■今後の見通し



1. 2023年12月期の業績見通し

トヨクモ<4058>が属するクラウドサービス市場においては、業務の効率化や生産性の向上を実現するためにデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が高まっている。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響のもと、リモート勤務をはじめとする多様な働き方の普及に伴い、時間や場所にとらわれず利用が可能なクラウドサービスの需要は増えていくと見られる。弊社では、こうした状況を背景に企業のITへの投資は増加すると見ており、なかでもクラウドサービス市場は今後も高成長していくことを見込んでいる。



2023年12月期の業績見通しは、売上高で前期比20.3%増の2,330百万円、売上総利益で同20.4%増の2,260百万円、営業利益で同12.6%増の720百万円、経常利益で同12.7%増の720百万円、当期純利益で同14.7%増の490百万円である。売上高については、安否確認サービスとkintone連携サービスの有償契約数の伸長が見込まれている。売上総利益率は前期の96.9%並みの97.0%、営業利益率は前期の33.0%に対して30.9%と若干低下する見通しだが、これは前期の営業利益率が当初計画に対して採用数が目標に届かなかったことでやや高水準になったことの反動によるものである。同社では高い売上成長を持続しながら、中長期的に営業利益率30%以上を継続すべく、売上比率で30%を目途とした人件費及び営業利益率30%を意識した広告投資計画を両立する計画である。また、同社は期初計画をやや保守的に発表する傾向があり、直近までの月次売上推移を見ても計画比で順調に進捗していることと推察される。



2023年12月期の注目点として、同社では自治体や大企業などエンタープライズ向けにソリューションパックの提供をスタートする予定である。これは自社サービスをメインに複数のクラウドサービスを組み合わせたソリューションパッケージを作成、スピーディにサービス提供するものであり、自社クラウドサービスだけでなく、提案から構築支援、調査検証、運用サポートまで可能な体制ができることが強みである。また、同社ではビジネスモデルがこれまでの既存のサービスとは異なることから、別会社での展開なども検討しており、今後の具体的な運用やサービス開始の発表が待たれる。エンタープライズ向け参入により、kintone連携サービスとの相乗効果も期待されることから、弊社では同社との関係の深いサイボウズとの協業という形が取られる可能性が高いと考えている。なお、エンタープライズ向けビジネスは2023年12月期の業績見通しには含まれていない。





ビジネスモデルを磨き上げ、「ITの大衆化」を目指す

2. 中期成長戦略

(1) 経営戦略

同社は、IT初心者においても、簡単でシンプルで分かりやすいサービスを提供する「ITの大衆化」の実現を目指している。現在のクラウド型のビジネスモデルを突き詰め、磨き続けることで、中期的に大きく成長していく戦略である。具体的には、ビジネスサイクル(「トライアルモデルで低価格にサービスを提供」→「効率的な業務で高収益を確保」→「給料を高くし優秀な人材を採用」→「能力が発揮できる環境」→「簡単便利なサービスを創出」)を意識し、日々の活動を続けている。



(2) 事業戦略

a) 安否確認サービス

従前、安否確認は自社従業員に対して行うものとして考えられていたが、企業が災害時に事業活動の継続を検討するためには、取引先も含めたサプライチェーン全体での安否確認が必要である。同社のサービスは安否確認におけるどのような用途にも利用できるため、新たな活用方法としてすでに導入された企業を事例としてサプライチェーン全体に訴求し、需要の獲得を目指す。



b) kintone連携サービス

同社は複数のkintone連携サービスを提供している。それらのサービスは互いに連携し合うことでより便利に利用できるため、サービス連携による活用事例などを分かりやすく紹介することで、引き続きクロスセルによる顧客当たりの売上単価の向上を進めていく。



c) トヨクモ スケジューラー

社外の担当者との予定調整もできる新たなコンセプトのスケジューラーである。同社にとっては、海外展開がねらえるサービスという位置付けである。今後は国内だけでなく、海外への展開も注目される。



(3) 製品開発

同社は、創業以来、様々な法人向けソフトウェアを開発してきた。創業時はカテゴリー数も多くあったが、その後収れんし、2022年12月期時点でのカテゴリー数は3カテゴリー(安否確認サービス、kintone連携サービス、トヨクモ スケジューラー)、サービス数は8サービスとなっている。なお、同社は2023年12月期に新規サービスの投入はないとしている。ただ、今後も簡単でシンプルで分かりやすい法人向けクラウドサービスを提供するという同社ポリシーに沿って、サービスは拡充されていくと思われる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)