■巴川製紙所<3878>の中長期の成長戦略



(2) 機能紙分野での量産展開

強みの1つである抄紙技術の展開として、銅やステンレスの「金属繊維シート」は同部門で単体販売する以上に、半導体製造装置向けに展開が開けた。そのほかでは、少量の木材パルプをバインダーとして機能性材料をシート化する「担持シート」などを機能紙新製品として展開する。



また環境負荷低減に優れた材料である木材パルプ(セルロース)材料技術の展開として、セルロースマイクロファイバー製品「グリーンチップ(R) CMF(R)」の量産化を目指す。同市場では他社がセルロースナノファイバーの開発に注力しているが、同社ではコスト高である点や他の素材と複合化しにくいなど多数の問題点があるとの認識で、あえてマイクロファイバーにとどめていると言う。セルロースマイクロファイバー製品であれば、コストメリットがあるほか、紙などと混ぜても利用できるためセルロース繊維混入率51%以上で可燃物として廃棄が可能という利点もある。なお「グリーンチップ(R) CMF(R)」は、低単価の食品関連を取り込みつつ自動車用途など市場規模が大きい分野を含め開発を進める方針で、本格的な拡大には時間がかかると見られる。なお、有望製品として「低誘電ボンディングシート」も注目されるが、5G対応よりも6G対応で活躍する部材と見られ、こちらも本格拡大には時間を要するだろう。





新製品開発にあたって積極的な研究開発を実施

(3) 新製品の売上高構成比率の向上

同社は、売上高の13%程度にとどまっている新製品の売上高構成比率※を、2026年3月期には16%以上に拡大する方針である。そして、新たに研究・試作から量産上市に向かう製品群が増えてきたという点では、2022年3月期は研究開発に要した費用1,498百万円に対し新製品受託研究収入が915百万円と61%を占めるなど、量産に向けた動きが加速しつつある。これまで見てきた銅繊維シート関連製品や新型静電チャックなど、2023年3月期下期には売上寄与する製品群が見込めることから新規開発事業の売上高構成比率は計画を上回っての推移が期待される。



※同社において新規開発事業の売上高構成比率とは、当該年度を含む過去4年間に上市した製品の売上高のことを指す。







電子材料事業を核に中期経営計画の増額見直しも

(4) 中期経営指標

コロナ禍の下で策定した2026年3月期売上高36,000百万円、営業利益2,000百万円を目指す新中期経営計画は、2022年3月期時点で進捗率は売上高・営業利益ともに90%を越えた。現在、半導体市場向けの売上高は計画を上回って推移している。これは既存品による増額で、半導体生産のさらなる拡大で2026年3月期目標についても大きく上振れる可能性がある。また、新製品の売上高進捗状況でも計画を若干上回って推移しているが、こちらも半導体関連での増額が見込まれる。今後、中期経営計画が見直されると思われるが、5GやDXを支える材料をドライバーとして、電子材料事業は現在の中期経営計画(構成比24.3%)以上に比率の高まりを見せ、さらなる事業変革が加速するだろう。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)