加えて期を通じた新製品の試作・試験入金も計画を上回り、営業利益は大幅増益となった。なお収益認識会計基準等を適用した影響額は売上高で473百万円発生し、従来の基準による売上高は6,594百万円(前期比17.3%増)と、こちらも増収効果による増益が大きいことがわかる。



(3) 機能紙事業

機能紙事業は、売上高10,195百万円(前期比0.1%減)、営業損失は162百万円(前期は370百万円の損失)となった。売上面では、コロナ禍からの市況回復が見られたものの、洋紙事業や磁気乗車券販売等の既存事業が縮小し、加えて洋紙事業のうち「トモエリバー」関連製品の製造販売の移管を実行したことなどにより、ほぼ前期並みとなった。利益面では2019年12月に実施した7号抄紙機の停機効果など構造改革効果で損失が縮小した。なお2022年3月の9号抄紙機停機に向けた在庫積み増しの影響もプラスに作用した。収益認識会計基準等を適用したことによる影響額は売上高237百万円となった。従来の基準による売上高は10,432百万円(前期比2.3%増)である。



(4) セキュリティメディア事業

セキュリティメディア事業は、売上高は3,928百万円(前期比12.2%減)、営業利益257百万円(前期比19.1%減)となった。売上面では、証書類の特需による販売増加、カード関連・通帳類等主要製品の需要が引き続き停滞した。利益面では特需効果が寄与した。なお、日本カードが第1四半期より連結対象から外れたことも収益に影響した。収益認識会計基準等を適用したことによる影響額は売上高で23百万円発生し、従来の基準による売上高は3,951百万円(前期比11.7%減)である。



(5) 新規開発事業

新規開発事業は、売上高97百万円(前期比0.9%増)、営業損失438百万円(前期は350百万円の損失)となった。なお同事業の売上は、試作、テスト需要に限定され、量産化の後は各事業の売上、利益に含まれることになる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)