■要約



1. 会社概要と事業内容

CAC Holdings<4725>は、1966年8月設立の日本国内ではパイオニア的な独立系ソフトウェア専門会社として事業をスタートし、積極的なM&A戦略をテコに事業領域を拡大してきた。2021年6月、CRO事業(製薬企業が医薬品開発時に行う治験業務や製造販売後の業務の受託・代行サービス)を担っていた連結子会社(株)CACクロア(現 イーピーエス(株))の譲渡に踏み切り、現在は国内外でのIT事業に経営資源を集中する企業グループ(持株会社傘下の連結子会社20社、持分法適用関連会社2社が事業展開、グループ従業員数4,367名。すべて2022年12月末時点)を形成している。



2022年12月期からの報告セグメントは、国内IT事業(国内子会社におけるシステム構築サービス・システム運用管理サービス・人事BPOサービスなどの提供)と海外IT事業(海外子会社におけるシステム構築サービス・システム運用管理サービス・保守サービスなどの提供)の2つで構成されている。



2. 2022年12月期の連結業績は期初予想から上振れて着地

2022年12月期の連結業績は、売上高が前期比0.1%増の47,971百万円、営業利益が同13.8%減の3,187百万円、経常利益が同13.9%減の3,158百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同15.4%減の2,093百万円となった。期初予想(売上高45,000百万円(前期比6.1%減)、営業利益3,000百万円(同18.9%減)、経常利益2,900百万円(同20.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,000百万円(同19.2%減))では、CRO事業の連結除外の影響が売上高で4,841百万円、営業利益で812百万円あったために減収予想となっていたが、国内IT事業が堅調に推移したことで増収を確保した。営業利益は減益となったが、期初計画に対しては上振れて着地した。また、財務体質の安全性を測る代表的な指標の推移を見ると、自己資本比率が前期末の65.1%から64.7%、流動比率が同245.6%から269.1%、ネットキャッシュ(現金及び預金-有利子負債(プラスはキャッシュ超過))が同7,854百万円から9,885百万円となった。ネットキャッシュは順調に増加しており、流動資産に含まれる有価証券1,300百万円及び固定資産に含まれる投資有価証券14,543百万円も加えた広義のネットキャッシュは25,728百万円に達している。これは2023年3月10日時点の同社時価総額33,154百万円の77.6%となり、バリュー投資の観点から注目される。



3. 2023年12月期の連結業績予想は前期比4.2%増収、同3.5%営業増益を見込む

同社による2023年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比4.2%増の50,000百万円、営業利益が同3.5%増の3,300百万円としている。セグメント別では、国内IT事業の売上高が同1.6%増の37,000百万円、セグメント利益が同0.9%増の2,500百万円、海外IT事業の売上高が同12.4%増の13,000百万円、セグメント利益が同12.5%増の800百万円を見込んでいる。連結子会社の(株)CACマルハニチロシステムズが2023年4月から連結除外となる予定で、この影響は売上高で15〜16億円※、営業利益で20〜30百万円と弊社では推定している。なお、上記要因を除く実質ベースでは、国内IT事業の売上高は順調に拡大する計画だ。また、海外IT事業はインド子会社の回復もあり、大幅な増収を見込んでいる。なお、海外IT事業の業績予想の前提となる為替レートは140円/米ドル(前期実績は130円/米ドル)としている。



※年間売上高20〜25億円で、連結期間は3ヶ月であることから弊社推定。





4. 長期ビジョン及び中期経営計画の進捗状況

同社は中期経営計画フェーズ1で目指す財務指標及び配当方針を明確化し、2025年12月期の目標として(1) ROE10%以上、(2) エクイティスプレッド(株主資本を上回るROE)2.5%以上、(3) DOE5%水準、の3点を新たに掲げた。高い資本効率を目指す指標としてエクイティスプレッドに着目し、株主資本コスト約7.5%を前提に(1) ROE10%以上、(2) エクイティスプレッド2.5%以上を目指す。また、株主還元方針を明確にする指標として(3) DOE5%水準を掲げ、将来の成長のための内部留保と、株主への継続的・安定的な配当の実現を目指すとした。これらの方針に基づき、2023年12月期の1株当たり年間配当金を前期比20.00円増配の80.00円とした。DOEを配当の指標としていることから、業績拡大が続けば年間80.00円をベースとした安定配当が期待できる。配当利回りは5%近くに達することになり、リクルートホールディングス<6098>(以下、リクルート)株も含めた保有金融資産が多いことも考慮するとバリュー投資の観点で注目される。



また、中期経営計画フェーズ1での最注力項目の1つである「プロダクト&サービス基盤の構築」については、中核となるプロダクト&サービスの2022年12月期売上高が前期比3億円増の13億円にとどまっており、以前から取り組んでいるサービスが売上上位を占めている状況にある。今後はリソースの不足する営業やマーケティング分野の強化のほか、M&Aを通じた外部リソースの活用も検討しながら、最終年度での目標達成を目指している。ただし、達成には事業投資の活用内容が課題となる。同社は150億円の投資原資として、既存事業からの獲得資金に加え、保有している現金及び預金や投資有価証券の活用、借入金の活用などを掲げており、この投資原資を株主還元のみならず、人材投資に約65億円、M&Aや新規事業投資に関わる資金として約100億円を投じる意向である。ただし、実行中のCVC投資(2022年12月末時点で約55億円を出資)も含め、M&Aなどコーポレート側の積極的なプロフェッショナル人材採用を通じて、社内で不足しているリソースへの投資に重点を置く必要があると弊社では見ている。



■Key Points

・創業来50年超の歴史を持つ独立系SIer(システム・インテグレータ)のパイオニア。最大の強みは「トランスフォーメーション力」。それを支えるのは「挑戦を是とする企業文化」「優良な顧客基盤」「盤石な財務体質」

・2022年12月期連結業績は期初計画から大幅に上振れて着地。財務体質の安全性は一段と向上

・2023年12月期の連結業績予想は前期比3.5%営業増益を見込む

・「CAC Vision 2030」を公表。2025年12月期における目標値として売上高580億円、営業利益50億円、営業利益率8%以上、ROE10%以上を設定。初年度の2022年12月期は順調に期初公表値を売上高、営業利益ともに超過達成してスタート



(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)