■事業別の取り組み



2. ホテル開発事業

ホテル関連市場においては、政府による新たな入国規制を行わない決定がなされ、「入国規制撤廃」や「全国旅行支援」実施など、ポストコロナ社会に向けて需要回帰の動きが期待されている。このような環境の下で霞ヶ関キャピタル<3498>は、市場回復時の成長を見据えた方針を打ち出している。具体的には、一般的にグループ旅行者が全体の6割弱を占めるのに対し、3〜6人部屋の供給は4割に満たないことから、同社では多人数向けホテルの需給ギャップに着目し、グループ旅行者向けのホテル開発を推進している。同社は家族・グループ旅行等の需要に対応した「アパートメントホテル」の開発を手掛けているが、駅から徒歩5〜10分圏内に立地し、キッチンや洗濯機等の長期滞在に対応した設備を完備した部屋を低額で提供できることから、2022年3月からの段階的な入国規制緩和や、同年10月からの全国旅行支援などによる旅行客の取り込みを見込んでいる。



同社が開発しているアパートメントホテルは、ブランド名を「FAV HOTEL」とし、3人以上のグループステイのために「広く、快適で、スタイリッシュ」な客室をリーズナブルな値段で提供することをコンセプトに、ゲストの「“Fav”orite」な空間でありたいとの願いから『FAV HOTEL』と名付けている。各室の広さは35〜40平方メートル、定員は4名以上を標準プランとし、1人あたりの宿泊単価はビジネスホテル以下になるよう設定している。



アパートメントホテルでは、徹底した省力化・低コスト化オペレーションにより、コロナ禍でも収益を生むビジネスモデル・運営体制を確立している。具体的には、フロント業務の省人化や、チェックアウトベースの清掃、飲食を提供しない宿泊特化のサービス等、固定費の削減により、同業他社と比べて低い稼働率でも損益分岐点を上回る運営を行っている。コロナ禍により稼働中シティホテルの平均定員稼働率は61〜70%から14〜31%に下落し、多くのホテルが休業や赤字経営を強いられるなか、同社のFAV HOTELは20%未満の稼働率でも運営収支が黒字化する仕組みを構築している。その結果、2020年10月〜2022年8月の実績で、GOP※の黒字月割合は86.9%に達している。ポストコロナは従来のように海外旅行者の利用増加も期待できることから、市場回復時には大きな利益貢献が見込まれる。



※Gross Operating Profitの略で、営業収入から営業費用を除いた粗利益。





アパートメントホテルについては、全国に稼働中・開発中を合わせて19件のホテルを展開している。2022年8月期には「FAV HOTEL 熊本」(67室)「FAV HOTEL 伊勢」(36室)「FAV HOTEL 広島スタジアム」(33室)「FAV HOTEL 函館」(30室)が新規開業し、7件を投資家(オーナー)と運営している。さらに、2023年8月期には5件の開業を予定しているほか、その後も7件のプロジェクトパイプラインがある。これらはタイミングを見て同社が組成するファンドへ売却する計画である。進捗は順調であることから、同社ホテルのコンセプトがマーケットで受け入れられていることが窺える。なお同社では、アパートメントホテル開発に際しては地元の銀行や建設会社を使うなど、地元の経済活性化につながるよう配慮しているようだ。



3. ヘルスケア関連施設開発事業

同社は2021年12月にヘルスケア事業推進部を新設し、ヘルスケア関連施設開発事業に参入した。1号案件として、札幌市でヘルスケア関連施設(ホスピス住宅)を竣工・運用開始した。ホスピス事業を担う子会社KC-Welfare(株)の設立も行い、敏速な事業展開を推進する計画だ。2022年8月期末時点で4件の開発案件を進めており、事業部発足以降の約8ヶ月で5件の開発案件を推進している。同事業は立地に制約が少ないことから、今後は年間10件ペースで開発を行う計画である。なお、2022年8月期は人材やリサーチへの投資が先行したものの、進捗は順調であることから2023年8月期からの業績寄与を見込んでいる。



事業展開の背景には、ヘルスケア関連施設の建替えニーズ増加と拡大傾向にあるヘルスケアマーケットがある。ヘルスケア関連施設は老朽化等により建替え時期が近づいており、計画的なヘルスケア関連施設の開発ニーズが高まっている。また、高齢化の進行と在宅での看取りが推進されたことにより、ヘルスケアマーケットは拡大傾向にある。厚生労働省「第8期介護保険事業計画におけるサービス量等の見込み」によると、介護付き有料老人ホームの利用者は2020年度の26万人から2040年度には37万人へと1.42倍に拡大する見通しとなっている。また、国土交通省が2021年3月に策定した「住生活基本計画」では、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を2030年までに4%まで引き上げる成果指標方針が示されたが、このためには約60万戸分の高齢者住宅整備が必要となる。



したがって、同社のヘルスケア関連施設開発事業は、社会的課題の解決と景気動向に収益が左右されにくいアセットへの投資機会を提供するもので、高い社会性を持つと言えよう。加えて、優良なオペレーターとの固定・長期の賃貸借契約により、安定した不動産キャッシュ・フローが期待できる。同社は従来の不動産ファンドやJ-REITが主に取り組んできた「介護」という切り口だけではなく、「医療」という切り口でも展開する方針で、ホスピス施設やショートステイ型療養施設を全国で開発する計画である。特に、「病院の安心感」と「自宅の快適さ」の両方の特性を持つホスピスは、これからの超高齢化社会において大きな社会的役割があることから、ホテル開発等で培ってきたノウハウを生かし、付加価値の高いヘルスケアサービスの提供と他社との差別化を図る方針だ。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)