■業績動向



1. 2023年2月期の業績概要

クリーク・アンド・リバー社<4763>の2023年2月期の連結業績は、売上高で前期比5.6%増の44,121百万円、営業利益で同16.0%増の3,956百万円、経常利益で同17.0%増の4,002百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同30.4%増の2,899百万円とおおむね会社計画どおりに着地し、過去最高を連続更新した※。ゲーム、Web等を中心としたクリエイティブ分野(日本)並びに医療分野の売上が好調に推移し、新規事業及び新設子会社の先行投資費用や人件費の増加を吸収した。



※収益認識会計基準等の適用に伴い、売上高で1,919百万円の減少、営業利益、経常利益でそれぞれ131百万円の増加要因となっており、旧会計基準ベースで見ると売上高で10.1%増、営業利益で12.1%増、経常利益で13.2%増と実質2ケタ増収増益となった。





販管費が前期比で1,067百万円増加したが、このうち人件費関連の増加で約7割を占めた。新卒社員を前期比1.85倍増の299名に増やすなど積極的に人材投資を進めたことによる。残りは営業経費の増加や新設子会社5社※1の立ち上げ費用に加えて、4社※1をグループ化したことに伴うのれん償却費用の増加(66百万円増加)による。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が会社計画を16.0%上回ったのは、人材確保等促進税制※2の適用に伴う税額控除で、実効税率が前期の33.4%から29.4%に低下したためだ。



※1 新設子会社として、コネクトアラウンド、One Leaf Clover、Chef’s value、Nextrek、C&Rインキュベーション・ラボの5社を設立。ANIFTY、シオングループ、シオン、シオンステージの4社をグループ化した。

※2 新規雇用者給与等支給額が前年度より2%以上増えていること、教育訓練費の額が前年度より20%以上増えていることなどを適用要件とし、これら要件を満たすことで控除対象新規雇用者給与等支給額の15%または20%を法人税額または所得税額から控除できる制度。





事業別売上高を同社が開示している売上構成比から試算すると、プロデュース事業は前期比29.0%増の19,413百万円、エージェンシー(派遣)事業は同2.0%減の17,207百万円、エージェンシー(紹介)事業は同5.6%増の5,735百万円、ライツマネジメント事業他は同53.1%減の1,764百万円となった。プロデュース事業ではクリエイティブ分野(日本)、エージェンシー(紹介)事業では医療分野がそれぞれ好調に推移した。派遣事業については受注が好調だった請負事業に人的リソースを振り向けた影響で微減収となった。また、ライツマネジメント事業他の減収は収益認識会計基準等の適用によるもので※、旧会計基準ベースでは若干の増収であった。



※電子書籍の取次販売について従来は総額を売上高として計上していたが、収益認識会計基準等の適用に伴い、純額方式で計上する方法に変更した。





一方、売上総利益はプロデュース事業が同28.3%増の6,126百万円、エージェンシー(派遣)事業が同6.5%減の3,744百万円、エージェンシー(紹介)事業が同13.7%増の5,956百万円、ライツマネジメント事業他が同14.1%減の1,191百万円となった。ライツマネジメント事業他については、前期に急成長した「漫画LABO※」によるオリジナル電子コミックの販売が一段落したことや、その他新規サービスの先行投資負担が減益要因となった。



※「漫画LABO」とは、ネットワークした多くの漫画家や編集者によるコミック制作プラットフォームで2017年より事業を開始した。「漫画LABO」で制作されたコミックスについては、電子書籍の販売額からプラットフォーマーに支払う手数料を差し引いた金額が売上高となり、ここから作家等に制作料を支払い、残った部分が営業利益となる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)