■会社概要



2. 事業内容

unerry<5034>は先述のとおり、GPSとBluetoothビーコンにより取得した位置情報データをAI群で解析することによって、主に小売・外食業界、スマートシティの領域においてソリューションを提供している。具体的には、「分析・可視化サービス」「行動変容サービス」「One to Oneサービス」という3種類のサービスを提供している。「分析・可視化サービス」を導入サービスとして位置付け、その上位サービスとして「行動変容サービス」と「One to Oneサービス」があり、これらのクロスセルを促進する仕組みを構築している点も特徴だ。データ分析による現状把握から顧客に合わせたシステム構築まで一気通貫で提供することにより、顧客を囲い込めるサービス群を擁している。



(1) 「分析・可視化サービス」

「分析・可視化サービス」は、同社が「Beacon Bank」に収集・蓄積した位置情報データをAIで解析し、小売事業者、商業施設運営事業者、消費財メーカー、自治体等に対してダッシュボードサービスや、顧客のニーズに応じてカスタマイズした行動分析レポートを提供している。顧客はリアル行動データに基づく各種行動分析レポートを参照することによって自社のDX推進や店づくりに活用することができ、街づくりの場面で使用すれば、スマートシティの構築に活用することができる。主に小売事業者を対象に提供している「ショッパーみえーる」は、全国4.5万点(2022年6月末時点)における来店者のリアル行動データをAIで分析・推定することによって、商圏の把握、競合店舗とのシェア比較、来店客のデモグラフィー、細かな行動嗜好を簡単に把握することができる可視化ツールである。主に小売事業者のマーケティング施策に関わる意思決定の際の根拠として導入されている。また、「リアル行動データ可視化・分析」サービスは、スマートシティの構築などにも活用することが可能だ。



そのほか、店舗やイベント会場などの曜日・時間帯別混雑状況をAIが「混雑」「通常」「閑散」の3段階で推定し可視化する「カスタマイズ混雑マップ」も提供している。顧客は混雑状況を推定したグラフを自社のサイトやアプリに好みのデザインで掲載することができ、これにより、密の回避による利用者・自社スタッフの安全の確保を実現することができる。これらのサービスは、クラウドで提供するSaaS方式を採用しており、サービス契約期間は基本的に年間契約である。契約期間中は、顧客の店舗数に応じた月額課金(15万〜95万円)がある。



(2) 「行動変容サービス(Beacon Bank AD)」

「行動変容サービス」は、まずリアル行動ビッグデータのAI解析により小売事業者や消費財メーカーへの来店可能性が高い顧客群と商圏を発見する。そして、顧客群へSNS(Instagram、Twitter、LINE、Facebookなど)や動画等で情報発信することにより、顧客群の行動変容を促す広告配信サービスを提供している。最大の特徴は、広告配信の効果を測定し、次の意思決定の質を高めることによって顧客のROI(費用対効果)を高めることができる点だ。店頭に設置しているビーコン等を活用することによって、来店数、来棚数、購買数などの単位で効果を計測することができる。顧客はその測定結果に基づきPDCAサイクルを回すことによって、より効果の高い広告配信施策を打つことが可能になる。主な用途としては、流通店舗・イベントのデジタル集客、メーカーなどの販促プロモーション、オンラインイベント・ECへの集客である。同社が提供する「分析・可視化サービス」でターゲットを抽出・把握したうえで、「行動変容サービス」によって効果的なプロモーションを行うといった利用方法が主である。同サービスの収益は、デジタルチラシとして毎月受領する配信料(月額100万〜1,500万円)のほか、新規出店や特売セールなどのイベントに応じて受領するスポット収入から構成される。



(3) One to Oneサービス(Beacon Bank 1 to 1)

「One to Oneサービス」は、同社のサービス群のなかでクロスセルの最終段階に位置付けられるサービスである。主に小売事業者や商業施設運営事業者等に向けてオリジナルアプリの開発や統合マーケティング基盤(CDP:カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築・提供し、消費者にパーソナル体験を届けるシステムソリューション全般の構築を担っている。「分析・可視化サービス」でターゲットを抽出・把握し、「行動変容サービス」で効果的なプロモーション活動を実践したうえで、さらに顧客エンゲージメントを高めて維持したいという場合に導入される。同サービスを利用することによって、同社の保有するリアル行動ビッグデータをはじめとした各種データソースに顧客が保有するデータ等を集約し、リアル行動、リアル購買、ネット行動、ネット購買のデータを統合・分析し、AIで意味付けすることにより、消費者を深く理解し、それにより個々のターゲットが必要としている情報や興味関心のある情報を最適なタイミング、最適な媒体(インターネット上の広告表示、アプリを通じたプッシュ配信、デジタルサイネージなど)を通じて提供することが可能になる。同サービスの収益は、システム・アプリ等の構築対価と構築後の運用・保守への対価からなっている(月額100万〜1,500万円)。



「One to Oneサービス」の導入企業数は、2022年6月末時点で106社となっている。導入企業の業種は食品、ドラッグストア、ホームセンター、外食から家電メーカー、金融、不動産、商社、広告、国・自治体、公共交通、メディアまで幅広い業界にわたっている。また、各業界のトップクラスの企業が導入している点も特徴だ。食品においては三菱食品<7451>、金融においては東京海上日動火災保険(株)、不動産の三菱地所<8802>、商社の三菱商事、広告の電通グループ<4324>、SIerのNTTデータ、TVメディアのTBSテレビ(株)、自治体では環境省などの企業・省庁が同社の顧客となっている。業界トップクラスの企業が導入する理由は、同社のサービスが自社業績の拡大に直結するためだ。実際、三菱地所は利用者の平均購買頻度を10%上昇させることに成功した。そのほか、東京海上日動火災保険はeゴルファー保険広告反応率が1.4倍、ファミリーレストランを展開する(株)ジョイフルは顧客の来店頻度が3.5倍に増え、TBSは広告クリック率が3%超、(一財)箱根町観光協会は来訪率が4.7倍となり、ECサイトのHANEDA Shoppingはサイト訪問者の購入率を22%高めることに成功した。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)